漏れ電流とは?発生原因や対策、設計時の注意点を実務視点で解説
2026年5月29日更新
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大手メーカー「コマツ」、「オムロン」などで7年間、アナログ回路エンジニアとして設計・評価業務に従事。
ECU、PLCなどのエレキ開発経験を多数持つほか、機械商社での就労経験も有する。
株式会社アイズ運営の機電系フリーランスエンジニア求人情報「FREEAID」専属ライターとして、
機電分野の知識と実務経験を活かし、専門性の高い記事執筆を行っている。
漏れ電流は絶縁抵抗や寄生容量などにより発生し、電子回路の性能や安全性に影響を与えるため、レイアウト設計や接地設計などで適切に抑える必要があります。本記事では、漏れ電流の発生原因や主な対策手段などを技術者向けに解説します。
漏れ電流とは

漏れ電流とは、本来の電流経路とは別に、絶縁部やGND、筐体などへ意図せず流れる電流のことです。理想的には絶縁されている部分でも、実際には絶縁抵抗や寄生容量が存在するため、わずかな電流が流れる場合があります。
特に電力機器やスイッチング電源、インバータ機器では、高電圧化や高周波化によって漏れ電流が増加しやすく、感電やEMC悪化、誤動作などにつながる場合があります。また、家電、産業機器、医療機器などでは安全規格で上限値が定められていることもあり、規格に準拠できなくなるリスクもあります。そのため実務では、単に回路を動作させるだけではなく、漏れ電流をどのように抑えるかまで含めた設計が重要になります。
漏れ電流が発生する主な原因
続いて、漏れ電流が発生する主な原因について解説します。
絶縁抵抗による漏れ電流
電子回路では、基板の絶縁材や部品の樹脂、電線被覆などによって電流が流れないように絶縁されています。ただし、これらの絶縁体はわずかな絶縁抵抗が存在するため、高電圧が加わると微小な漏れ電流が流れます。
特に、導体同士の距離が近いと絶縁部分に電界が集中しやすくなり、漏れ電流が増加するため、沿面距離や空間距離が不足すると、湿気や汚れの影響を受けて絶縁性能が低下しやすくなります。
その結果、基板表面に微小な電流が流れ続けて絶縁材が劣化したり、導電性の痕が形成される「トラッキング」が発生したりする場合があります。こうした状態が進行すると、漏れ電流の増加だけでなく、最終的には絶縁破壊につながるおそれもあります。
寄生容量による漏れ電流
寄生容量も、漏れ電流が生じる大きな原因のひとつです。電子回路では、導体同士が近接していると、意図していなくてもコンデンサのような容量成分が生じます。この寄生容量を通じて、高周波の電流が流れる場合があります。
特にスイッチング電源やインバータでは、スイッチング動作によって電圧が急激に変化するため、寄生容量を経由してコモンモード電流が流れやすくなります。また、一次側と二次側の間や、パワー配線と筐体の間などで寄生容量が大きいほど、漏れ電流は増加しやすくなります。
その結果、筐体や接地へ不要な電流が流れ、EMIの悪化や周辺回路へのノイズの回り込みにつながる場合があります。特に高周波化・高速スイッチング化が進む機器では影響が大きくなりやすいため、部品配置や配線レイアウトの段階から寄生容量を意識した設計が重要です。
Yコンデンサによる漏れ電流
スイッチング電源では、EMI対策としてYコンデンサが使用されることがあります。Yコンデンサは一次側と接地間、または一次二次間へ接続され、高周波ノイズを逃がす役割を持っています。しかし、コンデンサには交流電流を通す性質があるため、信号周波数でも漏れ電流が発生します。
そのため、Yコンデンサ容量を大きくするとEMI性能は改善しやすくなる分、漏れ電流も増加しやすくなります。特に医療機器や人体接触機器では漏れ電流規格が厳しいため、Yコンデンサ容量を簡単に増やせないケースもあります。このように、EMI対策と漏れ電流低減はトレードオフになることが多く、実務ではバランス設計が重要になります。
漏れ電流対策で重要なポイント

次に、漏れ電流の対策として重要なポイントを解説します。
寄生容量を増やさないレイアウト設計
漏れ電流対策では、不要な寄生容量を増やさないレイアウト設計が重要です。基板上では、配線やパターン同士が近づいたり、向かい合う面積が大きくなったりすると寄生容量が発生し、高周波の漏れ電流が流れやすくなります。
例えば、スイッチング電源やインバータでは、電圧変化の大きい配線が周辺パターンに近いだけでも容量結合が生じ、漏れ電流が増えることがあります。また、絶縁が必要な一次側と二次側のパターンが広い面積で向かい合っていると、その間の寄生容量が増え、絶縁をまたいで高周波電流が流れやすくなります。
そのため実務では、高dv/dtが発生するスイッチングノードの配線をできるだけ短くまとめる、一次側と二次側の距離を十分に確保する、不要に向かい合う銅箔面積を減らすといった対策が行われます。また、必要に応じて絶縁スリットを設け、容量結合そのものを小さくする方法が使われることもあります。
接地設計
漏れ電流対策では、接地設計も重要になります。漏れ電流は、寄生容量やYコンデンサなどを通じてGNDや筐体アースへ流れるため、「どこへ電流を逃がすか」によって流れる経路や大きさが変化します。例えば、接地インピーダンスが高いと、本来アースへ流したい高周波電流が別経路へ回り込みやすくなり、筐体や周辺配線へ不要な漏れ電流が流れる場合があります。
また、大電流が流れる電力GNDと、センサ回路や通信回路などの小信号GNDが共通化されていると、漏れ電流による電位変動が他回路へ伝わり、誤動作につながることもあります。そのため実務では、漏れ電流が流れる経路を事前に意識し、高周波電流をできるだけ短い経路でアースへ戻すことや、ノイズに弱い回路へ漏れ電流を流し込まないGND構成にすることが重要になります。
Yコンデンサ容量の最適化
漏れ電流対策では、Yコンデンサの容量や配置を適切に調整することも重要です。Yコンデンサはノイズ対策に有効ですが、容量や接続位置によって漏れ電流の流れ方が変わるため、部品選定だけでなく実装方法まで含めた検討が必要になります。特に高周波では、わずかな容量差でもノイズ特性や漏れ電流値に影響が出る場合があります。
そのため実務では、容量を段階的に変更しながらノイズ測定と漏れ電流測定を行い、最適な値を探すケースがよくあります。また、1個でまとめて容量を持たせるのではなく複数に分散配置したり、接続位置を調整したりして、必要なノイズ低減を確保しながら漏れ電流を抑える設計が行われることもあります。
実務では「EMI」と「安全性」のトレードオフが重要
漏れ電流対策では、単純に「漏れ電流を小さくすればよい」というわけではありません。特にスイッチング電源やインバータ機器では、EMI対策として高周波ノイズを適切に逃がす必要があるため、ある程度の漏れ電流は避けられないケースがあります。
例えば、Yコンデンサ容量を大きくすると、高周波ノイズをGNDへ逃がしやすくなり、EMI性能は改善しやすくなります。しかしその一方で、商用周波数成分による漏れ電流も増加し、感電リスクや安全規格への影響が大きくなります。
また、高周波ノイズ低減を優先してシールドやGND接続を増やすと、別の経路でコモンモード電流が流れやすくなり、想定外の漏れ電流経路が形成される場合もあります。特にインバータやモータ駆動回路では、モータケーブルや筐体を経由して大きなコモンモード電流が流れ、漏電ブレーカ誤動作やノイズ問題につながるケースも少なくありません。
そのため実務では、「EMI性能」「漏れ電流」「安全規格」「誤動作リスク」を個別に考えるのではなく、回路全体としてバランスを取ることが重要になります。特に高電圧・高周波機器では、回路図だけでは漏れ電流を正確に予測しきれない場合も多いため、実機でのEMI測定や漏れ電流測定を繰り返しながら最適化していくことが重要になります。
漏れ電流測定で注意すべきポイント
漏れ電流は非常に小さい電流である一方、高周波成分や測定環境の影響を受けやすいため、測定方法によって結果が大きく変わる場合があります。例えば、スイッチング電源やインバータでは高周波ノイズ成分が多く含まれるため、一般的なテスタでは正しく測定できないケースがあります。また、測定器や配線の寄生容量によって、実際より大きな漏れ電流が観測される場合もあります。
さらに、漏れ電流は接地状態によっても変化します。保護接地の有無や接地インピーダンスの違いによって、漏れ電流経路が変わるため、実際の使用状態を想定した測定が重要になります。特に安全規格評価では、測定条件が細かく規定されていることが多く、測定回路や人体模擬回路を用いて評価するケースもあります。そのため、単純に電流値だけを見るのではなく、「どの条件で測定された値なのか」を確認することが重要です。
また、実務では通常動作時だけでなく、起動時や異常時の漏れ電流確認も重要になります。インバータやPFC回路では、電源投入直後に一時的に大きな漏れ電流が流れるケースもあるため、瞬間的なピーク電流まで含めて確認する必要があります。
まとめ
今回は、漏れ電流の発生原因や主な対策方法、設計時の注意点について解説しました。漏れ電流は、絶縁抵抗や寄生容量、Yコンデンサなどによって発生し、高電圧化・高周波化が進む近年の機器では特に問題になりやすい現象です。漏れ電流が大きくなると、感電リスクだけでなく、EMI悪化や誤動作、安全規格不適合などにつながる場合があります。
そのため実務では、単に漏れ電流を減らすだけではなく、EMI性能や放熱性、安全性なども含めた全体最適が重要になります。漏れ電流は実装条件や接地環境によっても変化しやすいため、最終的には実機での漏れ電流測定やEMI評価まで含めて最適化するようにしましょう。
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