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スイッチング電源(レギュレータ)とは?仕組みや回路図、主な種類を解説!

2023.10.09更新

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この記事を書いた人

機電系専門ライター Div.長谷川

長谷川

FREE AID編集部 機電系専門ライター Div.
アナログ回路設計・営業を経験した後ライター&ディレクターとして独立。
電気電子・ITジャンルを得意とし、正確で分かりやすい情報の発信を行っています。

スイッチング電源(スイッチングレギュレータ)は、今やさまざまな電子部品の電源を作る上で欠かせない存在です。かつてはリニア電源が一般的でしたが、変換効率の圧倒的な良さにより、近年は完全にスイッチング電源に置き換えが行われています。

本記事では、スイッチング電源の原理やメリット、スイッチング電源の主な種類などについて解説します。

スイッチング電源とは?

スイッチング電源とは、直流電源の電圧を変換し、特定の電圧を出力するために使われる部品です。半導体スイッチをON/OFFし、デューティ比を調整して特定の電圧を出力することから、スイッチング電源と呼ばれます。

昔はトランスを使って電圧を変換していましたが、トランスのサイズ・重量が大きいといった問題があり、小型化が切望されていました。スイッチング電源は、スイッチのON/OFFによって高周波を生み出しますが、トランスは高周波用途の方がサイズを小さくできるため、小型化に大きく貢献することとなったのです。

現在でもスイッチング電源はAC-DC、DC-DCコンバータの主流として幅広く利用されています。

スイッチング電源の回路図

それでは、スイッチング電源の回路はどのようになっているのでしょうか。例としてフォワード方式のスイッチング電源における回路図を示します。

引用:加美電子工業株式会社

この回路の動きについて解説しましょう。まず、①~③で示されるノイズフィルタや整流平滑回路は、1次側のAC入力をDC電源に変換する回路です。DC電源を入力した場合はこれらの回路は不要となります。

続いて④、⑤の部分が電圧を変換するメインの回路です。この回路の動きを理解するため、スイッチング電源がONしてから、2次側に安定した電圧が流れるまでを時系列で解説しましょう。

まず、スイッチング端子がONになると1次側に電流が流れ、トランスを通じて2次側にも同様の電源電圧が発生します。そのままでは2次側にも1次側と同じ電圧が生じてしまうため、電圧を検知してスイッチング素子がOFFとなり、1次側の電流を遮断します。

すると、1次側の電圧が急激に下がり、2次側の電圧も下がるため、再度スイッチング素子がONになります。この動きを繰り返すと、2次側の電圧は一定の電圧で安定するようになるのです。

リニア電源との違い

スイッチング電源と同様に使われる電圧変換部品として、リニア電源があります。リニア電源はスイッチング電源よりも早く開発された部品ですが、今でも目的に応じてスイッチング電源との使い分けが行われています。そんなリニア電源とスイッチング電源の違いを解説しましょう。

リニア電源とは、電源に可変抵抗を繋ぎ、一部の電気エネルギーを熱として放出することで、電源電圧を制御する部品のことです。スイッチング電源よりも簡単な構造なので、小型かつ安価に利用でき、スイッチングをそもそも行わないので、ノイズが少ないというメリットを持っています。

ただし、熱としてエネルギーを無駄に消費するため、変換効率が悪いです。また、放熱量が多く熱的な問題が生じやすいといった問題点もあります。そのため、リニア電源は、消費電力が少なくノイズに弱い回路の電源として使われることが多いです。

スイッチング電源のメリット

続いて、スイッチング電源が持つメリットを解説します。

高効率・低損失

スイッチング電源が持つ最大のメリットは、電力変換効率の高さです。リニア電源はスイッチOFF時の電力を熱として損失しているため、どうしても効率が低くなるという問題点がありました。

しかし、スイッチング電源はOFF時の電力をコイルやコンデンサに蓄積するため、無駄な電力消費を生じません。電源電圧や変換周波数などによっても変わりますが、製品によっては98%程度の高い変換効率を誇ります。

損失が低い分発熱量も抑えられることから、リニア電源より熱に強く、大電流を流せるというメリットもあります。

昇圧、電圧反転も可能

リニアレギュレータにない特徴として、電圧を下げる降圧だけでなく、昇圧回路や反転回路を簡単に作れることもメリットです。さまざまな仕様の電源ICから選択でき、周辺回路の構成によって自由自在に出力電圧を変えられるため、より柔軟な設計が可能となります。

スイッチング電源のデメリット

スイッチング電源はその大きなメリットからほとんどの電源回路で使われますが、もちろんデメリットも持っています。

回路が複雑でコストが高い

一つ目のデメリットは、スイッチング電源を使うには、専用ICのほか、抵抗やコンデンサなどを使って周辺回路の設計が必要なため、回路が複雑でコストが高くなってしまうことです。最近では集積化が進みつつありますが、それでも簡単に使えるリニアレギュレータと比べると雲泥の差があります。

スイッチングによるノイズが生じる

もう一つのデメリットは、スイッチングがノイズとなり、周辺回路に悪影響を及ぼす可能性があることです。電源電圧をON/OFFの繰り返しによって切り刻むので、後段の電源回路にリップル電圧を発生させるだけでなく、周囲に電波ノイズをまき散らします。

コンデンサなどを配置してリップル電圧を吸収し、電波ノイズが発生しても周囲に影響の少ない周波数を選択するなど、回路設計に工夫が必要となります。

スイッチング電源の種類

スイッチング電源は、電源電圧をON/OFFにより変動させますが、周辺回路の構成によってさまざまな

フォワード方式

フォワード方式は最も簡単な構造のスイッチング電源回路です。1次側のスイッチがONされ、電流が流れた時に生じた誘導電流を負荷に流します。構造が簡単な分大電流への耐性が高く、制御も容易ですが、その分変換効率は低めです。

フライバック方式

フライバック方式は、フォワード方式とトランスの向きを反対にした電源回路です。スイッチON時はトランスにエネルギーを貯めこみ、スイッチOFF時に一気に放出します。大電流回路には向いていませんが、フォワード方式よりも部品点数を減らせるのでコストを抑えたい場合に向いています。

プッシュプル方式

1次側の回路にトランスとスイッチを2つ配置し、フォワード方式を2つ合わせた構造の電源回路です。回路が切断されることがないためフォワード方式より電力の伝送効率は良いですが、部品の個体差による影響が大きく、制御が非常に複雑なためあまり利用されていません。

ハーフブリッジ方式

プッシュプル方式と似ていますが、2つのスイッチ回路でトランスを共通化した構造の電源回路です。トランスの片方は2つのスイッチに、もう一方はコンデンサで電源電圧を半分にした所につながっているため、ハーフブリッジと呼ばれます。動作はプッシュプル方式と同様ですが、トランスの利用効率が上がり、制御も比較的容易になるのがメリットです。

フルブリッジ方式

ハーフブリッジ方式のコンデンサをスイッチに変更した構造の電源回路です。2つのスイッチを交互にON/OFFして電流を流します。スイッチング損失を最も減らせるのが特徴で、ハーフブリッジ方式よりも大電力用で用いられます。

昇圧(ブースト)方式

昇圧方式は、トランスを使わず、電源回路にコイルとスイッチを追加したスイッチング回路です。スイッチをONするとコイルにエネルギーが蓄積され、スイッチをOFFすると電源電圧にコイルのエネルギーが上乗せされることで、昇圧を実現します。ちなみに、昇圧方式はトランスを使わないため、1次側と2次側は絶縁されていません。

まとめ

今回は、スイッチング電源の原理やメリット、スイッチング電源の主な種類などを紹介しました。スイッチング電源は、高効率かつ自由に出力電圧を変動できることから、最も主流な電源コンバータとしてさまざまなICが開発され、使用されています。

周辺の回路構成も数多くの種類があり、必要に応じて使いわけが行われます。各種回路の動きを理解して、最適なスイッチング電源を選択しましょう。

 

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