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  • 人工光合成とは?仕組みや実現の可能性について解説!
  • 人工光合成とは?仕組みや実現の可能性について解説!

    2023.10.09更新

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    この記事を書いた人

    機電系専門ライター Div.長谷川

    長谷川

    FREE AID編集部 機電系専門ライター Div.
    アナログ回路設計・営業を経験した後ライター&ディレクターとして独立。
    電気電子・ITジャンルを得意とし、正確で分かりやすい情報の発信を行っています。

    植物の光合成をヒントに考え出された「人工光合成」。太陽光を受けた植物が二酸化炭素や水を酸素とでんぷんに変えるのと同じように、太陽光と水と二酸化炭素から水素や酸素、有機化合物を生み出す技術です。本記事では、人工光合成がどのように行われるのか解説します。

    人工光合成の仕組み

    まずは具体的な仕組みについて解説していきます。

    光触媒による水分解

    人工光合成のプロセスは光触媒による水の分解から始まります。酸化チタンなどに代表される光触媒を水に沈めて太陽光を照射すると、ミクロ的に光触媒内部の一部の電子が高エネルギーな励起状態へと変化し、正孔と電子へと分離します。電子と正孔はそれぞれ強い酸化・還元力を持っているため、水に対する分解反応を引き起こして水素と酸素が分離生成されます。

    分離膜による水素と酸素の分離

    最初の工程によって得られた水素と酸素のうち、後工程の有機化合物合成では水素を必要とするため、分離膜と呼ばれる薄膜を使用して混合ガスの分離を行います。分離膜には水素分子は通過できるが酸素分子は通過できないサイズの細孔が空いており、水素と酸素の混合ガスを通過させることで水素のみを選択的に取り出すことができます。

    二酸化炭素を使用した有機化合物の生成

    最後の工程では選択的に分離された水素に二酸化炭素を加え、合成触媒の反応を利用して有機化合物を生成します。合成触媒の種類によって発生する有機化合物は異なりますが、一般的にはプラスチック原料となるオレフィンや防腐剤の元となるギ酸が生成されます。合成触媒による合成反応も人工光合成の効率を左右するため、効率的な触媒やプロセスの開発が進められています。

    人工光合成のメリット

    人工光合成には環境問題や資源問題に関する3つのメリットがあると言われています。順番に解説していきます。

    二酸化炭素の削減効果

    人工光合成の1つ目のメリットとして二酸化炭素の削減効果があります。二酸化炭素は地球温暖化を促進する温室効果ガスとして知られていて、世界中の様々な経済活動によって日々大量に発生しています。このままの速度で二酸化炭素が発生し続けると、2100年には平均で4.8度も温度が上昇すると言われているため、排出量と吸収量を均衡させる「カーボンニュートラル」が強く求められているのです。

    人工光合成は二酸化炭素を原料に使用するため、カーボンニュートラルを実現する重要な技術として期待が持たれています。

    食糧問題の解決

    人工光合成の2つ目のメリットとして食糧問題の解決策になることが期待されています。現在の人工光合成では水と二酸化炭素から有機化合物を生み出すことができますが、さらなる技術進歩によって食用の炭水化物やタンパク質を生み出せるようになれば、世界の食糧問題を解決する可能性があります。

    特に、人工光合成により生み出される食料は通常の農業により生み出されるものに比べて数倍から10倍以上程度のカロリーを持っていると予想されており、人口爆発による食糧不足を補える可能性が高いと言われています。

    エネルギー枯渇問題の解決

    3つ目のメリットは燃料と化学製品の原料を同時生成できることです。人工光合成で生み出される水素には燃料としての側面もあり、燃料電池やエンジン燃料に利用可能です。また、現在作られている化学製品の多くはナフサなどの石油由来の原料を使用していますが、石油資源には限りがあるとも言われています。

    そのため、人工光合成によって有機化合物を大量生産できるようになれば石油資源の枯渇問題も解決できます。特に日本では燃料や製品原料の多くを輸入に頼っているため、人工光合成により自国内で燃料や原料問題を解決できれば経済活動へ大きなメリットをもたらすといえるでしょう。

    人工光合成を阻む課題

    人工光合成は複数のメリットが期待される素晴らしい技術ではあるものの、実用化にはいくつか解決すべき課題が残っています。ここからは人工光合成の実用化を阻む代表的な課題を5つ紹介していきます。

    エネルギー変換効率が悪い

    1つ目の課題はエネルギー変換効率が悪いことです。人工光合成のエネルギー変換効率は数%程度と言われており、同じく太陽光を利用する太陽光発電の発電効率(15%)と比較しても低いです。後に解説するとおり人工光合成プラントには大量の費用と土地が必要になるため、現時点ではエネルギー資源目的で大規模な人工光合成プラントを建設するのは現実的ではありません。

    製造コストが高い

    2つ目の課題は他のエネルギーに比べて製造コストが高いことです。大量のエネルギーを人工光合成によって賄おうとすると、エネルギー変換効率の低さも相まって、相当量の設備の建設が必要になります。しかし、人工光合成の設備は化石燃料などの既存燃料によるエネルギー製造に比べて費用が高く、長期的なメンテナンスなども視野に入れると実現するには相当量のコストがかかると言われています。

    安全性に対する懸念

    3つ目の課題として安全性への懸念が挙げられます。人工光合成では水から大量の酸素と水素を発生させますが、酸素は助燃性ガス、水素は可燃性ガスであるため、万が一着火源が存在すると、非常に大きな爆発を起こす危険性があります。人工光合成に関する安全性の基準や法律等が整備されるまでは、まだ時間がかかることでしょう。

    設備を設置する土地の不足

    4つ目の課題として土地不足が挙げられます。人工光合成は太陽光を利用するため、日照効率を良くするには設備の面積を広げる必要があります。また、有機化合物の生成工程には専用の反応設備や生成物の貯蔵設備等も必要となるため、大規模な土地を確保する必要があります。人口が急速に増加した現代社会では大規模なプラントを新規に建設する土地は少なく、島国の日本では特に大きな課題となります。

    使用する材料の耐久性が低い

    最後の課題は人工光合成に使用する材料の耐久性に対する懸念です。人工光合成で重要になる光触媒は常時水中に沈められた状態で使用されるため、長期間にわたる使用により腐食が進行します。また、太陽光に長期間晒されるという特性上、紫外線による劣化の可能性も懸念されます。

    光触媒の効率と強度の両方に課題が残っているため、これからの研究成果によって実現時期が大きく変わることが予想されます。

    半人工光合成という技術も

    人工光合成には、光触媒の代わりに植物性触媒を使用した半人工光合成もあり、シアノバクテリアを利用するものが有名です。シアノバクテリアは藍藻(ランソウ)とも呼ばれる細菌の一種で、藻類でありながら通常の植物と同じような光合成を行うことで知られています。

    半人工光合成は人工光合成に比べて発電効率が悪く、人工光合成同様に実用化にはまだまだ課題が残るものの、人工光合成と同じく研究が進められている技術の1つです。

    人工光合成に対する世の中の動き

    現在、人工光合成は日本のみならず世界全体で注目を集めている技術の1つであり、2015年に国連で採択されたSDGsの達成に向け世界中で研究が進められています。例えばアメリカではカリフォルニア州に人工光合成ジョイントセンター(通称JCAP)を設立し、100億円以上もの出資がされています。

    日本でもトヨタ社を始めとする数々の大企業が人工光合成に関する研究を進めており、2021年には豊田中央研究所が変換効率10.5%を世界で初めて達成するなど、人工光合成の実用化に向けて大きく貢献しています。

    まとめ

    今回は、ここ数年で目覚ましい研究成果が挙げられている人工光合成について解説しました。人工光合成にはまだまだ課題は残っているものの、早くて数年以内、現実的には2030年〜2040年頃には実用化されると言われています。SDGsやカーボンニュートラルの観点からも今後の展望から目が離せません。

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