デジタル信号をアナログ信号に変換するD/Aコンバータとは?
2024.10.13更新
機電系エンジニア必見!!貴重なフリーランス案件はこちら ▶電子回路設計やオーディオ分野でよく耳にするD/Aコンバータ。今回はそんなD/Aコンバータについて、性能を左右するパラメータや原理など、基本的な内容について解説します。
D/Aコンバータとは
自然界に存在する音や光、気圧のように数値が連続的に変化する信号をアナログ信号と呼ぶのに対し、0や1などのデータ列で表された離散的な信号をデジタル信号と呼びます。そしてデジタル信号をアナログ信号へと変換する回路や機器、IC素子をD/Aコンバータやデコーダと呼びます。
身の回りでは音声や映像を再生する機器や通信機器などに搭載されていることが多く、工業用途としてセンサが検知した信号を電流や電圧などのアナログ信号として出力するのに使われることもあります。
D/Aコンバータの性能を左右する要素
D/Aコンバータの性能を左右する要素として、分解能とサンプリングレートがあります。それぞれの意味や特徴について理解しておきましょう。
分解能
D/Aコンバータから出力されるアナログ波形をよく見ると、カクカクと角張った階段状になっています。そして段差同士の高さの変化がどれだけ細かいかを表すのが分解能で、数値が高くなるほど波形は滑らかとなり、より自然なアナログ波形に近づきます。一般的に8ビットや10ビットのようにビット数で表されることが多く、8ビットなら2の8乗=256段の段差が、10ビットなら2の10乗=1024段の段差がある波形となります。
サンプリングレート
D/Aコンバータが出力するアナログ波形が、時間軸に対してどれだけ細かいかを表すのがサンプリングレートで、その値はアナログ出力が目標値に到達するまでにかかる時間、すなわちセトリングタイムによって左右されます。分解能とサンプリングレートは共に高い方が良いものの、一般的な傾向として互いにトレードオフの関係になっていることが多いことを覚えておきましょう。
D/Aコンバータの方式ごとの原理
続いてD/Aコンバータの基本的な原理について、特徴や利点などにも触れながら解説していきます。
ラダー抵抗方式
ラダー抵抗式とは、抵抗素子をはしごのように構成した「ラダー抵抗」回路を、2種類の抵抗で構成したD/Aコンバータの方式です。信号が経由するルートによって流れる電流が変化することを利用し、デジタル信号に応じてスイッチを切り替えることで所望のアナログ信号を出力します。回路構成が単純で規模も小さいため、最も主流なD/Aコンバータ回路としてモータの制御やサーボ制御などに使用されます。
抵抗ストリング方式
複数の抵抗を直列に接続して電圧を印加した際、経由する抵抗の数に応じて分圧された電圧が取り出せるのを応用したのが、抵抗ストリング方式のD/Aコンバータです。構成がシンプルで線形性に優れるものの、分解能が高くなるとスイッチの寄生容量によって動作速度が下がってしまう特徴があります。
ビット数が増えるにつれて素子数も指数関数的に増えるため、中にはオペアンプと抵抗の段数を増やして全体の素子数を減らしたものもあります。但しオペアンプが増えるほど処理速度が落ちる上にオフセットが乗ってしまう可能性もあるため、回路規模との兼ね合いを見て設計するのが一般的です。
電流加算方式
複数の抵抗を並列に接続し、それぞれにスイッチを設けた構造のD/Aコンバータ回路を電流加算方式と呼びます。基準となる抵抗の値をR、1つ隣の抵抗を1/2R、さらに隣の抵抗を1/4Rといった具合に値を変えて重みづけすれば、それぞれの抵抗に流れる電流も変化します。これを応用し、入力されたデジタル信号をスイッチのオンオフ信号として利用することで、デジタル入力に応じたアナログ電流出力が得られるのです。
PWM変調方式
オンオフを繰り返す電圧パルス列を平滑化すると、オン時間とオフ時間の比率に応じた平均電圧を得ることができます。これを利用し、入力されるデジタル信号に応じて所望のアナログ出力を得るD/A変換回路をPWM変調方式と呼び、モータの回転数制御やオーディオアンプの出力制御などに利用されています。スイッチング素子に半導体素子を使用すれば高速なスイッチングが実現できる上、素子における消費電力も抑えられるのが特徴です。
ΔΣ(デルタシグマ)方式
高い分解能のD/Aコンバータにはオーバーサンプリングと呼ばれる手法を利用したΔΣ(デルタシグマ)方式が多く採用されています。サンプリングレートを大きく上回る周波数で信号をサンプリングすると、サンプリング時に生じる誤差が広い周波数に分散され、結果的にデータとして必要な周波数に含まれる誤差を減らすことができます。ΔΣ方式ではこの利点を活かし、出力信号に含まれる量子化誤差や折り返し誤差を減らすことで、通常よりも分解能の高いD/Aコンバータが実現できるのです。
D/Aコンバータに生じる誤差について
最後に、D/Aコンバータに生じる特徴的な誤差としてDNLとINLの2つを解説していきます。誤差の単位にも触れていくので、実際にD/Aコンバータを購入するときの参考にしてみてください。
誤差を表す単位はLSB
D/AコンバータやA/Dコンバータの誤差を表す単位には、デジタル信号の差として判別できる最小のアナログ信号幅であるLSB(Least Significant Bit)が使用されます。例として出力レンジが±10Vで12ビットの分解能を持つD/Aコンバータを考えると、20Vのアナログ信号を4,096点のデジタル信号に分割するため、このコンバータのLSBは4.88mVとなります。仮に性能表で精度が±3LSBと記載されていた場合、表示されるアナログ信号には14.64mVの誤差が含まれていることを表します。
DNL(微分非直線性誤差)
日本語で微分非直線性誤差と訳される誤差がDNLで、デジタル信号入力を1LSBずつ最大値まで増加させた時、理想的なアナログ出力波形と実際の出力との間に生じる誤差のことです。理想特性からズレていない、あるいは正方向にずれるD/Aコンバータは単調性を持つと言うのに対し、理想特性から負方向にずれるものは非単調性を持つと言います。DNLが±1を超える場合、全体を通して出力されないアナログ信号(通称、ミッシングコード)が出てしまうため注意が必要です。
INL(積分非直線性)
D/Aコンバータにおける出力波形は直線であるのが理想ですが、実際には多少曲がった曲線となります。このズレ具合を表すのが積分非直線性と訳されるINLで、理想的な入出力特性を表す直線と実際の出力波形との最大偏差をLSB単位で表します。ここで、INLの測り方にはエンドポイント方式とベストフィット方式の2種類があります。
エンドポイント方式はレンジの最大値と最小値を結んだ直線を理想とするのに対し、ベストフィット方式では平均二乗法によりINL誤差が最小となる直線を理想直線として使用します。INLもDNLと同様に±1を超えるとミッシングコードが出てくるため、高精度なD/Aコンバータを選定する時はDNLとINLがそれぞれ1以下のものを選ぶと良いでしょう。
まとめ
今回はデジタル信号をアナログ信号に変換するD/Aコンバータについて、性能の指標や変換原理、誤差の種類などを解説してきました。アナログ信号をデジタル信号に変換するA/Dコンバータも同様に覚えておくと役に立つので、この機会に合わせて勉強すると良いでしょう。
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