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リチウムは枯渇するのか?埋蔵量や資源不足の可能性について解説!

2023.10.07更新

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機電系専門ライター Div.長谷川

長谷川

FREE AID編集部 機電系専門ライター Div.
アナログ回路設計・営業を経験した後ライター&ディレクターとして独立。
電気電子・ITジャンルを得意とし、正確で分かりやすい情報の発信を行っています。

世界中で進んでいる脱ガソリン車の動きによって、電気自動車の開発は加速しており、バッテリーとして使われるリチウムイオン電池の需要も爆発的に増加し始めています。

テスラを始め、各自動車メーカーは電池の大幅な増産に踏み切っていますが、それに伴って懸念されているのが原料であるリチウムの資源不足です。

本記事では、リチウム資源の問題点と、対策内容を紹介します。

リチウム資源は枯渇しない

まず前提として、リチウム不足が叫ばれてはいるものの、リチウムが地球上から枯渇することはありません。リチウムの埋蔵量や採掘方法など、リチウム資源の現状をご紹介します。

埋蔵量は200年以上

リチウムの埋蔵量は炭酸リチウム換算で約8400万トン(純リチウム換算で約1600万トン)と言われており、2019年の生産量が38万トンであることから、200年以上の生産に対応できることが分かっています。

また、ボリビアなど埋蔵量としてカウントされていない場所にもリチウムが存在しており、海水にも低濃度ながらリチウムが含まれていることから、実際の埋蔵量はさらに多いです。

リチウムの需要増加に伴い、生産量の大幅な増加も予測されていますが、それでも埋蔵量は圧倒的に多いことから、リチウムが枯渇することは無いと言えるでしょう。

鉱石として各地に点在

現在リチウム生産の主流となっているのは鉱石の採掘です。リチウムはリシア輝石やペグマタイトなどの鉱石に含まれており、チリ、アルゼンチン、ボリビアを始め、様々な地域に鉱石が分布しています。

鉱石はリチウムの世界埋蔵量のうち26%程度であり、埋蔵量の割合は比較的低いのですが、すぐに生産が行えるほか、水酸化リチウムへの変換が簡単にできることから、現在のリチウム生産の大半が鉱石の採掘により行われています。

塩湖のかん水でも生成可能

もう一つのリチウム生産方法は、塩湖のかん水からリチウムを抽出する方法です。海水には低濃度でリチウムが含まれていますが、塩湖は海水の成分が数百倍に凝縮されているため、塩湖の水を天日干しするだけで大量のリチウムが精製できます。

天日干しに時間がかかり、炭酸リチウムへの変換を行ってから水酸化リチウムにする必要があるので、現状では採掘より生産量は少ないです。

ただ、鉱石より採掘コストが安価であり、埋蔵量も全体の66%を占めているため、今後の生産量は増加していくことが予想されています。

リチウムの供給には不安がある

埋蔵量自体は多く、枯渇することはないリチウムですが、供給量という意味では不安があるのが現状です。ここからは、リチウム供給において不安視されているポイントをお伝えします。

電気自動車の普及による需要の増加

最も大きい不安要素は、欧州規制を始めとするガソリン車廃止と電気自動車への移行によって、車載用電池の需要が爆発的に増加することです。

現状、車載用電池として使われるのはほとんどがリチウムイオン電池です。リチウムを使わない電池の研究も活発に行われてはいますが、リチウムイオン電池ほどの性能を持つ電池は開発されておらず、実用化にはかなりの時間が必要だと予測されています。

そのため、リチウムの需要も爆発的に増加し、供給が追い付かなくなることが懸念されています。

供給が増やしづらい場合もある

リチウム価格の高騰に伴い、特にオーストラリアにおいて続々とリチウム鉱山が開発されており、他の地域でもリチウム生産プロジェクトが着々と進んでいます。

ただ、急速な生産量の増加に伴って、周囲環境の破壊などの問題も生じており、どの程度のペースで増産を進められるか不透明な状況です。

また、塩湖のかん水も、アタカマ塩湖の増産やウユニ塩湖の新規開発など、増産する余地は十分にあるものの、立地的に開発が難しいことが多く、生態系への影響なども懸念されていることから、実際は急激な増産は難しいと言えます。

中国への依存度の高さも課題

リチウムの生産はオーストラリア、チリなどが多いものの、実はリチウム鉱石の精錬は大半が中国で行われているのが現状です。

そのため、精錬後の最終製品、水酸化リチウムを実質的に中国に依存している状態となっており、これが調達上のリスクとして問題となっています。

中国のシェアが高いのはコスト上の要因なので、今後状況が改善する可能性はありますが、依存せずとも電池が調達できる状態を整えることは急務です。

コバルトの資源不足もリチウム以上に深刻

リチウムイオン電池には、リチウム以外にも様々なレアアースが使われており、中でも最も希少なコバルトは、リチウム以上に供給量不足が懸念されています。

埋蔵量が少ない

コバルトはレアメタルの一つで、埋蔵量は700万トンと言われています。2020年時点で年間14万トンが生産されていることから、このままのペースでコバルトが消費されると、50年程で資源が枯渇するという計算になるため、早急に対策が必要です。

もちろん新しい鉱床の発見などで埋蔵量が増える可能性はありますが、コバルトは銅やニッケルの鉱山に少量含まれることが多いため、埋蔵量の増加によりコバルト不足が一気に解決する、といったことは起きづらいと考えられています。

毒性が強く採掘しづらい

コバルトは毒性が強く、採掘しづらいという問題点もあります。発がん性を始め、嘔吐や下痢、皮膚炎、喘息など、様々な症状を引き起こすため、コバルトの採掘時は鉱石や採掘時の粉塵に触らないようにする安全策が必要です。

発展途上国では安全対策が不十分なまま子どもを労働させるなど、悪質な採掘業者も存在しているため、コバルトを調達する際には適切な方法で採掘されたものかチェックすることも欠かせません。

紛争地帯に偏在している

コバルトの大半が、長年紛争の続くコンゴ共和国に埋蔵していることも、採掘の難しさに拍車をかけています。

武装組織の資金源となる懸念があることから、コバルトの生産が不当な形で行われていないかチェックする必要があり、採掘量増大に向けた開発支援は思うように進んでいません。

また、政情が安定しておらず、児童労働や労働者からの搾取といった問題も解決されていないので、サプライチェーンに採用するのも難しい状態です。

そのため、政情が安定しているカナダやオーストラリアなどで生産量を増やす試みは行われていますが、資源量が少ないため、根本的な解決に至っていません。

リチウム不足への対応策

このように、リチウムやコバルトの資源不足に対する懸念は現実的となっており、リチウムイオン電池を使う以上、避けては通れない問題です。このリチウム不足への対応として、様々な取り組みが行われています。主な取り組みをご紹介します。

海水からの精製技術を開発

リチウムの供給量を増やすために行われているのが、海水からリチウムを精製する技術の開発です。海水は塩湖と比べると非常にリチウム濃度が低いですが、海水に電気を流し、特殊な膜でリチウムイオンのみを選択的に通すことで、リチウムを析出させて取り出すことができます。

現在は、設備の設計や運転条件の把握など、実用化に向けた課題が残っている状態であり、経済的にも実用化できるか不透明な状況ですが、リチウム不足を解決できる可能性があるため注目を集めています。

リチウムを使わない電池の開発

リチウムを始めとして、レアメタルを使わない次世代電池を開発し、リチウムイオン電池を代替するという動きも活発に行われています。

近年、特に注目を集めているのはナトリウムイオン電池です。ナトリウムは地球上に潤沢に存在するので、資源不足の問題を解決できるうえ、リチウムイオン電池と構造が似ていることから実用化へのハードルも低いのが特徴です。

性能的な課題は多いですが、車載用での実用化も始まりつつあり、将来の展望に期待が高まっています。

全固体電池への期待も

同様に、リチウムイオン電池を代替する存在として非常に注目が集まっており、研究が盛んに行われているのが全固体電池です。

全固体電池は電解液ではなく固体の電解質を用いる電池のことで、安全で長寿命、過酷な温度環境でも使えるなど、従来の電池の性質とは一線を画す「夢の電池」として期待されています。

こちらも車載用としての実用化はまだまだ先ではありますが、リチウムイオン電池の代わりに普及する日がくるかもしれません。

まとめ

今回は、リチウムイオン電池の需要増加に伴う、リチウムの資源不足の状況とその対策内容について解説しました。

リチウムの埋蔵量は十分にありますが、将来的な需要の増加に供給が追いつかず、調達が難しくなることが懸念されています。リチウムの採掘量を増やす取り組みも行われていますが、コバルトなど、他のレアメタルについても資源不足が叫ばれていることから、レアメタルを使わない電池の開発が急務です。

全固体電池やナトリウムイオン電池など、実用化が始まっている次世代電池もあります。リチウムの採掘による環境破壊なども問題となっているため、レアメタルフリーな電池がリチウムイオン電池を代替する日が早く来ることを願っています。

 

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