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LiDARセンサーの基礎|自動運転にも重要な仕組みや特徴とは

2023.10.10更新

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この記事を書いた人

機電系専門ライター Div.長谷川

長谷川

FREE AID編集部 機電系専門ライター Div.
アナログ回路設計・営業を経験した後ライター&ディレクターとして独立。
電気電子・ITジャンルを得意とし、正確で分かりやすい情報の発信を行っています。

自動車のセンサーにおいて「LiDARセンサー」という単語を聞いたことがある方は多いのではないでしょうか。LiDARセンサーは、自動車の眼となるセンサーの一つであり、ADASなどの安全・便利な機能を実現するために欠かせない存在です。

今回は、そんなLiDARセンサーの仕組みや特徴などをわかりやすく紹介します。

LiDARセンサーとは

LiDARセンサーとは「Light Detection And Ranging」の略で、レーザー光を使って物体の検知、測距を行う装置のことです。特定の方向にパルス状になったレーザーを照射し、物体に当たって跳ね返ってくるまでの時間や周波数の変化を検知し、物体との距離を測ります。

長距離の物体を高精度に検知できることから、自動車の前方監視システムに使われるほか、数多くの分野で活用されています。ただ、自動車のセンサーとしては万能ではなく短所もあるため、ステレオカメラ、ミリ波レーダーと組み合わせて使うのが一般的です。

ステレオカメラやミリ波レーダーの特徴について詳しく知りたい方は、「ステレオカメラって何?原理や用途、車載用の最新動向もチェック!」「ミリ波レーダーとは?使われる理由や特徴を紹介!」を参考にしてください。

LiDARセンサーの仕組み・原理

続いて、LiDARセンサーがどのような仕組みで動いているのか、原理をより詳しく紹介していきましょう。

赤外光レーザーを放射し測距

まず、LiDARセンサーがセンシングで用いるのは、905nmや1550nmといった近赤外領域のレーザー光です。赤外線を使うのは、カメラで検知する可視光域と干渉しないことや、太陽光の影響が少なくノイズが小さいこと、人体(特に眼)への影響が少なく高強度のレーザーを使えることが理由として挙げられます。

また、物体の有無や位置を計測する方法には、TOF(Time of Flight)方式とFMCV(周波数変調)方式があります。TOF方式は、送信したレーザーが返ってくるまでの時間から距離を測る方法で、FMCV方式は障害物に当たることで生じる周波数の変化から距離を測る方法です。

現在はToF方式が用いられていますが、FMCV方式のほうが高性能化・小型化・低コスト化の余地が大きいことから、将来性があるといえます。

レーザーを走査して周囲を計測

レーザーは光を一点に集中させることでエネルギーを高めているため、光が集中する点でしか距離を測ることができません。そのため、周囲の障害物を検知するには、レーザー光の方向を制御し、必要な範囲を走査する機構が別途必要です。以前は、レーザーに回転機構を付けて物理的に方向を制御していましたが、最近では回転機構が不要なソリッドステート方式とMEMS方式が主に使われています。

ソリッドステート方式は、液晶回折格子などの光学素子を使ってレーザーを回折させ、角度を付ける方法です。一方、MEMS式は微細加工によって作ったMEMSミラーを使い、電流を流してミラー角度を変えることでレーザー角を制御します。特にMEMS式は低コストで広角制御が可能なことから、様々な企業が力を入れて開発を行っています。

点群データを解析

レーザー光による走査を行うと、角度ごとでさまざまな物体までの距離が測定できますが、そのままでは障害物の内容まで認識することはできません。そのため、得られた距離データを点群データとして統合し、障害物の形状や種類を認識するといった解析を行っています。

点群データの詳細な処理方法はメーカーごとで異なりますが、総じて高精度な3次元マッピングを実現し、障害物の種類、危険度の判定に役立てています。

LiDARセンサーの特徴

ステレオカメラやミリ波レーダーと使い分けられる理由には、LiDARセンサーにしかない特徴があるからに他なりません。他のセンサーと比べた際の、LiDARセンサーの特徴、メリットを紹介します。

検知距離、角度に優れる

まず、レーザー光は出力が強いため、他のセンサーよりも検知距離が非常に長くなります。レーザー強度が強すぎると人体に悪影響があるため、出力は一定以下に抑えられていますが、それでもミリ波レーダーなどと比べると検知距離は長いです。また、走査方法によっても変わりますが、広角のセンサーが多く検知できる範囲が広いというメリットもあります。

物体認識の精度が高い

LiDARセンサーは、波長の短い赤外線を使っているため、距離分解能を高く保てるのが特徴です。特に、レーザー光の位相の変化を測定する位相シフト方式では、1mm程度という非常に高い分解能を誇ります。

また、レーザー光は収束度が高いため、上下左右の角度分解能も高めやすいのもメリットです。ミラーの角度ステップを細かく設定するなどさまざまな工夫が必要ですが、0.1度以下での角度分解能を実現できます。このように、LiDAR センサーはステレオカメラやミリ波レーダーより分解能が高いため、小さな物体など、判別の難易度が高い物体でも正確に認識できるのが強みです。

夜間の測定に強い

LiDAR センサーの3つ目のメリットは、夜間の測定に強いことです。カメラの場合は、周囲の照度が低いと検知性能が一気に下がりますが、赤外線レーザーは照度の影響を受けないため、安定した性能を保つことができます。

カメラのように、センサー部に水滴がついて測定精度が下がるといったことも無いので、設置場所に困ることも少ないです。ただ、悪天候時は雨や雪などで赤外線が減衰してしまうため、波長が長く減衰の少ないミリ波レーダーを活用する必要があります。

LiDARセンサーの短所

このように、LiDARセンサーは多くの特長を持っていますが、短所もあるため他のセンサーとの役割分担が欠かせません。主な短所について解説します。

導入コストが高い

まず、LiDAR センサーはカメラやミリ波レーダーと比べて非常に高価なのが最大のデメリットです。測定精度は車載センサーの中で最も高いのですが、ハイエンドなLiDAR センサーでは数百万円単位でコストがかかる場合もあります。

そのため、特に安価さが求められる自動車においては、ステレオカメラとミリ波レーダーのみを用いてセンシングを行っている場合が多いです。コストを下げるための開発も進められており、少しずつ価格は下がってきていますが、車載センサーの主流として使われるのは難しいかもしれません。

赤外線が阻害されると精度が下がる

まず、LiDARセンサーは赤外線を使うため、障害物やその他の物体によって吸収・散乱されてしまうと正確な測定が難しくなります。例えば、黒色の物体は可視光を全て吸収しますが、赤外線も吸収する場合が多く、LiDAR センサーでの検知感度が下がりやすいです。同様に、雨や雪などはレーザー光を散乱させてしまい、散乱光が反射光と混ざって誤検知が生じる原因となります。

取付場所を選ぶ場合がある

LiDAR センサーはレーザーをミラーで反射させる形式が多く、センサーのサイズが大きくなりがちです。最近はMEMS式の開発などでサイズは小さくなりつつありますが、まだ完全に置き換わってはいません。センサーのサイズが大きくなると設置個所が限られてしまい、車のデザインにも影響があるため、設置が難しいというデメリットにつながります。

まとめ

今回は、車載センサーの一つである「LiDAR センサー」について、仕組みや原理、メリット・デメリットなどを解説しました。LiDAR センサーは赤外線レーザーを使うため、他の車載センサーより測定精度や分解能が高く、正確な障害物の検知を行うためのセンサーとして注目されています。

しかし、現在は価格が高いことから乗用車における採用が難しく、主流とはなっていません。MEMS方式など小型・低コストな製品の開発も行われていますが、今後、車載センサーとしてどの程度普及するかは未知数です。今後のセンサー市場の変化が気になる方は、LiDAR センサーの開発状況を注視しておきましょう。

 

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