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FCV(燃料電池自動車)はEVとどう違う?将来性についても紹介

2023.10.07更新

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この記事を書いた人

機電系専門ライター Div.長谷川

長谷川

FREE AID編集部 機電系専門ライター Div.
アナログ回路設計・営業を経験した後ライター&ディレクターとして独立。
電気電子・ITジャンルを得意とし、正確で分かりやすい情報の発信を行っています。

次世代自動車の一つとして開発が進んでいるFCV(燃料電池自動車)。脱炭素社会に向けて一時注目が集まったものの、EV(電気自動車)と比べると開発状況をご存じない方も多いのではないでしょうか。本記事では、FCVに注目し、EVとの違いや開発状況、将来性などを詳しく解説します。

FCVとEVの違い

まずは、FCVとEVの基礎的な知識を、それぞれの違いも含めて解説します。

FCV(燃料電池自動車)

FCVとは、ガソリンの代わりに水素を使って走る車です。水素を大気中の酸素と反応させた際に生まれるエネルギーを電力として取り出し、モーターを動かすことから「燃料電池自動車」と呼ばれています。

名前に「電池」とついていますが、FCVには補助バッテリーがついているのみであり、燃料によるエネルギーをそのままモーターの動力として使用するのが基本的な機構です。ガソリンタンクの代わりに圧縮水素を入れるタンクを内蔵しており、水素ステーションから水素を補給して走行します。

モーターで動くため静粛性や乗り心地などに差はありますが、燃料で動く構造をしているため電気自動車よりもガソリン車に近い使い方ができます。

EV(電気自動車)

電気自動車は、大容量のバッテリーを搭載し、その電気でモーターを動かして走る車です。プラグを挿して充電した電力で走行するためエンジンは存在せず、バッテリーとモーターだけで動きます。

構造の違いにより、静粛性の高さや急な加速・減速など、ガソリン車と乗り心地が大きく違うのも特徴です。電気の充電に時間がかかり、航続距離が短いなどの短所もありますが、環境性能の良さやエネルギー効率の高さなどメリットが多いことから、近年主流となりつつある自動車です。

FCVのメリット

続いては、FCVがガソリン車やEVと比較した時にどのようなメリットを持っているのかお伝えします。

排気ガス排出ゼロ

FCVの一番のメリットは、走行中に有害な排気ガスを出さないことです。FCVは水素と酸素を反応させてエネルギーを得るため、反応後に残るのは水であり、ガソリンのように二酸化炭素などの有害ガスを出すことがありません。

ただ、実際は水素を生成する際に電力が必要なので、間接的には排気ガスが発生しています。そのため、環境負荷を抑えるにはクリーンなエネルギーを使うことも重要となります。

長距離走行が可能

排気ガスを排出しないのはEVも同じですが、比較してFCVが優れている部分は、1回の燃料供給で長距離走行が可能なことです。EVはバッテリーの容量に限界があるため、航続距離は200kmと短いですが、FCVはガソリン車と同等以上となる850kmの航続距離を実現しています。

FCVは燃料を補給する水素ステーションが少ないという課題があるため、さらに長距離の走行が可能となるような開発も進んでいます。航続距離1000kmを達成したとの報告もあり、これから更なる航続距離の向上が期待できるでしょう。

燃料の補給時間が短い

EVが持つもう一つのデメリットは、充電時間が短くても30分はかかるということです。家庭で夜に充電することが多いため、近場での運転には大きな影響はありませんが、遠出する場合は充電時間が余分に必要となります。

その点、FCVであれば航続距離が長く、燃料補給の必要性が少ないうえ、補給自体も数分で完了するため、ガソリン車と同様の感覚で利用できます。遠出することが多い人にとっては電気自動車よりもメリットが大きいでしょう。

FCVの開発状況

数多くのメリットがあるFCVですが、技術的に未熟なこと、電気自動車により大きな注目が集まっていることから、世界を見てもほとんど販売は行われていないのが現状です。FCVを開発している主なメーカーについて、開発状況を解説します。

トヨタ「MIRAI(ミライ)」

日本のFCVとして最も有名なのはトヨタの「MIRAI」です。2014年に世界初の量産FCVとして販売を開始したのち、FCV開発の先駆者として今でも開発が継続されています。

2020年にもフルモデルチェンジを行っており、現在ではゼロエミッションと走りの楽しさを両立する高級セダンとして、年間5000台以上の販売を達成しています。

ホンダ「クラリティ」

トヨタに続き、日本でFCVを開発したのがホンダです。アメリカのGMと提携して開発を進めており、乗用車として「クラリティ」を2016年に販売開始しました。

一般販売しているトヨタとは異なり、リース専用という形式で販売していましたが、販売台数は2019年までに1900台と少なかったため、2019年にクラリティの量産を終了。開発は継続されていますが、商用車に限定する方針となっているため、乗用車の開発は止まっている状況です。

現代自動車「NEXO(ネクソー)」

海外メーカーで唯一量産車を販売しているのが現代自動車の「NEXO」です。2018年に韓国でリリースされ、2019年、2021年にはMIRAIを抜いてFCV販売車数世界一に輝いています。

現代自動車は2009年に日本から撤退しており、これまで日本で見る機会はありませんでした。しかし、2022年にNEXO、EV「IONIQ 5」の2車種のみ再度販売することを発表しているため、これから街中で見る機会が増えるかもしれません。

FCVの課題と将来性

FCVはEVと比べるとほとんど開発が進んでいませんが、その理由は何でしょうか。現状の課題と将来の可能性について詳しくお伝えします。

EVよりもエネルギー効率が低い

まず、FCVが持つ最も大きな課題は、エネルギー密度が低いことです。エネルギー効率は、水素や石油、電力が持つエネルギーを動力に使える割合のことで、エネルギー生産から輸送、保管、燃焼まで、さまざまな所でロスが発生します。

この数値は状況によっても変化しますが、特に水素を作るために水を電気分解する際、水素ステーションからFCVへの補給を行う際に多くのロスが発生するため、EVと比べるとエネルギー効率は総じて低いといえるでしょう。

実際に、欧州のNGOが2017年に発表した「Transport&Environment」によると、電気自動車のエネルギー効率が73%なのに対して燃料電池は22%と、エネルギー効率が3分の1以下になるとの報告もされています。

大規模なエネルギーの保管や輸送など、水素にメリットがある場合もありますが、エネルギー効率が低いと無駄なエネルギーを消費することに直結するため、この問題を解決しなければFCVが普及するのは難しいのが現実です。

技術的なハードルが高い

FCVを開発するための技術的ハードルが高いのも、FCVの開発における大きな課題です。例えば、FCVでは圧縮水素を燃料として使いますが、通常の金属をタンクとして使用すると、水素が浸透してタンクが腐食するため、特殊な材質のタンクを開発する必要があります。

また、水素と酸素を反応させる際に白金を大量に使うこと、FCVを小型化した時にコストを下げにくいことなども問題となっており、これらの解決には多くの時間とコストが必要です。

EVがモーターとバッテリーで走行するシンプルな構造であり、テスラを始めとした新興メーカーでも開発できることと比べると、FCVの開発は難しいと言わざるをえません。

水素の充電ステーションが少ない

水素を補給する水素ステーションを増やしにくいことも、自動車を普及させていく際の大きな課題となります。水素は危険なガスなので、水素ステーションを開設する場合、その場に高圧ガス保安監督者を常駐させなければなりません。

同様に、ガス漏れが発生した時のことを考えて、敷地が広く、天井のない所に設置しなければならないなどの制限もあるため、場所的な問題で増やせないと言った問題もあります。技術面やコスト面での課題を解決した後であっても、普及までには課題が山積していると言えるでしょう。

技術革新の余地は十分残っている

このように、技術面・コスト面を始め、FCVが普及するにはさまざまな課題が残っているため、今後のFCV普及には技術革新が必要です。しかし、逆にいうとFCVはまだまだ発展途上であり、性能が向上する余地は多いため、可能性は十分に残っているともいえます。

FCVの量産コストの低減、水素貯蔵方法の確立、エネルギー効率の改善など、トヨタを始めとする一部メーカーが粘り強く開発を行っているため、技術革新によって急激に普及が進むかもしれません。

商用車への採用にも期待

また、乗用車においては開発が進んでいないFCVですが、バスやトラックなどの商用車についてはEVよりもFCVにメリットがあるため、採用される可能性が高いです。

その理由は、商用車は重量が非常に大きいので、電池の容量に限界があるEVでは長距離輸送が難しいからです。

FCVの課題である水素ステーションの少なさも、走行する場所が決まっていれば解決できるため、商用車が全てFCVに置き換わる可能性は高いと言えるでしょう。

まとめ

今回は、FCVについてご存じない方に向けて、FCVの特徴やEVとの違い、課題や将来性についてお伝えしました。FCVはEVと同様にクリーンなエネルギーを持ち、ガソリン車のように使える自動車です。

技術的には未熟であり、開発には長い時間とコストがかかるため、現在はEVと違い開発が進んでいない状況です。しかし、技術革新の余地は多く、商用車としての実用化も進んでいることから、将来的にはEVと並んで、炭素ゼロ社会の一翼を担う存在となっているかもしれません。

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