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  • ツェナーダイオードとは?特性や使い方、用途をわかりやすく説明します
  • ツェナーダイオードとは?特性や使い方、用途をわかりやすく説明します

    2024.08.06更新

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    この記事を書いた人

    機電系専門ライター Div.長谷川

    長谷川

    FREE AID編集部 機電系専門ライター Div.
    アナログ回路設計・営業を経験した後ライター&ディレクターとして独立。
    電気電子・ITジャンルを得意とし、正確で分かりやすい情報の発信を行っています。

    ツェナーダイオードは、ダイオードの中でも定電圧を生み出す用途に特化した、少し変わった機能の電子部品です。代替する部品がなく利便性が高いことから、数多くの電子回路に使われています。今回は、そんなツェナーダイオードの利用を検討している人に向けて、特性や原理、使用時の注意点などを詳しく解説します。

    ツェナーダイオードとは

    ツェナーダイオードは、一定の逆電圧を掛けると絶縁が破壊され、電圧を一定に保ちながら電流が流れるダイオードです。定電圧ダイオードとも呼ばれます。通常のダイオードは、順方向の電流を流し逆方向の電流を絶縁するため、順方向の接続しか行いません。逆方向の接続は想定されておらず、一定以上の逆電圧が掛かると破損します。

    一方、ツェナーダイオードは逆電圧を掛けるのが目的となっており、一定以上の逆電圧がかかると、破損せず急激に電流を流すようになります。この時、入力電圧によらずツェナーダイオード出力電圧はほとんど変動しないので、簡易的な定電圧を出力するのに使用されるほか、サージ電圧など、短期的に印加される大電圧を逃がすためにも使われます。

    ツェナーダイオードの特性

    ツェナーダイオードの特性は以下の図のようになります。

    引用:ROHM

    純方向の電流はダイオードと同じですが、注目すべきは逆方向の降伏電圧です。一定の電圧以下では、ダイオードと同様にほとんど電流が流れません。しかし、ツェナー電圧を超えるとツェナー降伏やアヴァランシェ降伏によって一気に電流が流れるようになり、入力するエネルギーに関わらず、ほぼ一定の電圧値が保たれたままになります。

    このツェナー電圧や、電流値に対する電圧の変動は、ツェナーダイオードの構造によってある程度自由に調整できるため、さまざまな仕様の製品が販売されています。

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    逆降伏電圧の原理

    ツェナーダイオードにおいて最も重要なのは、逆電圧を掛けた際に生じるツェナー降伏、アバランシェ降伏です。これらの逆降伏電圧が生じる原理を説明します。

    ツェナー降伏

    ツェナー降伏は、トンネル効果により電子が空乏層を通り抜けることで、電流が流れ出す現象のことです。元々の空乏層が厚いとツェナー降伏は生じにくく、薄いと生じやすくなるので、半導体への不純物濃度を調整することで、ツェナー降伏が生じる電圧を制御することができます。

    ちなみに、ツェナーダイオードの場合、逆電圧で電流が流れ始めるのはツェナー降伏が主な原因です。その後電流が増えていくと、アバランシェ降伏が支配的となっていきます。

    アバランシェ降伏

    アバランシェ降伏は、自由電子が加速されて電流が流れる現象のことです。「なだれ降伏」とも呼ばれます。

    ダイオードに逆電圧を印加すると、若干の電流が流れて電子が移動します。この時、移動した電子が電界によって加速され、結晶内の電子にぶつかってエネルギーを譲渡するといった動きが生じます。

    ここで、電圧が十分に高いと、自由電子が持つエネルギーも大きいので、結晶内の電子を結晶内からはじき出し、自由電子を作り出すこととなるのです。

    はじき出された自由電子は、同様に電界によって加速され、他の電子に衝突することから、どんどん結晶内の電子がはじき出され、雪崩のように自由電子が増加することとなります。

    作り出された自由電子は電流として流れるため、一気に絶縁が破られ電流が流れることとなります。ここまでの動きがアバランシェ降伏です。

    ちなみに、アバランシェ降伏の生じやすさは逆電圧の高さと、ダイオードの空乏層の広さに依存します。空乏層が広がると電子が加速する空間が広くなるため、アバランシェ降伏は生じやすくなります。

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    ツェナーダイオードの使用例

    シャントレギュレータ

    シャントレギュレータは、電圧を一定に保つ電源回路のことです。ツェナーダイオードは、その逆電圧がツェナー電圧以上にならないので、単体で簡易的なシャントレギュレータとして働きます。

    ただ、ツェナーダイオードは温度によってツェナー電圧が変化するなど誤差が大きいので、精密に電圧制御を行いたい時には向いていません。ツェナーダイオード以外にもオペアンプなどを使った、より精度の高いシャントレギュレータが販売されています。

    サージ吸収

    電子回路においては、スイッチの開閉、雷や静電気、電波ノイズなど、さまざまな要因でサージ電圧が生じます。サージ電圧が入ると回路に接続した電子部品が破損するため、サージ電圧を吸収する機構が重要となるのですが、その手段としてツェナーダイオードが使用されます。

    ツェナーダイオードはサージが入る回路とGND間に接続するだけで簡単にサージを吸収できるため、保護回路として優秀です。吸収できるサージには限界があるため、さまざまな部品との併用ではありますが、多くの回路で採用されています。

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    ツェナーダイオード使用時の注意点

    ツェナーダイオードは定電圧源や保護回路などで数多く使われますが、ツェナーダイオードを採用する場合は、温度特性による電圧変化とノイズに注意が必要です。

    ツェナー電圧は温度変化する

    ツェナーダイオードは、温度によってアバランシェ降伏、ツェナー降伏が生じる電圧値が変化するので、ツェナー電圧が変動します。アバランシェ降伏は温度が上がるほど電圧が上がる正の相関関係にあり、逆にツェナー電圧は負の相関関係にあります。

    ツェナーダイオードは、基本的にはアバランシェ降伏が支配的となるため、ツェナー電圧は温度が上がるほど高くなることが多いです。しかし、ツェナー電圧が小さい場合はツェナー降伏が支配的となる場合もあります。

    利用温度に合わせた設計や、誤差を含めた設計を厳密に行う必要があるため、必ずデータシートを確認し、製品ごとの特性を理解して設計を行ってください。

    ノイズの原因になる

    一般的な電子機器では問題となりませんが、オーディオ機器など、ノイズに対して繊細な電子機器を設計する場合は、ツェナーダイオードがノイズの原因となることも覚えておかなければなりません。

    ノイズの原因はアバランシェ降伏であり、放出されるノイズは熱雑音(ホワイトノイズ)です。ツェナー電圧が高いほどノイズも大きくなる傾向にあるため、ツェナーダイオードがどうしても必要になる場合は、ツェナー電圧が低いものを2つ直列につなぐことでも対策となります。

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    まとめ

    今回は、ツェナーダイオードの特徴や原理、用途などについて解説しました。ツェナーダイオードは降伏電圧を持ち、逆電圧を一定に保つ効果があることから、シャントレギュレータやサージ対策に用いられます。

    温度特性によるツェナー電圧の変化や、ノイズの発生要因ともなるなど注意点もありますが、電子回路の設計においては欠かせない存在なので、特性を理解した上で活用してください。

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