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サイリスタとは?仕組みや使い方を簡単に説明します

2023.10.08更新

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この記事を書いた人

機電系専門ライター Div.長谷川

長谷川

FREE AID編集部 機電系専門ライター Div.
アナログ回路設計・営業を経験した後ライター&ディレクターとして独立。
電気電子・ITジャンルを得意とし、正確で分かりやすい情報の発信を行っています。

ダイオードやトランジスタと並んで、非常に利便性の高い半導体部品であるサイリスタ。知名度こそ低いものの、大電流回路用のスイッチとして、電力制御機器に多用されています。本記事では、サイリスタの基本的な情報を詳しくお伝えします。

サイリスタとは

サイリスタは、トランジスタのように電気信号のスイッチングを行う電子部品のことです。端子の数もトランジスタと同じく3つであり、制御用のスイッチとなるゲート、電源を接続詞、電流を引き込むアノード、電流を流すカソードに分かれています。

ただ、回路記号はダイオードに3つ目の端子が生じたような形状となっており、トランジスタのように電流の増幅を行うことはありません。ここまでの通りだと、トランジスタの代わりにサイリスタを使う理由がないようにも思えますが、サイリスタは大電流に耐えることが可能なため、電力制御用途で用いられています。

現在では、IGBTの発展によりサイリスタから置き換えが行われていますが、サイリスタにはメンテナンスコストが安価などの特徴があることから、今でも一部の用途で根強く使われています。

サイリスタの構造・仕組み

サイリスタは、PNPNという形でP型半導体とN型半導体を積層させた、シンプルな構造をしています。P型は3番目のP層に、N型は2番目のN層にゲート端子を取り付けた形状となります。

サイリスタの動作は、PNP型とNPN型のバイポーラトランジスタを組み合わせた等価回路(NPが共通)として考えると簡単です。P型であれば、NPN型のベースがONするとコレクタがGND接地し、PNP型のベース電圧もGND接地するため、サイリスタの出力がONとなります。

ここで、サイリスタの特徴として「自己保持機能」があります。自己保持機能とは、一度ベース電圧を入力してサイリスタをONすると、その後ベース電流を切断してもサイリスタの出力はONし続けるということです。

そのため、バイポーラトランジスタと違い、ベース電流による損失を抑えられる代わりに、ON/OFFを行う場合は切断用の周辺回路を設計する必要が生じます。

サイリスタの用途

サイリスタは大電力を扱う用途で使われることが多く、社会を陰から支えています。そんなサイリスタの主な用途をお伝えします。

高電圧直流送電(HVDC)

高電圧直流送電(HVDC)とは、その名の通り高電圧の直流電流を、電力の輸送に使う送電手法です。現在、家庭用などの一般的な送電には、交流電源が使われています。これは、電気が普及した19世紀において、交流送電の方が送電の効率が良く、変圧が容易に行えたことがきっかけです。

しかし、最近は直流電源でも容易に変圧が行えるようになったこと、また高電圧を使った長距離輸送を行う場合は直流送電の方が効率がいいことから、電力送電においてHVDCの採用が進み始めています。

ここで、サイリスタはHVDCの終端における交直変換機として多数使用されています。複数のサイリスタ素子を接続し、高電圧・大容量の電力を整流する「サイリスタバルブ」という名称が一般的です。

調光ユニット

舞台照明などでは、パーライトなどを使って光を当てますが、適切な演出を行うには、単純に光の点灯・消灯を行うだけでは不十分です。少しずつ光量を増やして雰囲気を演出するなど、細かな調整が必要となるのですが、光量の調整に使えるのがサイリスタの一つであるトライアックです。

光源には交流電源を用いるのですが、その交流電源と同期させてトライアックを制御することで、ON/OFFのデューティ比を任意に調整し、光の強さを調整します。この制御方法では、光源は点滅することとなりますが、人間の眼には連続した光に見えるので問題はありません。

もう一つの調光方式であるスライダック方式よりも制御装置が小さく、安価に購入できるので、調光ユニットとしてトライアックが良く用いられています。

電車のスピード制御

電車のスピードを制御するうえでも、サイリスタは重要な役割を果たします。サイリスタは直流電源を高速にON/OFF制御してチョップ(切り刻む)し、モーターに最適な形で電力を供給することが可能です。

電流を遮断するだけなので特別な機能ではありませんが、大電流でも損失が小さくスイッチング速度が速いこと、また小型で耐久性に優れることから、サイリスタが一般的に使われてきました。

現在ではIGBTへの置き換えが進んでいるものの、一部の路面電車などでは未だに使われています。

サイリスタの種類

サイリスタの一般的な仕組みや用途をお伝えしましたが、サイリスタはトランジスタと同様に、構造の違いによっていくつかの種類に分かれています。ここからは、良く用いられるサイリスタについてお伝えします。

GTOサイリスタ

GTO(ゲートターンオフ)サイリスタは、ゲート電極の制御により、OFF制御も行えるようにしたサイリスタです。通常、サイリスタをターンオフするには、出力電流を止めるか、カソードからアノードに電流を流す必要があり、外付けの制御回路が必要という課題がありました。

一方、GTOサイリスタは、ゲートからカソードに電流を流すだけでターンオフが可能となっており、設計が容易となることから、電車用途などで数多く使われました。ただ、ターンオフ時間が遅いこと、またゲートに流す電流が出力電流の1割程度と電力のロスが大きいデメリットがあり、現在はIGBTに置き換わりつつあります。

光トリガサイリスタ

光トリガサイリスタは、スイッチング制御を光によって行うサイリスタです。制御回路と駆動回路を完全に絶縁できるので、ノイズによる誤動作を防げるのが特徴です。特に、100kV以上を扱う高電圧直流送電においては、制御側と送電側の絶縁が非常に重要なので、光トリガサイリスタが一般的に使われています。

トライアック

トライアックは、サイリスタを逆方向に2つ並列して接続し、双方向の電流を制御できるようにした部品です。アノード、カソードは電流の方向により変わるため、ターミナル1、ターミナル2という名称で呼ばれます。

双方向の電流に対応できることから、交流回路の電力制御に使われるのが主な用途です。モーターの制御や調光回路などに用いられています。

まとめ

今回は、サイリスタの原理や特徴、種類について解説しました。サイリスタはダイオードにスイッチ端子が付いた半導体で、耐圧性能の高さ、効率の良さなどから送電、電車の速度制御、調光ユニットなど、大電力を使う機器の電力制御に用いられます。

身近に見ることは少なく、IGBTに置き換えが進んでいる所もありますが、今でも社会を陰から支え続けている存在です。

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