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超音波洗浄でなぜ汚れが落ちる?原理・構造・特徴などを徹底解説!

2023.10.19更新

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この記事を書いた人

機電系専門ライター Div.長谷川

長谷川

FREE AID編集部 機電系専門ライター Div.
アナログ回路設計・営業を経験した後ライター&ディレクターとして独立。
電気電子・ITジャンルを得意とし、正確で分かりやすい情報の発信を行っています。

超音波洗浄機という洗浄機をご存知ですか?その名の通り超音波の力で物を洗浄する機械で、メガネの洗浄などで目にした方も多いのではないでしょうか。そこで今回は超音波洗浄について、具体的な原理や洗浄機の構造、洗浄物の向き不向きなどを解説していきます。

超音波洗浄機とは?

まず初めに超音波洗浄機とは何か、という点について、具体的な特徴や用途などにも触れながら解説していきます。

超音波の力を使った洗浄機

超音波洗浄機とはその名の通り、超音波の力で物を洗浄する機械です。基本的には洗浄したい物を洗浄液を満たした洗浄槽の中に入れ、超音波の力で振動させて洗浄します。原理上、機器の部品内部の汚れや複雑な形状の部品であっても洗浄できる上、洗浄液や周波数を変えることで様々な対象や汚れに対応可能です。

一般人が使用するケースとしては、メガネやプラモデル部品などの洗浄が身近ですが、工業用としては細かいフィルタや電子基板の洗浄などの用途が挙げられます。一般的な超音波洗浄機の構造は洗浄液を入れる洗浄槽、物理的に振動する振動子、超音波を引き起こす発振器の3つに大別されますが、投込み式や流水タイプの超音波洗浄機などのように洗浄槽がないものもあります。

代表的な種類と用途の例

超音波洗浄機は周波数や構造の違いによっていくつかの種類に分けられています。洗浄周波数が低いほど洗浄力と対象物に与える衝撃が強くなり、周波数が高くなるほど衝撃力の少ないデリケートな洗浄が可能です。そのため金属部品など強度が高く形状がシンプルな物には低い周波数の洗浄機を、集積回路や半導体部品などの精密機械類の洗浄には高い周波数の洗浄機を使用するのが一般的です。

また、洗浄機自体の構造による種類も様々で、振動子を容器に投げ込んで使用する投込振動子タイプ、メガネ用の洗浄機として広く使われている電源と振動子が一体となった卓上型タイプ、振動子により振動させた水を滝のように落として洗浄に使用する流水タイプなどがあります。

超音波洗浄で汚れが落ちるメカニズム

超音波洗浄では単に構造物の隙間まで洗浄できるだけでなく、洗浄液でそのまま洗うよりも高い洗浄効果が得られます。何故超音波を与えるだけで洗浄力が上がるのか、主な3つの作用について解説していきます。

キャビテーションの衝撃

超音波によって洗浄力が生まれる1つ目の要因はキャビテーションの衝撃によるものです。キャビテーションとは水圧が下がった箇所で局所的に生じる無数の泡のことで、超音波によって水中に大量発生します。超音波により振動している水はミクロ的には膨張と圧縮を繰り返しており、膨張箇所では水圧が著しく低下して泡が発生し、圧縮箇所では水圧が上がって泡内へ急激に水が流れ込むことで泡が崩壊します。この泡の崩壊時に生じる衝撃が洗浄物表面に付着した汚れを破壊してくれるのがキャビテーションによる洗浄効果です。

振動の加速度

超音波洗浄の2つ目のメカニズムは振動の加速度によるものです。既に説明したように、振動している水中では局所的に膨張と圧縮を繰り返している状態となります。そして膨張から圧縮へ、または圧縮から膨張へと転じる瞬間は、局所的に高い加速度の水流が生じているのと同じであり、付着汚れに対して高い洗浄効果を発揮します。振動の周波数が高いほど加速度も高くなるため、高い周波数を扱う超音波洗浄機では特にこの作用による洗浄効果が高いと言えるでしょう。

直進流による攪拌

3つ目に挙げられるのが液体の直進流による拡散現象です。液体に0.5W/cm2以上の振動を与えると、巨視的には直進流と呼ばれる僅かな流れが生まれます。直進流は汚れを含んだ洗浄液が常に綺麗な洗浄液と置換してくれるだけでなく、巨視的には剥離汚れが押し出される効果が期待できます。

半導体部品などに付着しているパーティクルの除去や、特に高い洗浄度を求められる工程で洗浄液を置換し続ける目的の場合は、直進流による洗浄が鍵となります。

超音波洗浄機を使うべき汚れとは?

超音波洗浄はその特性から使用できる場面や汚れが限られます。半導体部品のパーティクル汚れ、工程中に付着するエッチング液や剥離液、電子部品の油、ワックス、塵埃、時計などの精密部品に付着した研磨粉、バリ、塵埃、レンズなどの光学品についた指紋などは超音波洗浄が向いています。また、一般的な工業部品に付着した塵埃や油脂、指紋、錆、樹脂の原液などの洗浄も可能です。

これに対し、ベッコウや象牙、真珠、オパールなどは表面が柔らかく、洗浄により光沢を失ってしまうため、超音波洗浄は使用できません。また、一見洗浄に向いてそうな腕時計も、本体を丸々入れてしまうとパッキン部から漏水してしまうため使えません。さらにアルミや銀などの柔らかい金属や半導体ウェハなどの表面が傷つきやすいもの、プラスチックのように超音波を吸収してしまう材料などを洗浄する際は、周波数の設定にも注意が必要です。

洗浄機選びに迷ったときの考え方

汚れや洗浄物によって使用可否や洗浄能力に差が生まれやすい超音波洗浄機。一体どういった物に使うべきか、考え方に悩むことも多いと思います。ここからは超音波洗浄機を使うか否か迷った際の考え方として、3つの観点をご紹介していきます。超音波洗浄の導入に悩んだ時の参考にしてみてください。

洗う対象は何か

既に説明したように超音波洗浄機は洗浄対象によって向き不向きやそもそもの使用可否が決まっています。まずは洗浄物の材質を調べて超音波洗浄機が使用できるか否か確認しておきましょう。また、例え使用できたとしても形状によって超音波洗浄が向いていないものもあります。

使う洗浄機の取扱説明書を読み、得意な洗浄物の形状が洗浄可能か否かも併せて確認しておきましょう。単に超音波洗浄自体が向いていないものだけでなく、特定の洗浄液を使用すれば洗えるケースも考えられるので、その辺りも視野に入れて確認しましょう。

落としたい汚れは何か

続いての着眼点は落としたい汚れです。超音波洗浄が得意とする汚れは、表面に付着した塵埃や油脂が代表的で、汚れの種類によって落ちやすい周波数が異なります。汚れと周波数をきちんと調べて使用するよう心がけましょう。

また、逆に塗装やメッキなど落としたくない付着物がある可能性にも考慮が必要です。例えば繊維に染み込ませた糊類は超音波洗浄によって落ちてしまいますし、塗装や潤滑油など使用する上で必要な付着物も存在します。間違って洗浄してしまう可能性は低いと思いますが、使う場面には注意しましょう。

どのくらい汚れを落としたいか

3つ目の着眼点として、汚れをどの程度綺麗に落としたいかも考えなくてはなりません。実際、産業分野で使用する場合は、目に見える汚れを落とすだけの一般洗浄、ミクロレベルまで汚れを落としきる精密洗浄、分子や原子レベルの汚れまで完全に落とす超精密洗浄にレベル感が分かれます。

工程の途中で軽く洗うだけであれば一般洗浄でも良いかもしれませんが、研究用や製品の出荷検査前など洗浄する状況によって要求される洗浄力は異なります。どこまで汚れを落とせるかは機器の仕様だけでなく、発振周波数や洗浄時間、使う洗浄液、洗浄物の角度や向きなどの条件によっても左右されるので、要求に沿って最適なパラメータを選択して洗浄しましょう。

まとめ

今回は工業用部品の洗浄などに使用される超音波洗浄について解説してきました。単に振動させているだけで何故汚れが落ちるのか、原理について理解できた方も多いと思います。メガネやプラモデルの部品洗浄用など比較的身近な機器でもあるため、これから使用を考えている方は今回の記事で特性や原理を理解しておくことをお勧めします。

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