リアクトルとは?構造や用途などの基礎知識を紹介
2024.10.11更新
機電系エンジニア必見!!貴重なフリーランス案件はこちら ▶電力設備などで名前をよく聞く「リアクトル」。どんな機能を持っているのかや、トランスやコンデンサとの違いなどが気になる方は多いのではないでしょうか。そこで本記事では、リアクトルに注目し、構造や用途、種類などを順を追って解説します。
リアクトルとは
まずは、リアクトルの概要をお伝えしましょう。リアクトルとは、導線を何重にも巻いた巻線構造により、電流を妨げる働きをする受動素子の一つです。コイルやインダクタと同様の構造をしており、「リアクタンス」を発生させるという意味で名前が付けられています。コイルやインダクタが電子回路で使われる名称なのに対し、リアクトルという名称は電力分野で主に使われています。
リアクトルの特徴は、電圧が変化した際に電流が流れるのを妨げ、代わりに磁界を発生させてエネルギーを一時的に蓄える点にあります。この現象によって生じる電圧と電流の位相変化や、エネルギー蓄積の効果を利用した、さまざまな製品が販売されています。
リアクトルの役割
続いて、リアクトルがどのような役割で使われているか、主な用途を紹介します。
高調波電流の阻止
電力は東日本で50Hz、西日本で60Hzで伝送されていますが、整流回路や制御回路などが接続されている場合、高調波電流(元の周波数の3倍、5倍といった周波数をもつ信号)が発生する場合があります。
高調波電流は信号強度が強く、さまざまな機器に悪影響を及ぼし、誤動作や破損を起こす原因となるため、機器に入らないよう阻止しなければなりません。リアクトルなら、高い周波数のノイズに対するインピーダンスが大きいため、高調波に対する対策として利用できます。
なお、効率的に高調波を逃がして回路に与える影響を低減するため、リアクトル単体ではなくコンデンサや抵抗と組み合わせたローパスフィルタ回路を組むことが多いです。
脈動の平滑化
直流電源は電圧が一定となることが望ましいですが、実際はノイズが原因で電圧がばたつくことがあります。これを脈動と呼びますが、脈動が大きいと電子機器に予期せぬ不具合が発生するため、あらかじめ対策を行っておかなければなりません。ここで、リアクトルを入れれば高周波のノイズ電流を妨げてなだらかな信号に変換してくれるので、脈動を平滑化することができます。
直流電圧の昇圧
直流電圧を昇圧する際には「昇圧コンバータ」が用いられますが、昇圧する際にはリアクトルが大きな役割を果たします。昇圧コンバータで使われるのは「昇圧チョッパ回路」という、リアクトルとコンデンサ、スイッチを組み合わせた回路です。
この回路では、リアクトルに電流を流してエネルギーを蓄積し、スイッチを切り替えることで電源電圧にリアクトルの電力を上乗せします。スイッチをON/OFFするだけで昇圧できるという簡単さから、電気自動車の駆動用を始め、数多くの電子回路でリアクトルが使われます。
遅れリアクタンス源
交流電源を使って電力を供給する場合、電圧と電流の位相がずれるとその分が無効電力となり、力率が下がる、つまり電力が無駄に消費されてしまいます。この現象は、電流が電圧より位相が進む「進み力率」、電流が電圧より位相が遅れる「遅れ力率」のどちらでも発生します。このうち、進み力率による電力損失が起きている場合は、経路上にリアクトルを入れることで電流の位相を遅らせられるため、力率を改善することが可能となります。
機能別の種類
リアクトルは、構造や用途によっていくつかの分類が行われています。ここでは、主な種類について、それぞれの違いを説明します。
空芯・鉄心リアクトル
リアクトルにコア(鉄心)を入れるかどうかによる分類です。鉄心リアクトルは、コアに鉄を入れることを指し、サイズに対して高いインダクタンスを必要とする場合に用いられます。ただし、磁界の強さによってはヒステリシス損失が発生するデメリットもあります。
空芯リアクトルは、コアを入れないリアクトルのことです。インダクタンスは鉄心リアクトルより小さいですが、直線性がよく損失が発生しにくくなります。
AC・DCリアクトル
AC・DCリアクトルは、インバータに対してリアクトルを接続する際、接続用途を区別するために付けられた名称のことです。DCリアクトルは、インバータの整流回路に入れるリアクトルのことで、交流を直流に変換した際に発生する、位相のずれや高調波の発生を抑制するために用いられます。
一方、ACリアクトルは、インバータから出力されるPWM信号において発生する高調波を抑制し、なだらかな交流信号を出力するために使われます。どちらもリアクトルの構造は変わらないので「用途が異なるだけ」ということを理解しておきましょう。
電力系統での用途別種類
リアクトルは、電力系統においても様々な用途で用いられますが、用途別で名称が分けられ、区別が行われています。代表的な名称とその用途をお伝えします。
限流リアクトル
機器の起動時に流れる突入電流や、短絡電流を抑制するために使われるリアクトルのことです。電力系統と直列に接続され、機器を保護する働きをします。
分路リアクトル
変電所において、交流電源の位相を調整するために使われるリアクトルのことです。電力系統と並列に接続され、遅れ無効電力を負荷に供給することにより、進み力率を持つ負荷の力率を改善します。通常、進み力率は負荷によって生じることはほとんどないので、並進コンデンサと同時に追加し、位相の変化を和らげる目的で使用されることが多いです。
消弧リアクトル
架空送電線が雷などにより地絡した際、アーク電流が流れないようにするために使われるリアクトルです。アーク電流を消すことから消弧リアクトルと呼ばれます。三相中性点とアース間に取り付けられます。コンデンサの容量成分と共振するように設計することで、電流が流れないようにします。
補償リアクトル
地中送電線において、地絡時にサージ電流が流れないようにするリアクトルです。三相中性点とアース間の抵抗と並列に取り付けます。消弧リアクトルと同様、共振によってコンデンサ成分に流れる電流を打ち消すことで、サージ電流が流れないようにします。
トランスやコンデンサとの違い
最後に、混同しやすいトランスやコンデンサとの違いを簡単に紹介します。
トランスは用途が異なる
まず、トランスはリアクトルと同じ巻線を使った部品のことですが、巻線を2つ配置しているのが違いです。リアクトルは巻線に電流を蓄えるのに対し、トランスは電気を磁力に変換し、回路間でエネルギーを伝達するために巻線が使われます。
トランスは入出力回路の絶縁に使えるほか、2つの巻線の巻線数に比例して電圧を変換できるという特徴も持っています。
コンデンサは構造が異なる
コンデンサは、平行する金属板に電荷を蓄える部品で、リアクトルとは構造が異なります。ただ、コンデンサは電圧に対する電流の位相を90度進ませることができるほか、交流電流のみを通すフィルタ回路としても働くので、リアクトルと似た用途で用いられます。
まとめ
今回は、リアクトルの基礎知識を知りたい方に向けて、機能や特徴、種類別の名称などについてお伝えしました。リアクトルは電線を巻線にした製品のことを指し、主に電力分野でノイズや突入電流を阻止し、位相を遅らせるために用いられます。
用途に応じて回路内の接続場所が変わり、それぞれで得られる効果が変わるので、リアクトルが電流にもたらす影響を理解して選定を行うことをおすすめします。
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