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リアクトルの選定で役立つ技術ポイントを解説

                   

2026年5月26日更新

この記事を書いた人

機電系専門ライター Div.長谷川
「FREE AID」編集部:長谷川

大手メーカー「コマツ」、「オムロン」などで7年間、アナログ回路エンジニアとして設計・評価業務に従事。
ECU、PLCなどのエレキ開発経験を多数持つほか、機械商社での就労経験も有する。
株式会社アイズ運営の機電系フリーランスエンジニア求人情報「FREEAID」専属ライターとして、
機電分野の知識と実務経験を活かし、専門性の高い記事執筆を行っている。

電力分野で電流変化を抑えるために使われるリアクトルは、特性のトレードオフが発生しやすい部品なので、全体を見据えて最適な部品を選定するスキルが問われます。本記事では、リアクトルの各特性と部品選定におけるポイントを、技術者の実務で役立つレベルで解説します。

リアクトルとは?

リアクトルとは

リアクトルとは、コイルの持つインダクタンスを利用して電流変化を抑える部品です。主にインバータ、コンバータ、モータ駆動装置、PFC回路などの電力変換回路で使用されており、電流平滑、高調波抑制、ノイズ低減、突入電流抑制などの役割を担います。近年ではEV、再生可能エネルギー機器、産業機器などでインバータや電力変換回路の使用が増えており、リアクトルの重要性も高まっています。

リアクトルは一見単純な受動部品に見えますが、実際には磁気飽和、鉄損、銅損、温度上昇など多くの要素のバランスを取った、繊細な選定が求められます。特に近年の電力変換回路では、小型化や高効率化、高周波化が進んでいるため、リアクトル選定の難易度は高くなっています。

なお、リアクトルの構造は導線を巻いたコイルと同じですが、小容量電源では「インダクタ」、大電力の用途では「リアクトル」と呼び分けられています。

リアクトル選定で重要な特性

リアクトルの役割

それでは、リアクトル設計で特に注意すべき特性について解説します。

インダクタンス(L値)

リアクトルで最初に確認するのがL値です。リアクトルは電流変化を抑える働きを持つため、L値が大きいほど電流リップルを低減できます。特にインバータやコンバータでは、スイッチングによる脈動電流を平滑化するのが重要なので、L値は大きいほど望ましいです。

ただ、L値を大きくするには巻数増加が必要になるため、巻線抵抗増加による銅損悪化や大型化につながりやすくなります。また、応答性が低下し、過渡応答性能へ影響する場合もあります。

そのため、特にモータ制御や電力変換回路では、応答性とリップル抑制性能のバランスが重要になります。また、データシートに記載されているL値は小電流条件で測定されていることも多く、実際の運転電流では直流重畳によって低下する場合があります。

飽和電流(Isat)

飽和電流とは、磁気飽和によりインダクタンスが低下し始める電流値のことです。リアクトルのコアには許容できる磁束密度に限界があり、それを超えると磁気飽和が発生します。磁気飽和が起こると急激にL値が低下し、電流リップル増加や過電流などが生じるため、流れる電流が飽和電流以下になるよう設計する必要があります。

特にインバータでは、起動時や急加減速時などに瞬間的な大電流が流れるケースがあります。そのため、通常運転時だけでなく、過渡状態まで考慮した余裕設計が重要になります。また、高温時はコア特性の変化により、飽和電流が小さくなる場合がある点にも注意が必要です。

実効電流(Irms)

実効電流は、リアクトルの温度上昇を考慮して定められた許容電流値のことです。リアクトルには巻線抵抗があるため、電流が流れると銅損によって発熱します。流れる電流が大きいほど発熱も増えるため、一定以上になると許容温度を超えてしまう可能性があります。

そのため、データシートでは「この電流値までなら温度上昇を一定範囲に抑えられる」という基準として実効電流が規定されています。ただし、実効電流は周囲温度や冷却条件など、メーカーが規定した測定条件に基づく値です。そのため、特に大電流用途や高密度実装など放熱条件が厳しい用途では、実機での温度上昇確認が重要になります。

直流抵抗(DCR)

直流抵抗は、リアクトル巻線の抵抗値を示すパラメータです。リアクトルには銅線が使用されているため、抵抗値が大きいほど電流通過時の損失や発熱が増加します。特に電力変換回路では、直流電流を含んだ大電流が流れることが多いので、直流抵抗を小さくすることが重要になります。

一方で、直流抵抗を低減するには巻線を太くしたり、巻線スペースを増やしたりする必要があるため、部品サイズやコストが増加しやすくなります。また、巻線構造によっては高周波特性へ影響する場合もあるので、実際の設計では、効率、サイズ、発熱、コストなども合わせて考慮する必要があります。

周波数特性

リアクトルは理想的なコイルではなく、周波数によって特性が変化します。例えば低周波では問題なく動作していても、高周波になると鉄損や表皮効果、巻線間容量などの影響が大きくなり、発熱や損失が増加しやすくなります。

また、高周波ではインダクタンスやインピーダンス特性も変化するため、想定していたリップル低減効果やノイズ抑制効果が得られなくなる場合があります。特にインバータやコンバータではスイッチング周波数が高いため、カタログ上のL値だけでなく、使用周波数帯域での損失特性やインピーダンス特性まで確認することが重要です。

漏れ磁束

リアクトルでは、コア内部だけでなく周囲空間にも磁束が漏れ出しています。この漏れ磁束が大きいと、漏れ磁束が大きいと近傍配線や周辺回路へノイズが結合し、誤動作やEMI悪化につながる場合があります。特に電流センサや通信回路など、ノイズに弱い回路が近くにある場合は注意が必要です。

また、大電流リアクトルでは漏れ磁束も大きくなりやすく、周辺金属部品で渦電流による発熱が発生するケースもあります。ギャップ入りコアでは、特にギャップ周辺から漏れ磁束が発生しやすくなるため、部品配置や配線引き回しも重要になります。

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実務では「単独最適」ではなく全体最適が重要

機能別の種類

リアクトル設計では、一つの特性だけを優先すると別の問題が発生しやすくなります。例えばL値を大きくするとリップル電流は低減できますが、巻数増加によって銅損やサイズが増えやすくなります。また、直流抵抗を下げようとすると大型化やコスト増加につながる場合があります。

さらに、リアクトルは実装条件によっても特性や温度上昇が変化します。高密度実装では放熱条件が悪化しやすく、周辺回路との距離によっては漏れ磁束によるノイズ問題が発生するケースもあります。

特にインバータやコンバータでは、効率、温度、ノイズ、サイズ、コストなど複数の要素が互いに影響するため、単一パラメータだけで最適化することは困難です。そのため実務では、データシート上の数値だけで判断するのではなく、実機での温度測定や波形確認、EMI評価なども含めて全体バランスを確認することが重要になります。

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リアクトル設計では「制約条件」から優先順位を決める

リアクトル設計では、すべての特性を同時に最適化することは困難です。そのため実務では、まず「何を優先する回路なのか」を整理し、制約条件から設計を進めることが重要になります。

例えばEVや電源装置では効率や温度上昇が重視されるため、直流抵抗低減や放熱性が重要になります。一方、小型機器ではサイズ制約が厳しくなるため、多少の発熱や損失を許容してでも小型化を優先することが多いです。

このように、L値や最大電流、許容温度、使用周波数、実装スペース、EMI要求などのうち、どの特性を優先するかを決めて選定を進めると、ミスの少ない選定ができます。また、特にリアクトルは、回路図だけでは成立性を判断しきれないケースも多いため、最終的には実機評価による温度測定や波形確認、EMI評価まで含めて最適化していくことが重要です。

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まとめ

リアクトルは単純なコイル部品に見えますが、実際にはインダクタンス、飽和電流、発熱、周波数特性、漏れ磁束など、多くの要素が互いに影響し合う部品です。特にインバータやコンバータなどの電力変換回路では、効率、小型化、高周波化、EMI対策など複数の要求を同時に満たす必要があるため、単一パラメータだけで最適な部品を決めることはできません。

そのため実務では、まず回路で何を優先するべきかを整理し、L値や定格だけでなく、発熱やノイズ、実装条件まで含めて総合的に選定することが重要になります。また、データシート上では問題なく見えても、実機では温度上昇やノイズが問題になるケースも少なくありません。最終的には温度測定や波形確認、EMI評価まで含めて検証しながら、最適なリアクトルを選定していってください。

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