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トランジスタの周波数特性とは?求め方や変化する原因・改善方法を徹底解説!

2022.09.19更新

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この記事を書いた人

機電系専門ライター Div.長谷川

長谷川

FREE AID編集部 機電系専門ライター Div.
アナログ回路設計・営業を経験した後ライター&ディレクターとして独立。
電気電子・ITジャンルを得意とし、正確で分かりやすい情報の発信を行っています。

電子回路の重要な要素の1つであるトランジスタには、入力電流の周波数によって出力が変化する特性があります。本記事では、トランジスタの周波数特性が変化する原因、及びその改善方法を徹底解説します。これからトランジスタの周波数特性を学びたい方は、ぜひ参考にしてみてください。

トランジスタの周波数特性とは

トランジスタとは

トランジスタとは、電子回路において入力電流を強い出力電流に変換する「増幅器」や、電気信号を高速で ON/OFF させる「スイッチ」としての役割をもつ電子素子で、複数の半導体から構成されています。この半導体とは、金属のような「電気を通しやすい物質(導体)」と、ゴムやプラスチックのような「電気を通さない物質(絶縁体)」の中間の性質をもつ物質です。

トランジスタは、1948年にアメリカ合衆国の通信研究所「ベル研究所」で発明され、エレクトロニクスの発展と共に爆発的に広がりました。 現代では、スマートフォン、PC、テレビなどといった、身近にあるほぼ全ての電化製品にトランジスタが使われています。

トランジスタの構造

トランジスタは、電子が不足している「P型半導体」と、電子が余っている「N型半導体」を組み合わせて構成されます。トランジスタは、半導体を交互に3層重ねた構造となっており、半導体の重ね合わせ方によって、PNPトランジスタとNPNトランジスタに分類可能です。

トランジスタの3層のうち中間層をベース、一方をコレクタ、もう一方をエミッタと呼びます。ベース領域は層が薄く、不純物濃度が低い半導体で作られますが、コレクタとエミッタは不純物濃度の高い半導体で作られます。それぞれの端子の関係は、ベースが入力、コレクタ・エミッタが出力となります。つまり、トランジスタはベース側の入力でコレクタ・エミッタ側の出力を制御できる電子素子です。

トランジスタの周波数特性

トランジスタを増幅器として電子回路に用いるには、ベースとエミッタを繋ぎベース電圧(Vb)を負荷する回路と、ベースとコレクタを繋ぎコレクタ電圧(Vc)を負荷する回路を作ります。ベースでは二つの回路を繋げることで、接地可能です。ベースとエミッタ間にVbを負荷し電流(ベース電流:Iv)を流すと、コレクタとエミッタ間にVc負荷による電流(コレクタ電流:Ic)が流れます。

この時のベース電流とコレクタ電流の比が、増幅率(利得)となります。 増幅率の求め方は、Hfe=Ic/Ivです。この増幅率は基本的に一定ですが、ベース電流の周波数が特定の周波数より高域になることで低下します。なお、増幅回路は入力信号が適切な大きさでないと、「歪み」という出力信号が入力信号に対して正しく増幅されない現象が発生するため、注意が必要です。

トランジスタの周波数特性とは、「増幅率がベース電流の周波数によって低下する特性」のことを示します。なお、周波数特性にはトランジスタ単体での特性と、トランジスタを含めた増幅器回路の特性があります。次章では、各周波数帯において周波数特性が発生する原因と求め方、その改善方法を解説します。

トランジスタの周波数特性の求め方と発生する原因および改善方法

トランジスタの周波数特性の求め方

トランジスタの周波数特性を、横軸がベース電流の周波数、縦軸を増幅率(利得) の両対数グラフに表すと、特定の周波数まで増幅率が一定で、ある周波数から直線で増幅率が小さくなっていく線が引けます。このグラフにおいて、増幅率が1となる周波数を「トランジション周波数」といいます。なお、高周波で増幅率が下がる領域では、周波数と増幅率の積は一定になります。

この周波数と増幅率の積は「利得帯域幅積(GB積)」といい、トランジスタの周波数特性を示す指標の一つです。GB積とトランジション周波数はイコールの関係となります。トランジション周波数と増幅率は、トランジスタメーカーが作成する、トランジスタの固有の特性を示す「データシート」で確認できます。このトランジション周波数と増幅率から、トランジスタの周波数特性を求めることができます。

トランジスタに周波数特性が発生する原因

トランジスタの周波数特性として、増幅率が高域で低下してしまう理由は「トランジスタの内部抵抗と、ベース・エミッタ間の内部容量でローパスフィルタが構成されてしまう関係だから」です。ローパスフィルタとは、高周波の信号を低下させる周波数特性を持つため、主に高周波のノイズカットなどに使用される電子回路です。具体的には、音響機器における低音スピーカーの高音や中音成分のカットなどに使用されます。

ローパスフィルタの周波数特性において、増幅率が最大値の√(1/2)倍になる周波数を「カットオフ周波数」といいます。ローパスフィルタでは、カットオフ周波数以下の周波数帯が、信号をカットしない周波数特性となります。トランジスタ単体のカットオフ周波数の値は、fc=1/(2πCtRt)で求められます(Ct:トランジスタの内部容量、Rt:トランジスタの内部抵抗)。

トランジスタの周波数特性の改善方法

トランジスタの内部容量とトランジスタの内部抵抗は、トランジスタが作られる際に決まってしまう値であり変更が出来ません。そのため、トランジスタの高周波における周波数特性を決める値であるトランジション周波数は、トランジスタ固有の特性値となります。その理由から、トランジスタの周波数特性を改善する直接的な方法は「トランジスタを取り換える」ことしかありません。

例えば、東芝製トランジスタの2SC5242の、周波数特性値であるトランジション周波数が30MHzなのに対して、同社製の2SA1358は120MHzもあります(いずれも東芝デバイス&ストレージ株式会社の製品ページ:2SA13582SC5242からそれぞれ抜粋)。周波数特性の改善には、電子回路の使用用途に沿った、ベース電流の周波数に合うトランジスタを選択することが重要です。

増幅回路の周波数特性が低周波域で下がる原因と改善方法

増幅回路の周波数特性が低周波域で下がる原因

トランジスタを用いた増幅回路は、低周波域においても周波数特性を持ちます。低周波の周波数特性とは、具体的に「低周波における増幅率の低下」のことです。低周波で増幅率が低下する周波数特性を持つ理由は、「ベースおよびコレクタ部分に使われる結合コンデンサによって、ハイパスフィルタが構成されてしまうから」です。

ハイパスフィルタは、ローパスフィルタとは逆に低周波の信号レベルを低下させる周波数特性を持つため、主に低周波域のノイズカットなどに利用される電子回路です。具体的には、高音用スピーカーの中音や低音成分のカットなどに使用されています。

ハイパスフィルタもローパスフィルタと同様に、増幅率が最大値の√(1/2)倍になる周波数を「カットオフ周波数」といいます。ハイパスフィルタでは、カットオフ周波数以上の周波数帯が、信号をカットしない周波数特性となります。このカットオフ周波数(fcl)は、fcl=1/(2πCcRc)で求めることが可能です(Cc:結合コンデンサの容量、Rc:抵抗値)。

低周波域で下がる周波数特性の改善方法

トランジスタを用いた増幅回路において、低周波域での周波数特性を改善するには、カットオフ周波数を下げる必要があります。カットオフ周波数を下げるには、カットオフ周波数の式から、抵抗値:Rまたは結合コンデンサの容量:Cを大きくすることが有効です。ただし、抵抗値はベースやコレクタの電流値からある程度決まってしまう値であるため、実際は、結合コンデンサの容量を増やすことが低周波の特性改善の有効な方法です。

増幅回路の周波数特性が高周波域で下がる原因と改善方法

周波数特性が高周波域で下がる原因

トランジスタは、単体でも高周波で増幅率が下がる周波数特性を持っていますが、増幅回路としても「ミラー効果」が理由でローパスフィルタの効果が高くなってしまい、より高域の増幅率が下がってしまう周波数特性を持ちます。ミラー効果とは、ベース・エミッタ間のコンデンサ容量が、ベース・コレクタ間のコンデンサ容量の増幅率の倍率で作用する現象です。

増幅回路では、ベースに負荷された入力電流に対して、ベース・エミッタ間の内部容量と並列にコレクタのコンデンサ容量が入力されます。この際のコレクタのコンデンサ容量:Ccは、ミラー効果によりCc=(1+A)×C(Cはコレクタ出力容量)となります。したがって、全体のコンデンサの容量:CtotalはCtotal=ベース・エミッタ間の内部容量+Ccとなるため、ローパスフィルタの効果が高くなってしまいます。

高周波域で下がる周波数特性の改善方法

高周波域で増幅器の周波数特性を改善する方法は、ミラー効果を小さくすることです。つまり、全体のコンデンサの容量:Ctotalを小さくするために、コレクタの出力容量を小さくすることです。ただし、コレクタの出力容量はトランジスタの特性値であるため、増幅回路で改善する方法はありません。コレクタの出力容量は、一般的にトランジスタのデータシートに記載されています。

高周波域で増幅器の周波数特性を改善するには、入力側のインピーダンス(抵抗)を下げる方法もあります。これは、ローパスフィルタの特性であるカットオフ周波数:fcの値が、抵抗値とコンデンサ容量と逆比例の関係からも分かります。ただし、入力側のインピーダンスを下げる方法は限られており、あまり現実的な方法ではありません。実務での周波数特性の改善には、トランジスタのコレクタ出力容量を小さくするほうが一般的です。

トランジスタの周波数特性を理解しよう

トランジスタは、ほぼ全ての電子機器に搭載されており、電子回路の性能にも直結するため、電子回路設計者にとってトランジスタの周波数特性を理解することは必要不可欠です。電子回路設計初心者の方は、今回紹介したトランジスタの周波数特性の原因と改善方法を理解し、電子回路の特性や考察を深めるためにぜひ役立ててください。

また、トランジスタの周波数特性に関して理解し、仕事に活かしたい方はFREE AIDの求人情報を見てみましょう。FREE AIDは、これまでになかったフリーランスの機電系エンジニアにむけた情報プラットフォームです。トランジスタの知識を業務で活かすために、併せてどんな知識や経験が必要かも確認しておくことをおすすめします。

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