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パワーエレクトロニクスとは?基礎からわかりやすく解説

2022.06.29更新

近年、社会的欲求として注目を浴びている脱炭素社会において、パワーエレクトロニクスの存在意義は高まっています。日本が存在感を示している技術分野でもありますが、なぜ今重要性が高まっているのでしょうか。

本記事では、そんなパワーエレクトロニクスをわかりやすく解説します。

パワーエレクトロニクスとは

 

パワーエレクトロニクスとは、電力を効率的に変換し、制御する技術の総称です。電気は「交流(AC)」と「直流(DC)」に分かれており、その中でも電圧や周波数は送電方法や使用する機器によって大きく変わります。

例えば、家庭用電源は100V、50Hzもしくは60Hzで供給されていますが、パソコンは12V、5Vなどの直流電源で充電する必要があるため、途中で交流電圧を直流に変換する必要があります。この時、電圧や周波数を変換するために使われるのがパワーエレクトロニクスです。

パワーエレクトロニクスにはダイオードを始め、トランジスタ、MOSFET、IGBT、サイリスタなど、電力用に作られた半導体が主に用いられます。

パワーエレクトロニクスが注目される理由

パワーエレクトロニクスは近年注目されていますが、電源の電圧、周波数を変換する技術自体は昔から存在しており、画期的な技術というわけではありません。しかし、それでもパワーエレクトロニクスに注目が集まっている理由は、電子機器の「高効率化・省エネルギー化」に大きな役割を果たすからです。

現在、世界の国々における発展は目覚ましいものがありますが、それに伴い消費されるエネルギーも増加の一途をたどっています。エネルギー生産に伴う二酸化炭素の放出は地球環境の劇的な変化を招くため、エネルギーの無駄を省き、省エネにこだわることは急務といえます。

そんな中で、パワーエレクトロニクスが役立つ電源回路では、大電圧・電流を扱うことから、変換効率の向上が省エネに多大な貢献をするとして重要性が見直されているのです。現在は、パワー半導体を用いた新技術が開発されたことで開発は加速しており、日本が誇る技術の一つとして存在感を放っています。

パワーエレクトロニクスを進化させる「パワー半導体」

そんなパワーエレクトロニクスにおいて、最も大きな役割を果たしているのはパワー半導体です。パワー半導体は、Si(シリコン)を始め、SiC(シリコンカーバイド)やGaN(ガリウムナイトライド)など、バンドギャップが広い半導体を使って作られます。

パワー半導体の構造自体は、バイポーラトランジスタやMOSFET、IGBTなど通常の半導体と変わりません。しかし、半導体材料の特性により絶縁強度が高く、高電圧条件下で優れた特性を示すことから、高電圧を扱う電力分野のエネルギー効率向上を実現できるのです。

パワー半導体についてより詳しく知りたい方は「パワー半導体とは何か?半導体との違いや動作についてわかりやすく徹底解説!」をご覧ください。

パワーデバイスが持つ機能の種類

パワーエレクトロニクス技術を用いて作られた製品のことをパワーデバイスと呼びますが、パワーデバイスは主に4つの機能に分かれています。それぞれの違いを説明します。

交流ー直流(整流)

交流電源を直流に変換するパワーデバイスは「整流回路」と呼ばれます。パソコンやスマートフォンの充電を始め、家庭用電源を使って電子機器を使う場合に使われる機能です。

ダイオードを使って電流の流れる向きを制限し、コンデンサなどの平滑効果によって交流を直流に変換しています。内部回路は半波整流回路、全波整流回路などの種類があり、さまざまな工夫を凝らして変換効率の向上、電圧の安定化を実現しています。

直流ー交流(インバーター)

直流電源を交流に変換するデバイスは「インバーター」と呼ばれ、自動車などバッテリーを使ってモーターを動かす場合に使われます。インバーターは整流回路と逆で、直流電源を流す方向や強さをスイッチによって切り替えることで交流を生み出します。

単純な切り替えだけでは正弦波が作れないため、高周波信号を使った細かなスイッチ制御や、フィルタ回路による平滑化が欠かせません。中でも最もよく用いられるのは「PWM制御方式」です。

インバーターについて詳しく知りたい方は「インバーターの仕組みや役割とは?コンバーターとの違いも簡単に解説」をご覧ください。

交流ー交流

交流電源の周波数や電圧を変化させ、異なる交流電源を作りたい時に使う機能です。モーターの回転速度を制御したり、負荷の変化に合わせて電力を絞ったりする時に用いられ、省エネを実現するのに欠かせない機能といえます。

交流ー交流変換の手段には「直接変換」と「間接変換」の2種類があります。直接変換は、交流をそのまま使って別の交流に変換する方式です。

マトリックスコンバーターやサイクロコンバーターなどさまざまな種類がありますが、作れる周波数に限界があり、また動作が安定しないといった短所もあるため、あまり使われていません。

一方、間接変換は、整流回路とインバーターを組み合わせ、交流を一度直流に変換したのち、再度交流に変換する方式です。変換を2回行うことから損失が大きくなりがちですが、幅広い交流信号を簡単に作れるため幅広く用いられています。

直流ー直流

直流電源の電圧を変化させ、異なる直流電源を作るために使う機能です。電子部品の動作電源には5V、3.3Vなどさまざまな電圧が求められるので、ほとんどの電子回路の内部で用いられています。

直流ー直流変換を行う製品には、リニアレギュレーターとスイッチングレギュレーターの2種類があります。

これらのレギュレーターについて詳しく知りたい方は「スイッチング電源(レギュレータ)とは?仕組みや回路図、主な種類を解説!」をご覧ください。

パワーエレクトロニクスの用途

最後に、パワーエレクトロニクスが使われている主な分野を紹介します。

発電・送電装置

発電・送電においては高電圧・大電流を扱うことから、パワーエレクトロニクスが最も効果を発揮する分野です。

一般的に用いられている発電所からの交流送電以外にも、太陽光発電で得られる直流電流の変換、長距離送電に優れた直流送電など、さまざまな発電・送電方法に合わせたデバイスが用いられています。

電気自動車

電気自動車は、バッテリーに充電した電力でモーターを動かして走るため、インバーターによる電力変換が欠かせません。また、燃費を高め、航続距離を伸ばす必要があるため、高効率なパワーデバイスへのニーズは非常に高いです。

電気自動車のインバーターは需要の高まりに合わせて開発が盛んに進められており、パワー半導体を使った製品が次々と生まれています。

電車・鉄道装置

電車も、パンタグラフから供給された電力をインバーターで変換し、走行しています。自動車より高電圧・大電流を用いることから、パワーエレクトロニクスによる恩恵が大きく、積極的に高効率なパワー半導体の導入が進んでいます。

パワー半導体を使ったデバイスは既存の製品より小型化できるため、車体重量を軽減できるのも導入が進む大きな理由です。

エアコン

パワーエレクトロニクスは、産業機器や家庭用機器においても様々な用途で使われていますが、特に重要なのはエアコンです。エアコンでは、冷媒の循環速度やファンの駆動に交流ー交流変換機能を持ったインバーターが使われます。

細かな温度制御や消費電力の低下、騒音の軽減など、さまざまなニーズを満たすインバーターの開発が続けられており、エアコンの高性能化を助けています。

まとめ

今回は、パワーエレクトロニクスの基礎をわかりやすく解説しました。パワーエレクトロニクスは交流・直流電源の電圧や周波数を効率よく変換する技術です。

近年は、パワー半導体を使ったデバイスが開発されたことから、新製品の開発が盛んに行われており、日本が高いシェアを持つ技術としても注目されています。

産業機器や身近な家電など幅広い製品に利用でき、技術的にも奥深いので、これからもさらなる高効率なパワーデバイスの開発が期待されています。

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