長距離送電で起こるフェランチ効果とは?原因・影響・対策を解説!

2025.01.17更新
機電系エンジニア必見!!貴重なフリーランス案件はこちら ▶長距離送電において問題になるフェランチ効果をご存知でしょうか。聞き慣れない方も多いと思うので、今回はフェランチ効果の原因や影響、対策などを解説します。フェランチ効果発生のメカニズムと密接に関わる力率についても触れているので、ぜひ最後まで読んでみてください。
フェランチ効果とは
フェランチ効果とは、長距離送電において系統全体が進み力率になった際、受電端電圧が送電端電圧を上回る現象のことです。回路の一次側の電圧より二次側の電圧の方が大きくなる、と聞くと直感に反するかもしれませんが、セバスチャン・フェランティという人物が実験的に発見したとされており、実際の電力系統でも起こり得る問題として広く知られています。詳しい影響などは後述するものの、機器の劣化や効率の低下などの悪影響を招く現象であることを覚えておきましょう。
力率とは
フェランチ効果が起きる状況を理解するには、力率についても理解が必要です。力率とは送電端から送られた電力のうち、何らかの仕事を行う有効電力として取り出せた割合のことです。力率には遅れ力率と進み力率の2種類が存在し、それぞれで異なる特性を持ちます。
遅れ力率とは
遅れ力率とは名前の通り電圧に対して電流の位相が遅れている状態を指しており、コイルなどの誘導性負荷が支配的な回路において発生します。一般的な電力系統ではモータや変圧器などの機器にコイルが使用されているため遅れ力率であることが多く、進相コンデンサを用いて力率改善を行っていることが多いです。ちなみに遅れ力率では受電端電圧は送電端電圧よりも低くなるため、フェランチ効果は発生しません。
進み力率とは
電圧に対して電流の位相が進んでいる状態を進み力率と呼び、コンデンサなどの容量性負荷が支配的な回路で発生します。上で述べたように一般的な電力系統は遅れ力率であることが多いですが、力率改善用に設置した進相コンデンサにより回路全体の容量性が支配的になると、進み力率となることがあります。ベクトル図で見ると分かりやすいですが、進み力率の回路では電流が生み出す電圧降下の影響により受電端電圧が送電端電圧を上回るため、フェランチ効果が発生します。
フェランチ効果が起きやすい状況とは
フェランチ効果は長距離送電のように送電経路が長い場合と、電力需要が著しく低下した場合に起きやすいです。まず送電系統を巨視的に見ると、架空送電線と大地の間に絶縁体(空気)を挟み込んだ巨大なコンデンサと見なすことができます。
コンデンサの容量は電極の面積に比例し、長距離送電では巨大コンデンサの容量が大きくなることで系統が容量性に傾きやすく、結果としてフェランチ効果が発生しやすくなるのです。また進相コンデンサを用いて力率改善している系統では、進相コンデンサを繋いだ状態で電力需要が著しく低下すると容量性負荷が支配的となるため、結果的にフェランチ効果が発生しやすくなります。
フェランチ効果の影響
進み力率の長距離送電で発生しやすいフェランチ効果ですが、具体的にどのような影響を及ぼすのでしょうか。代表的な影響について解説していきます。
コイルが過励磁となる
一つ目の影響は変圧器やモータなどコイルを使用した機器において、コイルに流れる励磁電流が増加し、過励磁と呼ばれる状態になることです。過励磁になるとモータや変圧器の騒音や振動が増加することに加え、電流を増やしてもコイルが磁化しなくなる磁気飽和も発生するようになります。また磁気飽和が生じると無負荷電流や無負荷損が増加するため、機器の温度上昇や効率低下にも繋がってしまいます。
機器の劣化が早まる
フェランチ効果によって受電端電圧が上昇すると、様々な機器の劣化を早めるとも言われています。多くの機器では通常使用すべき電圧の範囲などが定められていますが、フェランチ効果によってこれらの電圧範囲を超えてしまうと、機器に過大な負荷が掛かって劣化を早めてしまうのです。中でも電気的なストレスを受ける絶縁物が特に劣化しやすいと言われているため、フェランチ効果が発生する系統では絶縁物の寿命には特に注意しておく必要があります。
交流回路の高周波が拡大する
系統全体が容量性負荷となりフェランチ効果が発生すると、進み電流と電線路のリアクタンスが引き起こす高周波が拡大する可能性があります。高調波が系統に流入すると、コンデンサの異音や直列リアクトルの異音、過熱、焼損といった被害の要因となります。
また、そもそも直列リアクトルが挿入されていない系統では、電線路のリアクタンスと進相コンデンサの間で共振を引き起こし、高周波障害がさらに拡大すると言われています。なお、現在では高圧進相コンデンサに適切な高調波耐量を備えた直列リアクトルを組合せて使用することがJIS規格で規定されているため、高周波による影響は解消されつつあるようです。
フェランチ効果を防ぐ代表的な対策
最後に、様々な悪影響を及ぼすフェランチ効果に対する対策について触れていきます。
進相コンデンサを切り離す
繰り返しの説明となりますが、力率改善のために進相コンデンサを設置している系統では、負荷が著しく低下することで系統の負荷が容量性に傾いてフェランチ効果が発生するため、負荷が低下したタイミングで進相コンデンサを切り離せばフェランチ効果を防ぐことができます。実際、電力需要の低下が予想される時期に、電力会社から電気工事業者へ進相コンデンサ開放を依頼する通達が出ることもあり、効果的な対策の1つとして知られています。
分路リアクトルを挿入する
進相コンデンサと逆の特性を持つ分路リアクトルを必要に応じて回路へ接続し、系統の力率を進み力率から遅れ力率になるよう調整するのもフェランチ効果対策の1つです。分路リアクトルを送電端と受電端の両方に並列に接続し、軽負荷時のキャパシタンスへ流れる充電電流を補償することで電圧の上昇を防ぎます。分路リアクトルは通常の変圧器と同じような外観をしており、地上型だけでなく電柱の上に設置する柱上型も存在します。
自動力率調整装置を導入する
力率を監視しながら自動で進相コンデンサを入り切りする自動力率調整装置を導入するのも、フェランチ効果対策の1つと言えるでしょう。前提として、電気事業者などの立場からすると、力率改善のために導入した進相コンデンサを切り離すのは有効電力の低下を招く可能性があるリスキーな行動と言えます。
また昨今では太陽光発電や風力発電など再生可能エネルギーを利用した発電が増加している一方で、電力需要は増え続けているため、電力の需給バランスを人力で把握するのは不可能と言えます。そこでAPFRを使用して最適なタイミングで進相コンデンサを切り替えることで、有効電力を最大化しつつ系統に発生するフェランチ効果を抑えられるため、電力の供給側と需要者側の双方に大きなメリットがあるのです。
まとめ
今回は長距離送電において問題となるフェランチ効果について、発生する原因や影響、対策などを解説してきました。進み力率の時しか発生しない問題ではあるものの、電力需要の変化が激しい時期に発生しやすい現実的な問題であると理解できたのではないでしょうか。送配電に関する知識を身につけたい方は、他の問題や対策なども勉強してみると良いでしょう。
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