半導体レーザーとは?構造・原理・特徴も解説!
2024.08.22更新
機電系エンジニア必見!!貴重なフリーランス案件はこちら ▶歯科治療やプロジェクターなど様々な用途で使用される半導体レーザー。LEDと同じ発光原理でありながら、性質の異なる光が生まれる原理を知らない方も多いハズ。そこで今回は半導体レーザーの発光原理や特徴、具体的な構造など、基本となる部分にフォーカスして解説していきます。そもそもレーザーの特徴を知らない方でも分かるよう、他のレーザーにも触れていくので、ぜひ最後まで読んでみて下さい。
半導体レーザーとは
半導体レーザーは半導体発光素子の一種です。発光する仕組みはLEDと似通っているものの、構造や生まれる光の性質が異なります。具体的にはLEDが位相の揃わない光を放射状に照射するのに対し、半導体レーザーは位相や周波数が揃った直進性の高い光(通称コヒーレント光)を放出するのが特徴的です。半導体レーザーでは使用する材料を変えることで様々な波長の光が得られるため、医療や通信など幅広い分野で利用されています。
他のレーザーとの違い
半導体レーザー以外のレーザーは光が通る媒質の違いによって分類されており、主要なものとしては固体レーザー、液体レーザー、気体レーザーなどがあります。なお、半導体レーザーも固体レーザーの一種と言えるものの、通常の固体レーザーとは性質が大きく異なるため区別するのが一般的です。
固体レーザーはイットリウムやガーネット、アルミニウムなどの鉱物を媒質に使用したものや、光ファイバーの中心に希土類を添加して作るファイバーレーザーなどを指しており、体積あたりの出力エネルギーが高いのが特徴的です。また、媒質にCO2や希ガス、ハロゲンなどのガス類を使用するレーザーを気体レーザーと呼び、固体レーザーに比べて発振可能な波長範囲が広いのが特徴的です。
そして固体レーザーと気体レーザーの中間の特徴を持つのが液体レーザーで、媒質にエチルやメチル、アルコール類などの有機溶剤を使用するため色素レーザーとも呼ばれます。液体レーザーにはレーザー光の波長を自由に変えられる使い勝手の良さがあるものの、媒質の寿命が短いという欠点も併せ持ちます。
半導体レーザーの具体的な構造と発光原理
続いて、半導体レーザーの具体的な構造について解説していきます。
ダブルヘテロ構造により作られる
半導体レーザーは、半導体のダブルヘテロ構造によって実現されます。まず、一種類の半導体に異なる不純物を添加してp型半導体とn型半導体をそれぞれ作り、それらを接合させたpn接合をホモ接合と呼びます。これに対し、異なる種類の半導体同士を接合させて作ったpn接合がヘテロ接合です。そして、ヘテロ接合の間にさらに別の半導体を挟み込み、2つのヘテロ接合が合わさった構造をダブルヘテロ接合と呼びます。このダブルヘテロ接合こそが半導体レーザーの構造であり、挟まれた半導体部分を活性層、pn接合部分をクラッド層と呼びます。
半導体レーザーの発光原理は誘導放出
半導体レーザーの発光原理は活性層内で起きる誘導放出現象です。まず、シンプルなヘテロ接合に電圧を印加すると、電子と正孔は互いに接合面に引き寄せられます。印加電圧が一定以上であれば、励起された電子が接合境界面のエネルギーギャップを乗り越えて結合し、余ったエネルギーが光となって外部に放出されます。
ダブルヘテロ接合でも外部電圧によって引き寄せられた電子と正孔が活性層で結合すれば同じように光が生まれるものの、活性層とクラッド層の屈折率の違いにより、生まれた光は活性層内で全反射して閉じ込められます。反射し続ける光は同位相のまま増幅する誘導放出を引き起こし、位相の揃った強い光へと変化していきます。そして最終的に一定以上の強さに達した光は活性層から抜け出し、強いレーザー光となって外部へと放出されるのです。
半導体レーザーの特徴
半導体レーザーが他のレーザーよりも優れる点として、小型で製作費用が安価、変換効率が高い、発光に必要な電圧と電流が少ない、干渉性が高いなどの特徴が挙げられます。例えば他のレーザーであれば個体や液体を集めた大規模な媒質が必要ですが、半導体レーザーはダブルヘテロ接合さえあれば十分なため、製作費用やサイズが抑えられます。
また、LEDと同様に電流を直接光へ変換するため変換効率が高く無駄な消費がないため、発光に必要な電圧と電流が最小限で済みます。さらに同位相の光が強まりながらレーザー光を生み出す原理のため、光の位相が揃いやすい(=干渉性が高い)という特徴も有しています。
半導体レーザーの種類
半導体レーザーは構造と特徴の違いからFBレーザーとDFBレーザーの2種類に分類されます。まずFBレーザーはファブリペロー型半導体レーザーの略で、先に説明した構造と誘導放出の原理によってレーザー光を発振します。FBレーザーによって発振された波には複数の波長の光が含まれるため、スペクトルには広がりが生まれてしまいます。短距離の光通信やセンシングの用途ではスペクトルの広がりは問題にならないものの、長距離通信では雑音の要因となってしまうため、長距離通信には向いていません。
これに対し、分布帰還型とも呼ばれるDFBレーザーでは回折格子と呼ばれる特徴的な凹凸構造をn型半導体表面に作ることで、任意の単一波長の光スペクトルだけを強く発振します。回折格子に当たった光は、凹凸幅の2倍の波長になるため、凹凸幅を調整して所望の波長のレーザー光を得ることができ、長距離通信など単一波長のスペクトルが必要な場面で重宝されます。
半導体レーザーの波長と代表的な用途
半導体レーザーが生み出す光は波長によって異なります。例えばプロジェクターや照明などの用途に使用する場合、我々が視認できる可視光領域の450nm、530nm、635nmの光が使用されます。これらは光の3原色と呼ばれる赤色、緑色、青色の波長であり、これらを組み合わせれば全ての色合いが実現できるため、それぞれの光の強度を変えて任意の映像を作り出します。
また、バーコードリーダーやCD/DVDなどの記録媒体の読み込みや書き込みには、集光性に優れる400nm〜800nm付近の波長のレーザー光が使用されます。これらの用途では特定の機器に部品として搭載する必要があるため、小型で消費電力が少なく、安価という半導体レーザーの特徴が好まれます。
可視光以外の波長でも半導体レーザーは利用されています。例えば800nm以上の近赤外線であれば、車間距離や構造物の高さや距離の測定といった計測用途、歯科用レーザーメスなどの医療器具やレーザー治療そのものといった医療用途、長距離の光通信用途などの用途があります。その他にも様々な用途で半導体レーザーは使用されるため、気になった方は詳しく調べてみることをオススメします。
量子ドットレーザーと呼ばれる新技術も
最近では半導体レーザーの一種でありながら、厳しい環境下でも使用できる量子ドットレーザーも注目されています。一般的に半導体レーザーの活性層はある程度の厚みを持った薄膜ですが、これを10nm程度まで薄くすると量子井戸と呼ばれる2次元構造になります。そして量子井戸をさらに一方向に狭めて線にすると量子細線構造に、量子細線の長さを電子の波長程度にまで縮めると量子ドットと呼ばれる構造へと変化します。
量子ドットでは電子が全く動くことができず、電子が持つエネルギー順位が完全に離散的となるため、外部の環境温度による熱的エネルギーの変化が生じなくなります。これにより広い温度範囲で同じ条件で使用できる温度無依存性を示すようになり、量子ドットレーザーは極低温や高温領域でも使用できる信頼性の高いレーザーとして注目されています。
まとめ
今回は医療用途から通信、記録媒体の読み書きなど様々な用途で使用される半導体レーザーについて解説してきました。基本的な原理はLEDと類似しているものの、ちょっとした構造の違いで光を発振できることが理解できたと思います。量子ドットレーザーなどの興味深い技術もあるため、今後の動向にも注目してみてはいかがでしょうか。
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