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  • ロバスト制御とは?例も交えて分かりやすく解説!
  • ロバスト制御とは?例も交えて分かりやすく解説!

    2024.08.22更新

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    この記事を書いた人

    機電系専門ライター Div.長谷川

    長谷川

    FREE AID編集部 機電系専門ライター Div.
    アナログ回路設計・営業を経験した後ライター&ディレクターとして独立。
    電気電子・ITジャンルを得意とし、正確で分かりやすい情報の発信を行っています。

    ロバスト制御という制御方式を聞いたことはあるでしょうか。同じく制御方式として知られるフィードバック制御やフィードフォワード制御に比べて、聞き馴染みがない人もいると思います。今回は複雑な条件下で安定的な制御が行えるロバスト制御について、具体的な意味や特徴、必要性、手法などを網羅的に解説します。

    ロバスト制御とは

    まず、ロバスト制御とはどのような制御のことを指すのか、ロバスト性の意味や他分野での意味合いも交えて解説していきます。

    ロバスト性の特性

    はじめにロバスト性の意味について触れておくと、外乱などの不確かさに対する強さを表す言葉で、外乱を受ける前提で頑強に作られているシステムを「ロバスト性が高い」と表現します。あらゆるシステムでは想定外の入力や外部環境の変化、システムそのものの乱れといった不確かさが必ず存在するため、ロバスト性が低いシステムでは一定以上の不確かさによって出力結果が大きく狂ってしまう可能性があります。

    一方、ロバスト性の高いシステムではそもそも不確かさが存在する前提で、外乱をシステムが自己修復する仕組みが用意されているため、不確かさによる制御動作への影響が抑えられます。制御分野ではロバスト性が高い制御方式をロバスト制御と呼び、システムに入力される信号や外乱に関係なく安定しています。

    分かりやすく言えば、設計思想とは異なる環境下でも安定するよう工夫された制御方式だと覚えておきましょう。ちなみにロバスト性は制御分野だけの用語ではなく、様々な分野においてシステムの頑強性を表す言葉として使われています。

    様々な分野におけるロバスト性

    ロバスト性について具体的に理解するために、制御分野以外での具体的な使われ方にも触れておきます。例えば生物学の世界で言えば、我々人類や他の動物の進化の過程はロバスト性が高いことの現れと言えます。環境の変化や外敵の襲来など、様々な不確かさが存在する自然界において、自身の身体や性質を適応させていく様子こそが、外乱に対してロバスト性を発揮している例と言えるでしょう。

    他にもソフトウェア開発などの分野であれば、想定外の信号が入力されたときエラーを表示して再入力を促したり、そもそも入力できないようにするなどのソフト設計によりロバスト性を高めています。また、ハード面であれば、電源の二重化や無停電電源装置の利用による停電対策などがロバスト性を高める対策の例として挙げられます。各分野でロバスト性を高める試みを理解すれば、ロバスト性の考え方が理解できるので気になる方は調べてみることをおすすめします。

    ロバスト制御の具体的な手法

    ロバスト制御として知られる手法にはいくつかの種類があり、中でも最も有名なのがH∞制御と言われる手法です。H∞制御はH∞ノルムと呼ばれるパラメータによって入出力間の伝達関数を評価し、外乱がシステムに入力された時の挙動が一定以上乱れないように制御する手法です。

    H∞ノルムとは、周波数領域における伝達関数の最大値を表したようなパラメータで、特定の信号が入力された時、最大(最悪)の出力がどの程度になるかを表したものです。H∞ノルムが小さければ小さいほど制御システムが外乱に強いと言えるため、システムが要求する安定性に応じて、一定の値よりH∞ノルムが小さくなるようシステムを設計します。

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    ロバスト制御のパラメータや評価について

    一般的なロバスト制御では、制御入力、制御出力、外乱入力、評価出力の4つのパラメータが設計に使用されます。制御入力が与えられた時、所望の制御出力に素早く到達できれば制御性能が高いと言え、想定される外乱入力全てに対して制御出力が乱れなければロバスト安定性が高いと表現します。

    理想的なロバスト制御はロバスト安定性を保ったまま高いロバスト性能を持つ制御ですが、安定性と性能は相互に影響を及ぼしあうため、最適な設計は簡単ではありません。

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    ロバスト制御の向き不向きとは?

    不確かさに強いロバスト制御はあらゆるシステムに必要とは限りません。そもそも制御系における不確かさの例は何があるのか紹介した上で、ロバスト制御が向くシステムと向かないシステムを解説していきます。

    制御系における不確かさ

    ロバスト制御の向き不向きを考えるには、システムの制御動作に影響を与える不確かさについて理解する必要があります。不確かさの例としては外部の環境によるもの、システムの動作条件によるもの、部品などの経時変化によるもの、個体差によるものなどいくつかの種類に大別されます。

    例えば空調の効いた屋内で使用するシステムに比べると、屋外や水中、上空で使用するシステムの方が周囲の温度や圧力などの外部環境の違いによる影響を受けやすいでしょう。また、数十年単位で使うシステムであれば、各部品の摩耗や変形、油切れなどの経時的な変化による影響が大きく、メンテナンス前後で制御性能が異なる場合が多いです。

    他にも複数の部品で構築されたシステムであれば、各部品の形状や寸法などが必ずしも一致する可能性は低く、部品の個体差によるズレが不確かさとなるでしょう。

    ロバスト制御が求められる場面

    ロバスト制御が求められるシステムは、先に説明した不確かさの影響を受けやすい一方で、一定以上の高い制御性能が必要なシステムが挙げられます。例えばエレベーターやエスカレーターの速度制御を考えてみましょう。ロバスト性の低いシンプルな制御方式であれば、一定の速度で移動するようモーター回転数を制御することが多いですが、実際には乗る人や搭載物の重さの変化が不確かさとして存在し、無荷重状態の挙動と荷重状態の挙動に差が生まれてしまいます。

    乗客を乗せて運ぶことが目的である以上、不確かさによって挙動が著しく異なってしまうと、顧客の満足度低下に繋がるだけでなく最悪の場合は怪我や事故を引き起こす可能性があるため、安定したロバスト制御が求められます。より一般化すると、システムの制御に影響を与える不確かさの数が増えるほど、そして要求されるシステムの安定性が高まるほど強いロバスト性が求められます。

    例えば航空機であれば、エスカレータやエレベータよりも部品数や環境パラメータが多く、周囲の温度や圧力、湿度、風向き、風速、乗客の人数や搭載物の重さ、乗客や貨物が乗っている位置、各部品の摩耗状態や油量などを考慮しなくてはなりません。一方で、ちょっとした制御の乱れが墜落事故を引き起こす可能性があるため、一層高いロバスト性が求められるのです。

    ロバスト制御が向かない制御系もある

    ロバスト制御はあくまでも不確かさが存在する可能性が高く、不確かさによる制御乱れが許容できないシステムに最適な制御モデルです。そのため、そもそも不確かさがほとんど存在しないシステムや、多少制御が乱れても大きな問題にはならないシステムには必要ありません。

    また、ロバスト制御は複雑な制御モデルのため、システムの設計検討に時間や手間がかかるうえ、維持管理にも知識が求められます。そのため、工場や研究室などある程度動作環境が整えられた場所で使用するシステムや、制御そのものが簡易的で汎用性が求められるシステムであれば、わざわざコストをかけてロバスト制御を設計する必要はないと言えるでしょう。

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    まとめ

    今回は制御手法の1つであるロバスト制御について解説してきました。フィードバック制御やフィードフォワード制御に比べると比較的難しく完全に理解するには時間がかかるものの、不確かさを許容できる特徴を活かした高精度な制御であるため、役に立つ場面は非常に多いでしょう。ぜひ今回の記事を繰り返し読んで、基礎的な事項の理解を深めていただければと思います。

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