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ダンピング抵抗ってなに?役割や位置の決め方などをわかりやすく紹介!

2023.10.11更新

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この記事を書いた人

機電系専門ライター Div.長谷川

長谷川

FREE AID編集部 機電系専門ライター Div.
アナログ回路設計・営業を経験した後ライター&ディレクターとして独立。
電気電子・ITジャンルを得意とし、正確で分かりやすい情報の発信を行っています。

ダンピング抵抗は、電子回路のノイズ対策において大きな役割を果たす部品です。ただ、ダンピング抵抗が具体的にどのような効果をもたらすのか、知らない方も多いのではないでしょうか。そこで今回は、ダンピング抵抗の役割を始めとした、基本的な情報を解説します。気になる方はぜひ最後までご覧ください。

ダンピング抵抗とは

ダンピング抵抗とは、振動を減衰させるという英語の「Damping(ダンピング)」に由来して名付けられた抵抗です。デジタル回路において、信号がさまざまな理由でオーバーシュート・アンダーシュートを起こし振動するため、その振動を減衰させる目的で入れられます。

ダンピング抵抗は信号線に直列に入れられ、回路の特性インピーダンスや振動の大きさに合わせて調整されますが、10〜100Ω程度の抵抗を入れるのが一般的です。また、信号線には小さな電流しか流れないため、一般的なチップ抵抗が用いられます。

ダンピング抵抗の役割

ダンピング抵抗には、大きく分けて3つの役割があります。

インピーダンス整合

電子機器同士で信号をやりとりする場合、送信側・受信側のインピーダンスが一致したときが最も効率よく電気エネルギーを伝達できます。逆に、インピーダンスが異なると電気エネルギーの伝達効率が下がるほか、伝達できなかったエネルギーが反射してノイズになるといった問題が発生します。そのため、電子回路においては送信側・受信側のインピーダンスを合わせることが重要になっており、その状態のことをインピーダンス整合と呼びます。

ただ、受信側がICの端子になっている場合、インピーダンスが一般的な機器より低くなっているため、そのまま接続するとインピーダンス整合が行えません。そこで、ICの近傍にダンピング抵抗を接続することでインピーダンスを高くし、整合させるといった方法がとられています。インピーダンス整合についてより詳しく知りたい方は「インピーダンス整合(マッチング)とは?やり方や目的を簡単に説明!」もご覧ください。

信号波形の乱れを抑える

伝送線路上でデジタル信号をやり取りした際、寄生容量・インダクタンスが原因で信号がリンギングすることがあります。リンギングが起きると信号形状が崩れて誤動作の原因になるほか、高周波ノイズを放射する原因にもなるため、リンギングを抑えるための対策が必要です。

ダンピング抵抗を直列に入れると、抵抗によって電流が流れにくくなるため、結果的に波形がなまり、リンギングを軽減することができます。もちろん伝送線路を短くするなどの根本的な対策も重要ですが、ダンピング抵抗による対策もある程度有効です。

サージ電圧からの入力保護

信号波形の乱れと同様に、外部要因によってサージ電圧が発生した時も、ダンピング抵抗によって流れる電流を減らせるため、電子部品を保護することができます。サージ電圧の発生原因として多いのは静電気やコネクタの挿抜です。

静電気からの保護

人が触れるなどにより、回路上に静電気が流れると、瞬間的に高電圧が印加されるため、部品が破損する可能性があります。内部回路であれば筐体に入れることで静電気の流入を防げますが、ケーブルなどで外部機器とつながる部分は静電気を完全に防ぐことはできません。

その場合、ICなどの近傍にダンピング抵抗を入れることで、入ってくる電流を制限し、静電気によるダメージを軽減することが可能です。もちろんダンピング抵抗だけでは対策が十分ではない場合もあるため、他のノイズ対策と並行して行うのが一般的です。

活線挿抜からの保護

ICデバイスの出力側がコネクタに直接つながっている場合、電源が入っている時にコネクタが抜き差しされること(活線挿抜)も想定しておかなければなりません。対策を行っていないと、活線挿抜が行われた瞬間にサージ電圧が発生し、ICの誤動作や破損につながります。

対策としては、クランプ回路などの保護回路を入れるのが有効ですが、ダンピング抵抗でもある程度サージによるダメージを軽減できます。機器の使用中にコネクタが挿抜されうる場所では、サージ対策の一環として入れるのを検討するとよいでしょう。

ダンピング抵抗を入れる際のポイント

信号線のリンギングやサージ電圧の対策となるダンピング抵抗ですが、入れる位置や抵抗値によっても効果が変わります。そこで、ダンピング抵抗を入れる際に押さえておくべきポイントを紹介します。

実装位置も重要

回路図上では同じに見えても、ICからの距離が異なるとダンピング抵抗の効果は大きく変わります。そのため、ダンピング抵抗を入れる場合は設置場所にこだわることが重要です。

基本的には送信・受信端に近いほどダンピング抵抗の効果は高いので、配線長が可能な限り短くなるよう回路パターンを工夫するとよいでしょう。アートワーク設計を自身で行わない場合は、設計者が適切な配置を行えるよう指示することが大切です。

ゼロオーム抵抗を実装する手もアリ

回路図を設計する段階では、ダンピング抵抗を入れるべきか、またどの程度の抵抗値を入れるべきかを明確に設計できない場合もあります。そのようなときは、一旦回路図にゼロオーム抵抗を追加しておき、抵抗を入れる場所を確保しておくと良いでしょう。

試作基板ができてから実験室で性能確認を行い、適切なダンピング抵抗が決まった後、ゼロオーム抵抗を置き換えて配置することで設計変更の手間を減らせます。

信号の減衰には注意

ダンピング抵抗がノイズ減衰効果をもたらすには一定のインピーダンスを持つ必要がありますが、インピーダンスが大きすぎると信号が減衰する原因にもなるため、注意が必要です。特に高周波信号を流す回路の場合、ダンピング抵抗によって信号がなまり、悪影響を及ぼす可能性が高くなるため注意しましょう。

まとめ

今回は、ダンピング抵抗に焦点を当て、役割を始めとした基本的な情報をお伝えしました。ダンピング抵抗はデジタル信号の振動を減衰させるために用いられる抵抗です。リンギングの抑制から静電気ノイズの低減まで、さまざまなノイズ要因を抑制する役割を担います。

ダンピング抵抗自体は単なる抵抗ですが、設計時には回路図上には現れてこない電子部品の特性や配置、配線パターンなども考慮する必要があります。実際の信号波形を確認し、どのような条件でダンピング抵抗の効果が最大化するのか、しっかり検証を行って設計するようにしてください。

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