極低温エッチングとは?メリットや各社の取り組みなども解説!

2025年5月10日更新
機電系エンジニア必見!!貴重なフリーランス案件はこちら ▶半導体製造の前工程におけるエッチング工程には、極低温エッチングと呼ばれる最新技術があることをご存じでしょうか。今回は極低温エッチングについて、具体的な意味や工程の流れ、メリットなどを詳しく解説します。製造メーカーの取り組みにも触れていくので、ぜひ最後まで読んでみてください。
極低温エッチングとは
まず、極低温エッチングがどのような技術なのか、概要を紹介します。極低温エッチングとは、半導体ウエハーを-100℃前後の極低温に冷やした状態で行うエッチングのことです。そもそもエッチングとは、半導体製造においてフォトマスクを用いてウエハー上に回路パターンを照射した後、不要となった絶縁層や薄膜を取り除く工程のことで、極低温で行うことにより加工精度や加工速度の向上が実現できます。極低温エッチング自体は1980年代から研究されている技術であり、技術的には新しくないものの、3D NANDの積層数が大幅に増加したことで極低温エッチングの必要性が高まり、各社が本格的に研究開発に乗り出しています。
極低温エッチングの流れ
極低温エッチングは、ウエハーの冷却、フォトレジストを使用したマスク処理、プラズマガスの生成、エッチング、不要物の除去、といった流れで行われます。通常のエッチングと異なる部分としてはウエハーの冷却が挙げられ、液体窒素などを使用して-100℃近くまで冷却されてからエッチング工程に入るのがミソです。またプラズマを使用するエッチング工程では、ウエハーの発熱によって僅かな位置ズレや歪みを起こすことがあるため、ウエハー温度を正確に制御する技術も求められます。
極低温エッチング技術が欠かせない3D NANDとは
極低温エッチング技術が主に活用される、3D NANDについても触れておきましょう。まずNANDとは、書き込み動作が高速で消費電力も少なく、比較的小さな面積で大容量が実現できる不揮発性フラッシュメモリのことです。このNANDは幅広い用途で使われますが、昨今のAI分野の発展などにより、メモリ素子に求められるデータ容量も増え続けていることから、性能の限界を迎えつつありました。そこで登場したのが、垂直方向にも回路を構築することで、従来のNANDを大幅に上回る容量を実現した3D NANDです。現在すでに数百層オーダーの深さの製品が開発されており、今後は2030年頃に1000層もの3D NANDが誕生するとまで言われています。積層数が非常に多い3D NANDの製造には、優れた加工技術が求められるため、従来方式よりも高精度な極低温エッチングが欠かせないのです。
極低温エッチングのメリット
極低温エッチングは従来のエッチングと比較し、エッチング速度や加工精度、コスト、環境負荷などあらゆる面でメリットがあります。順番に解説していきましょう。
深さ方向のエッチング速度が早い
極低温エッチングは、従来の方法と比べて深さ方向へのエッチング速度が早いと言われています。過去に行われた先行研究によると、-70℃の環境下でエッチングを行うことで、室温の約4倍もの速さでエッチングできると発表されています。
また、キオクシア株式会社と山梨大学のグループが行った、酸化シリコン(SiO2)膜表面のエッチング速度と室温の関係に関する研究でも、室温から-100℃までの領域では温度が低下するほどエッチング速度が速まっていき、-100℃付近で最大に達すると報告されています。実際、米国の半導体製造メーカーであるLam Research社によると、同社の最新技術を用いることで常温時より2.5倍もの速度でエッチングできるとのことです。
異方性が高い
ドライエッチングはウェットエッチングに比べて異方性が高いと言われていますが、極低温エッチングはさらに異方性が高いと言われています。異方性とは、エッチングの進行度合いが方向によってどれだけ異なるかを表す性質のことで、異方性が高いほどエッチングによって生じる穴が横に広がらず直線的となります。
理由としては化学反応の温度依存性が関係しており、低温環境下でエッチングすることで横方向の反応を抑制できるのです。ちなみに深さ方向へのエッチングはイオンアシスト反応によって促進されるため、極低温環境下でもエッチング速度は抑制されず、高いエッチング速度と高異方性の両方が実現できます。
アスペクト比が高い
極低温エッチングはアスペクト比が高いのも特徴です。アスペクト比とは穴の幅に対する深さの割合のことで、値が高いほど細くて深い穴となります。200層を超える3D NANDでは要求されるアスペクト比が50:1程度と非常に高く、従来の方法では穴が僅かに歪んでしまったり、深くなるほど穴径が狭くなるといった事象が問題となっていました。
高アスペクト比におけるこれらの問題は、プラズマのエネルギーによってウエハが熱くなることが原因とされており、発熱が抑えられる極低温エッチングでは、従来よりも高い精度で高アスペクト比の穴加工が実現できるのです。これにより極低温エッチングでは従来の方法を大きく上回る100:1のアスペクト比も実現可能とされ、より高密度な回路も構築できるようになりました。
生産性向上による製造コストや消費電力の削減
従来方式より生産性が高い極低温エッチングは、1ロット当たりの製造コストや消費電力も抑えられます。例えば高い加工精度によって製造工程の歩留まり(生産数のうち良品が占める割合)を改善できれば、製造ロスに伴うコストが抑えられますし、アスペクト比の高さなどにより工程数自体を減らすことができれば、製造に掛かるコストを直接的に削減できます。また生産性の向上により機械の稼働時間が少なくなったことで、消費電力が従来方法から40%程度削減されるとも発表されており、装置稼働に掛かる電力料金も抑えられるようになりました。
温室効果ガスも抑えられる
従来のエッチングでは炭素とフッ素を含んだCF(フロロカーボン)系のガスの使用が一般的でしたが、CF系のガスは温暖化係数(CO2を1として温室効果の強さを表した係数、通称GWP)が非常に高いことが問題視されていました。これに対し極低温エッチングでは、フッ素と水素の化合物であるCH(フッ化水素)系のガスを使用することで、従来方法から80%以上の環境負荷低減(CO2排出量換算)を実現しており、環境負荷低減に大きく貢献しています。
極低温エッチングに対する各社の取り組み
最後に極低温エッチングに対する各社の取り組み状況に触れておきましょう。海外では、エッチング装置の最大手として知られるLam Research社が、2024年には第3世代となるLam Cryo 3.0を開発したと発表しています。また国内企業では、半導体製造装置メーカーの東京エレクトロン社が、400層を超える積層構造にホールを開けられるクライオジェニックエッチング技術を、2023年にリリースしたばかりです。さらに半導体メーカーであるキオクシアホールディングスも、第10世代のNANDメモリに極低温エッチングを採用することも発表しており、大手メーカーがこぞって極低温エッチングの開発を進めている状況と言えるでしょう。
まとめ
今回はウエハーを-100℃近くまで冷やした状態で行う極低温エッチングについて、メリットを中心に詳しく解説してきました。本文中でも触れたように、AIなどの発展に伴って3D NANDに要求される積層数は今後も増加し続けると予想されているため、極低温エッチングが特に重要な技術となることが理解できたのではないでしょうか。極低温エッチングに力を入れる日本企業もあるので、気になる方は詳しく調べてみると良いでしょう。
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