有機ELは液晶とどう違う?仕組みや特徴を簡単に紹介します
2024.08.08更新
機電系エンジニア必見!!貴重なフリーランス案件はこちら ▶スマホやテレビのモニターとして知られている有機ELモニター。何となく高性能なイメージはあるものの、具体的な構造や特徴、液晶モニターとの違いを知らない方は多いと思います。そこで今回は、有機ELの発光原理や特徴を解説します。有機ELモニターに興味がある方はぜひご覧ください。
有機ELとは
有機ELとは、Organic Electro-Luminescence(オーガニック エレクトロ ルミネッサンス)の略で、有機化合物に電圧を印加すると発光する現象のことです。日本では、発光技術としての有機EL現象そのものだけでなく、有機EL技術の材料や有機ELを使ったモニターを総称して有機ELと呼ぶこともあります。
最新技術の一つと考えられがちな有機ELですが、その歴史は意外に古く1950年頃には発見されていました。映像技術として使われるようになったのは1980年後半で、現在では液晶に代わるモニターとして注目を集めています。
有機ELが発光する仕組み
それでは、具体的な有機ELの発光の仕組みについて説明しましょう。有機ELの発光現象は、有機EL素子が電気によって励起した後、基底状態に戻った時に発光する仕組みを利用しています。まず、有機EL素子は正孔輸送層、発光層、電子輸送層の3層で構成されています。正孔輸送層と電子輸送層の間に電圧をかけると、それぞれの層から正孔・電子が流入し、発光層のエネルギー準位が励起状態になります。
しかし、励起状態は不安定なので、有機分子はより安定した基底状態に戻ります。その際、励起状態から基底状態のエネルギー差を光エネルギーとして放出するため、光を発するのです。モニターでは、有機EL素子が細かいセルに分かれて配置され、さらに有機物の種類や混合物の有無により特定の色で発光するよう調整されています。この細かなセル単位で発光状態を制御することで、さまざまな色合いの映像を自由に表現しています。
液晶との違い
次に、モニターとして最も一般的に使われている「液晶」との違いについて解説しましょう。液晶とは、液体のような流動性と、結晶のような異方性を兼ね備えた物質のことで、液晶モニターは液晶の特性を活かして映像を出力しています。
有機ELと液晶が大きく異なるのは「液晶自体が発光しない」ということです。液晶は光の向きを変える役割を担っており、バックライトからの光を液晶が影絵のように遮ることで描画が行われます。また、光を遮るためには液晶と偏光板を組み合わせなければならず、色を作り出すフィルターも必要なので、有機ELと比べると複雑な構造となっています。
有機ELモニターのメリット
このように、液晶と有機ELでは発光の原理や構造が異なりますが、有機ELモニターを使うことでどのようなメリットが得られるのでしょうか。主な3つのメリットをお伝えします。
薄くて軽量
有機ELモニターの最も大きなメリットは、液晶よりも圧倒的に薄い製品を作れることです。液晶モニターは、映像を作るために光源や偏光板、液晶層、配向膜など多くの部品が必要となります。しかし、有機ELモニターは有機EL単体で発光するため他の部品をほとんど使用しません。また、有機EL素材もフィルム状で非常に薄いので、液晶に比べてモニターの厚みを格段に薄く保てます。
視野角が広い
有機ELを使えば、モニターの視野角を広く保てます。バックライトの光を用いる液晶モニターでは、光を液晶層や偏光板に通す必要があるため、視野角はどうしても限定されます。一方、有機ELモニターでは有機ELそのものが発光するため、原理上は視野角への制限が生じません。実際は、モニターの構造により多少の制限があるものの、直線方向に特化した液晶モニターに比べれば格段に広い視野角で映像を表示できます。
消費電力が抑えられる
有機ELモニターは、液晶モニターより消費電力が抑えられるという特徴もあります。液晶モニターでは特定の映像を作るために、液晶をコントロールする電力に加えてバックライト用の電力も必要です。原理上、バックライトは常に点灯しているため、どんな色合いを表現する場合であってもバックライト用の電力は常に消費されることとなります。
これに対し有機ELモニターでは、有機EL素材そのものが発光するため、バックライト用の電力は不要です。黒色などの暗い色であれば光らせる有機EL素材も少なく済むため、バックライトを常時点灯させる液晶モニターに比べて電力を節約できます。
有機ELモニターのデメリット
有機ELモニターを採用するメリットは多いものの、同様にデメリットも複数あるため注意が必要です。液晶と比べた際の主なデメリットを4つ紹介します。
焼き付きが生じやすい
有機EL素材そのものが発光する有機ELモニターでは、焼き付きと呼ばれる現象が発生しやすいです。焼き付きとは長時間同じ画面を表示し続けると起きる現象で、画面を消灯しても残像が発生したり、部分的に色合いが変わってしまう症状があります。原理上は液晶も焼き付きが発生するのですが、有機ELの方が素子が劣化しやすいため、発生確率は高いです。
有機ELモニターが出始めたばかりの頃に比べると焼き付きは改善傾向にあるものの、完全に無くなったわけではないため注意しなければなりません。なお、焼き付きを何としても避けたい場合は、同じ画面を表示し続けない、ダークモード表示を採用する、こまめにモニターを消すなどの対策が有効です。
液晶に比べて高価
有機ELモニターは液晶モニターに比べて製造コストが高く、初期費用が高額になるのも欠点の一つです。特に小型モニターでは、液晶との製造コストの差が顕著に表れるでしょう。サイズに対するコストメリットの違いもあってか、性能よりも価格を重視する小型サイズでは有機ELモニターの人気はなく、ほとんど商品化されていません。ただ、有機ELの製造技術は発展途上なので、今後は液晶のように安価になる可能性もあります。
寿命が短い
有機ELモニターは液晶モニターの半分程度の時間で寿命を迎えると言われています。有機ELモニターの一般的な寿命は3万時間と言われており、1日に6時間使用すると約13〜14年程度で寿命を迎えます。対する液晶モニターは2倍の6万時間程度の寿命があるため、毎日6時間使っても25年以上持つことになります。ただ、実際は10年以上一つのモニターを使用するのは稀で、特にスマホなどの小型デバイスは数年単位で買い換える人が多いため、大きなデメリットにはならないでしょう。
輝度に限界がある
有機ELモニターでは、高輝度なモニターが作れないというデメリットもあります。液晶モニターであれば、バックライトの輝度を上げるだけで高輝度な映像を作り出せますが、有機ELモニターでは有機EL素子の発光強度に限界があるため、一定以上の輝度を表現することができないのです。そのため、有機ELモニターは屋外設置に向いておらず、周囲が明るすぎない室内用でのみ使われています。
まとめ
今回は、有機ELの仕組みや特徴を紹介しました。有機ELは薄くて軽量、高コントラストな映像を表現できるモニターとして、小型デバイスに数多く採用されています。液晶モニターに比べると歴史が浅いためデメリットも多いですが、今後の技術発展によりさらなる進化が期待される製品でもあります。シースルーのディスプレイなど、未来のモニターを実現できる可能性もあるため、今後の発展に期待しましょう。
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