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化合物半導体の基礎知識|特性や主な種類、用途を理解しよう

2023.10.10更新

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この記事を書いた人

機電系専門ライター Div.長谷川

長谷川

FREE AID編集部 機電系専門ライター Div.
アナログ回路設計・営業を経験した後ライター&ディレクターとして独立。
電気電子・ITジャンルを得意とし、正確で分かりやすい情報の発信を行っています。

パワー半導体など、最近の半導体業界において存在感を増している「化合物半導体」。言葉は聞いたことがあるものの、どんな半導体のことを指しているかご存じない方は多いのではないでしょうか。そこで本記事では、化合物半導体の特徴や種類など、基本的な内容をお伝えします。

半導体とは

まず前提として、半導体について説明しましょう。半導体は、導体と絶縁体の中間の性質をもち、抵抗値が10^8~10^-4の間となる物質のことです。抵抗値は導体より高いため、普段は電流を流しませんが、温度が上がるにつれて電流が流れやすくなります。

また、半導体は特定の不純物を少量混ぜると、一気に電流が流れやすくなるのが大きな特徴です。自由電子が生まれる不純物を混ぜたものをN型半導体、電子が足りず正孔が生まれる不純物を混ぜたものをP型半導体と呼びます。

このN型半導体とP型半導体を接合すると、電流が流れる方向やタイミングを制御できることから、スイッチングや整流回路としての利用が進み、今では電子回路に欠かせない存在となっているのです。ダイオードやトランジスタはその代表例であり、電子回路の小型化・高密度化を支えています。

化合物半導体とは

半導体としての特性を持つ物質としては、シリコン(Si)やゲルマニウム(Ge)が有名です。しかし、単一の原子ではなく、複数の原子を組み合わせることで半導体としての性質を持つ物質もあります。GaAs(ガリウムヒ素)、InAs(インジウムヒ素)、SiC(シリコンカーバイド)、GaN(ガリウムナイトライド)など、さまざまな種類が確認されており、これらの物質のことを「化合物半導体」と呼びます。

化合物半導体は、多岐に渡る組み合わせで作ることができ、それぞれが異なる特性を持つことから、シリコンなどでは実現できなかった機能の実現や、高効率化に大きく貢献するとして注目されています。

化合物半導体の種類

続いて、化合物半導体にはどのような種類があるか、周期表の分類ごとに紹介します。

II族-VI族

周期表のII族とVI族の元素が結合した半導体のことです。II族にはMg、Zn、Cdなどが、VI族ではO、Se、S、Teなどがよく用いられます。バンドギャップの範囲が広く、ドーピングでバンドギャップを変化させやすいのが、II族-VI族半導体の主な特徴です。

LEDへの利用用途が多く、特にZnSeなどはバンドギャップが広いので、青色LEDの材料としても使われています。また、P形半導体の作成が難しいといった課題がありましたが、最近はドーピング手法の工夫により改善しており、利用の幅が広がりつつあります。

Ⅲ族-Ⅴ族

周期表のⅢ族とV族の元素が結合した半導体のことです。Ⅲ族元素ではAl、Ga、Inが、V族元素ではN、As、P、Sbなどが用いられます。Ⅲ族-V族は多くが直接遷移型の半導体なので発光効率が良く、LEDの材料として幅広く使われているほか、フォトダイオードなどの利用も盛んです。

中でもGaAs、InPなどは電子移動度の高さが注目されており、電界効果トランジスタなどに使われるほか、太陽電池や半導体レーザーなどへの利用も多いです。また、GaNなどの窒素を用いた半導体はバンドギャップが広く、強固な原子構造を持っていることからパワー半導体として使われています。

IV族-IV族

シリコンに別の原子が混ざった半導体で、SiCが代表例として挙げられます。SiCは、炭素がシリコンと結合することで、バンドギャップが約3倍に広がっているのが特徴です。

また、シリコンと炭素の接合が強固であり、高耐圧、低オン抵抗、高速動作もシリコンより優れるため、パワー半導体として盛んに用いられています。GaNよりも製造ハードルが低くコストも安いため、パワー半導体の主力として幅広く使われることが期待されます。

化合物半導体の特徴

次に、化合物半導体がなぜ注目され、使われているかの理由をお伝えします。

バンドギャップを選べる

半導体は、材質ごとにバンドギャップが異なります。バンドギャップは電流を流すために必要なエネルギーのことを指し、バンドギャップが大きいほど電流が流れにくくなります。半導体はバンドギャップの値により特性が決まりますが、半導体を構成する原子によってバンドギャップは決まるため、人為的に大きく変化させることはできません。

化合物半導体はさまざまな原子の種類を変更し、自由にバンドギャップを選べることから、求める特性を得られるメリットがあります。特に、バンドギャップが大きいと、絶縁破壊強度や熱伝導度が高まることから、パワー半導体など、高電圧・大電流を扱う重要部品としての利用が期待されています。

電子移動度が高い

電子移動度は、半導体中でどの程度電流が流れやすいかを示す物理量です。数値が高いほど電流を流しやすいため、半導体の性能向上につながります。しかし、最も一般的に使われるシリコン(Si)は電子移動度が低く、半導体の特性向上を妨げる一因となっています。

一方、化合物半導体の電子移動度はシリコンより高い場合がほとんどです。例えばインジウムガリウムひ素(InGaAs)ではシリコンと比べて約10倍の電子移動度を誇ります。そのため、材料の置き換えによる半導体特性の向上が期待されています。

化合物半導体が持つ課題

さまざまな特性上のメリットを持つ化合物半導体ですが、シリコンなどの単結晶半導体に置き換わるには課題が多く、多くの場合製品化には至っていません。その主な理由を解説します。

半導体価格が非常に高い

まず、最も大きな課題はコストの高さです。化合物半導体は素材の価格が高いため、どうしても価格はシリコンより上がります。また量産体制も整っておらず、シリコンのような大口径のウェハーを作れないことも、コストが高くなる原因となっています。

量産性の向上など、対策は日々進んでいるためコストは下がりつつありますが、特に安価な製品に採用するのは難しいでしょう。

歩留まりが悪い

生産時に欠陥が発生しやすいことも、大きな課題点です。本来入るべき原子と異なる原子が入り込むアンチサイト欠陥や、原子間の結合が途切れてしまう転位欠陥など、さまざまな欠陥が生じえます。欠陥が入った製品は使えないため、歩留まりが低下して生産性が下がり、性能や信頼性の低下にも繋がります。また、検査に手間が掛かり、コストが高止まりするのも無視できないデメリットです。

同様に、ウェハー自体に割れや欠け、反りなどが発生しやすいという問題もあり、歩留まり低下に拍車をかけています。結晶成長を工夫して欠陥を減らす取り組みは行われているものの、現状では解決には至っていません。

まとめ

今回は、化合物半導体の特徴や主な種類など、基礎的な知識について解説しました。化合物半導体はシリコンなどの単結晶半導体と比べて非常に種類が多く、バンドギャップを自由に選択できるのが強みです。また、材料によって電子移動度や絶縁強度、オン抵抗、耐熱性などがシリコンより優れるため、半導体の性能を向上できる存在として注目を集めています。

現在は量産性の低さや製造不良の多さなどにより、製造コストが高いという課題を抱えていますが、徐々に改善は進んでいます。化合物半導体の利用により、半導体はさらなる発展が見込まれるため、今後の発展を注視しておきましょう。

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