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光ファイバはなぜ使われる?ケーブルとしての特徴や仕組みとは

2023.10.11更新

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この記事を書いた人

機電系専門ライター Div.長谷川

長谷川

FREE AID編集部 機電系専門ライター Div.
アナログ回路設計・営業を経験した後ライター&ディレクターとして独立。
電気電子・ITジャンルを得意とし、正確で分かりやすい情報の発信を行っています。

5Gなどの大容量通信が普及し始めた現代において、大量のデータを高速で通信するには光通信技術が欠かせません。一般家庭でも光回線の導入が進んだことで、光通信はこれまで以上に身近な技術の一つとなりました。今回は、光通信技術を支える光ファイバについて、通信原理やメリット、デメリット、種類に注目して解説します。ぜひ最後まで読んでみてください。

光ファイバ通信の原理と基本構造

まずは、光ファイバ通信がどのような構造で成り立っているかを説明しましょう。光ファイバはコアとクラッドと呼ばれる2種類のガラス繊維によって作られ、情報を乗せたレーザー光を通すことで通信を行います。光はコア内部を通りますが、それだけではファイバーが曲がった時に光がコアから出ていってしまいます。そこで、コアを包む形でクラッドを配置し、コア表面で光が全反射を起こすように設計することで、長距離の光を伝送できるようになっています。

全反射は、光が屈折率の高い物質から低い物質へ一定角度以下で入射したときに生じるので、クラッドにはコアよりも数%屈折率が低い物質を採用します。コア径は非常に細く、数μm~1mm程度の細さとなっています。また、ガラス繊維は脆いので、幾重にも皮膜をかぶせることで強度を高めるのが基本です。

光ファイバ通信のメリット

続いて、なぜ光ファイバが使われるのか、その理由を紹介します。

広帯域で高速な通信が可能

光ファイバ通信は同軸ケーブルなどを用いた電気信号通信に比べ、扱える周波数帯域が広くなるのが最も大きなメリットです。特に高周波領域では、同軸通信が数百MHzまでの信号しか扱えないのに対し、光ファイバではTHzオーダーの通信も行えます。周波数帯域が広いと、1つの信号に載せられるデータ量が増えるので、結果的に電気信号通信よりも高速な通信が可能となります。

低損失で長距離通信が可能

電気信号通信では、電線の抵抗によって発生するジュール損失が主な損失要因です。特に、高周波数領域を扱う通信分野では、周波数が高くなるほど電流が導体の表面を流れる「表皮効果」により実質的な抵抗が増加し、損失が大きくなります。一方、光ファイバ通信では原理や構造上の固有損失はあるものの、電気信号通信と比べると低損失での通信が可能です。そのため、高周波信号の長距離伝送が容易になります。

ノイズ影響がなく設置環境が自由

電気信号通信では地面や他の電線と静電結合して発生する静電ノイズや、周囲の磁界によって生じる電磁ノイズの影響を受けます。また、落雷などの影響も受けるため、敷設場所には十分な注意が必要です。

一方、光ファイバ通信では光を信号媒体として扱うため、外部機器や雷による電気ノイズの影響を受けることはありません。また、光ファイバ自体がノイズの発生源になることもないため、電気信号線が敷設できないような場所でも通信システムを構築できます。

ケーブルが小型で軽量

光ファイバーケーブルは同軸ケーブルやツイストペアケーブルに比べて、小型で軽量です。電気信号通信では、伝送路に銅などの金属を使用しますが、光ファイバケーブルでは光路にガラスやプラスチックを利用します。

これらは銅と比べると1/3〜1/4程度の重さしかないため、同形状であれば光ファイバの方が軽量になるのです。さらに、実際の電気通信では、ジュール損失を減らす目的で必要以上に径を太くすることも多いため、同じ容量の通信を行う場合、光ファイバの方が相対的に小規模で済みます。

光ファイバ通信のデメリット

光ファイバ通信には電気信号通信よりも優れる部分が多いものの、メリットばかりではありません。ここからは主なデメリットについて紹介します。

曲げやねじれに弱い

光ファイバの芯線にはガラスやプラスチックを使用するため、衝撃や過度な曲げに弱く、金属製のケーブルに比べて壊れやすいです。衝撃は光ファイバの周囲に緩衝材を巻くことである程度は対策できますが、曲げに対しては本質的な対策方法がありません。

繊細な取り扱いが必要なので、光ケーブルを敷設する際は金属製ケーブル以上に余長を見込んでおき、余裕のある敷設を心掛けましょう。

扱いが難しい

光ファイバは非常に細く、ケーブル同士を繋ぎ合わせる融着作業には非常に高度な技術が求められます。接続部の芯ズレや空気や異物の混入は著しい損失を招くことから、特に注意が必要です。現在では専用の融着器があるため比較的扱いやすくなりましたが、前述の壊れやすさも相まって扱いが難しいことには変わりありません。

光ファイバの種類

光ファイバケーブルは、流す信号の特性に合わせてシングルモード、マルチモードといったように構造が分かれています。

シングルモードファイバ

1本の光ファイバ内に一つの光信号のみを通す方式をシングルモードファイバと呼びます。シングルモードファイバではコア径が数μmオーダーの細さで作られており、入射された光はコア内をほぼ直線で進みます。一つの光路に複数の情報を乗せることはできないものの、無駄な光路を通ることがないため高速通信を行えるのが特徴です。ただし、コア径に細さが原因で壊れやすく入射制御も難しいため、後述のマルチモードファイバに比べて機器が高価になりがちです。

マルチモードファイバ

一つの光ファイバ内を複数の光信号が伝播するものをマルチモードファイバと呼びます。光ファイバの径を大きくすることにより、複数の光を角度を変えて同時に入射することで、一つの光路に複数の信号を乗せます。コア径が大きいためシングルモードファイバに比べて強度が高く、通信制御の難易度が低く安価なのが特徴です。ただ、複数の信号の干渉や重複といった懸念があるため、長距離通信には向きません。

その他の種類

光ファイバで主流なのは前述の2種類ですが、他にもダブルクラッドファイバやフォトニック結晶ファイバなどの種類もあります。ダブルクラッドファイバは二つのクラッドを持つ光ファイバで、クラッドに入射させた励起光をコア内の希土類元素に吸収させる方法により、ファイバレーザとして使用されています。

フォトニック結晶ファイバはコアの周辺に複数の空洞が規則的に並べられたファイバです。通常の光ファイバでは波長が極端に短いとマルチモードに遷移してしまうことがあり、これを改善して波長によらずシングルモードを伝達できるという特徴を持ちます。

光ファイバの損失

電気信号を使用する通信に比べて高効率な伝送ができる光ファイバ通信ですが、構造や材質、使い方等により発生する損失があります。

材質や製法が原因の損失

光ファイバを構成する材質や製法そのものに原因がある損失として、レイリー散乱損失や吸収損失、コアとクラッド境界面の粗さによる損失などが挙げられます。レイリー散乱は光ファイバ製造中の急冷工程において生じる、わずかに屈折率が異なる部分で光が散乱してしまう損失です。

吸収損失は光信号が光ファイバの材質そのものに熱として吸収される損失で、コア-クラッド境界面の粗さによる損失は粗い部分で光が乱反射する損失です。いずれも光ファイバの製造工程で必ず発生する損失で避けることはできないため、光ファイバの固有損失と呼ばれています。

外力が原因の損失

全反射現象を利用して長距離伝送を行う光ファイバでは、コアとクラッドの境界面で光が全反射しながら軸方向へ光が通過していきます。しかし、外力等により光ファイバを過度に曲げてしまうと、全反射現象が起きずに光がクラッド内へ漏れてしまう可能性があります。

また、全反射しないほど大きな曲げでなくても、多少の曲げがあるとマイクロベンディングロスと呼ばれる損失が発生します。これらの損失は敷設者や使用者の注意によって低減できるため、光ファイバの特性を十分に理解して敷設・使用することが重要です。

接続作業が原因の損失

光ファイバケーブルを融着した際の端面の軸ズレや空気の噛み込みによる損失もあります。ケーブル端面の状態は設置環境や経年によって変化する上、芯出しなどの工程において僅かに汚れや傷が付いてしまうこともあるため、非常に繊細に取り扱っていても避けることが難しい損失の一つと言えます。固有損失同様に光ファイバケーブルを使用する上で避けることの難しい損失として覚えておきましょう。

まとめ

今回は大容量通信を支える光ファイバについて、原理や特徴などを解説しました。光ファイバはガラス繊維やプラスチックに光を伝送することで、通常のケーブルによる電気通信より高周波・低損失な通信を実現するケーブルです。

曲げやねじれに弱く扱いが難しいデメリットこそあるものの、そのメリットの多さから高速通信には欠かせない存在となっています。光ファイバの種類によっても伝送特性が異なるため、詳しく知っておきたい方はより詳細を調べてみて下さい。

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