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ノーマルモードノイズ対策のXコンデンサとは?

2024.01.29更新

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この記事を書いた人

機電系専門ライター Div.長谷川

長谷川

FREE AID編集部 機電系専門ライター Div.
アナログ回路設計・営業を経験した後ライター&ディレクターとして独立。
電気電子・ITジャンルを得意とし、正確で分かりやすい情報の発信を行っています。

電気回路設計において欠かすことのできないノイズ対策。その手法の一つとして知られる安全コンデンサをご存知でしょうか。今回はそんな安全コンデンサの中から、Xコンデンサと呼ばれる物について、具体的な役割や種類、選び方などを解説していきます。電気回路に発生するノイズの種類ついても解説するので、ぜひ最後まで読んでみてください。

ノイズの伝搬モードを理解しよう

Xコンデンサの解説に入る前に、電気回路に生じる2つのノイズについて解説していきます。X,Yコンデンサ以外のノイズ対策を学ぶ際にも役に立つ知識なので、ぜひ覚えておきましょう。

ノーマルモードノイズ

ノーマルモードノイズとは回路の電源ラインに発生するノイズのことで、別名ディファレンシャルモードとも呼ばれます。ノイズ信号が電源電流と同じ経路を流れるのが特徴で、ノイズ信号は負荷を経由して再び電源へと還ってきます。ノーマルモードノイズが発する電磁放射の大きさは回路が構築するループ面積に比例するため、代表的な対策としてはケーブルを撚り線にするなどのループ面積を小さくする方法が知られています。

ノーマルモードノイズの流れは回路途中で逆向きになるため、それぞれのノイズ電流によって生まれる電磁放射が互いに打ち消しあい、負荷回路に対する電磁影響はあまり大きくありません。

コモンモードノイズ

コモンモードノイズは回路と大地の間に発生するノイズのことで、ノイズ信号は電源と負荷の間の全てのケーブルを通って負荷回路に並列に入力されます。信号回路の近くで機器電源を入り切りすることでノイズが発生し、信号線と大地の間に意図せず存在する浮遊コンデンサを通って大地へ流れるため、信号線を短かくするなどして浮遊コンデンサの容量を抑えるのが基本対策となります。またノーマルモードノイズと違って各経路を流れるノイズ信号が打ち消しあうことはないため、電磁放射影響が大きいのも特徴です。

Xコンデンサはノーマルモードノイズ対策

ノイズの種類を紹介しましたが、Xコンデンサは、ノーマルモードノイズを低減する目的で使用されるコンデンサのことを指します。Xコンデンサは、電源と負荷との間に並列接続して使用します。コンデンサのインピーダンスは周波数に反比例するため、通常の信号のような低周波信号に対しては高い抵抗値を持つ抵抗として、ノイズのような高周波信号に対しては抵抗値の低い短絡線としてそれぞれ振る舞うことで、ノーマルモードノイズのみをバイパスして回路を保護します。容量はμFオーダー程度で、耐圧性能に優れたフィルムコンデンサが多く使用されます。

Xコンデンサの選び方

フィルタ素子としてXコンデンサを選定する際は定格電圧や静電容量、耐えうるサージ電圧の大きさ、認証規格などを見て総合的に選定するのが基本です。定格電圧は使用する電源電圧に応じた電圧のものを選定すれば問題ありませんが、静電容量については大きくなるほど値段とサイズも大きくなるため、予算や設計回路のバランスを見ながら選定すると良いでしょう。

認証規格についても安全性を担保する認証が取れているものを選ぶのは当たり前ですが、環境に関する認証や電磁障害に関する認証など、使用する環境やシステムの要求事項に合わせて適切な認証を取っているものを選びましょう。

Xコンデンサの「サブクラス」

Xコンデンサでは使用中にコンデンサに印加されるサージ電圧の大きさによって、X1とX2の2つのサブクラスがJIS規格で規定されています。まずX1は高パルス用で、系統に印加されるピーク電圧が2.5kVを超え4.0kV以下の場合に使用します。一方のX2は一般用で、ピーク電圧が2.5kV以下の場合に使用し、その定格電圧を超えるX1コンデンサでの代用が可能です。

電力系統の開閉サージや雷サージに対する試験および耐性について規定した国際規格IEC 61000-4-5「試験及び測定技術− サージイミュニティ試験」では、最も高い試験レベルの規定線間電圧が2.0kVのため、2つのXコンデンサが非常に高い耐サージ性を持っていることが分かります。ちなみに過去にはX2よりも更にピーク電圧が低いサブクラスのX3も存在しましたが、2013年に廃止されました。

Xコンデンサ使用時には感電に注意が必要

 

常に電源に並列接続して使用するXコンデンサでは、電源を遮断しても内部電荷は充電されたままのため、不用意に触ると感電する恐れがあります。そのため、電源を遮断してから放電するまでの時間が法律や規則類で定められており、電気用品安全法であれば1秒後に45V以下になること、国際規格のIEC60950であれば時定数分の時間が経過した段階で電圧が初期値の 37%に減衰することを要求しています。

これらを満たすため、Xコンデンサの感電対策として使用されるのがブリーダ抵抗や放電抵抗と呼ばれる抵抗素子です。ブリーダ抵抗はXコンデンサと並列に接続して使用し、電源遮断時にコンデンサの充電電荷が流れることで素早い放電を促します。ブリーダ抵抗の抵抗値は電源電圧やコンデンサの容量、規格類が要求する放電時間から算出され、その値が小さいほど放電までの時間が短くなる一方で、放電中の電力消費量も増えることに注意が必要です。

まとめ

今回はノイズ対策の1つであるXコンデンサについて、基本的な2つのノイズの情報や具体的な対策の仕組み、種類や安全上の注意点などを網羅的に解説しました。回路設計ではノイズ対策を避けて通ることはできないので、今回の内容をきちんと理解しておくと必ず役に立つことでしょう。ノイズ対策には他にも種類があるため、気になった方はぜひ詳しく調べてみることをオススメします。

 

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