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電気自動車(EV)のバッテリー寿命は?耐用年数や劣化の仕組みを解説!

2023.10.07更新

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この記事を書いた人

機電系専門ライター Div.長谷川

長谷川

FREE AID編集部 機電系専門ライター Div.
アナログ回路設計・営業を経験した後ライター&ディレクターとして独立。
電気電子・ITジャンルを得意とし、正確で分かりやすい情報の発信を行っています。

バッテリーにおいて度々話題となるのが充電容量の劣化ですが、電気自動車においてもバッテリーの劣化は問題となりえます。電気自動車は大容量のリチウムイオン電池を搭載しており、各メーカーによる保証もありますが、車の一生を考えると劣化の影響は無視できません。

そこで本記事では、バッテリーの寿命がどのくらいか、長持ちさせるためにできることなどについて詳しく解説します。

電気自動車のバッテリー寿命はどの程度?

まず、電気自動車のバッテリー寿命の長さについてお伝えします。

バッテリー寿命は車の寿命と同程度

リチウムイオン電池の劣化は、時間経過と充電回数によって生じます。電気自動車の場合、一般的には「8年または16万キロ」程度までなら劣化が一定以下で済むよう設計されていることが多いです。車の寿命が「13年または15万キロ」程度であることを考慮すると、バッテリーと車の寿命はそこまで変わらないと言えます。

もちろん寿命は使用状況や周囲の環境によっても変わりますが、一般的な使い方をしている限りは、バッテリーを途中で交換することはあまりないでしょう。

メーカーではバッテリー寿命の保証も行っている

実際、電気自動車のバッテリー寿命については、メーカーによって下記のような保証も行われています。

メーカー 保障内容
日産 8年間または16万km
バッテリー容量計9セグメント以上
(最大12セグメント)
TESLA
(MODEL S)
8年間または24万km
バッテリー容量70%以上
三菱自動車
(i-MiEV)
8年間または16万km
バッテリー容量70%以上
mercedes-benz 8年間または10万km
最大エネルギー容量19.6kWh以上

保証期間内に規定以上のバッテリー劣化が生じた場合は、無償でバッテリーの交換を行っているため、万が一の時も安心です。多くの電気自動車は「8年、16万km」程度の保証内容となっていますが、メーカーや車種、使用条件などで保証内容は変わるため、購入の際は詳しく確認しておくとよいでしょう。

電気自動車のバッテリーが劣化する原因

それでは、そもそもバッテリーが劣化する理由は何でしょうか。詳しい原理について解説します。

充放電の繰り返し

最も一般的なバッテリー劣化の原因は、充放電の繰り返しによる容量の低下です。リチウムイオン電池の場合は、陽極に確保されているリチウムイオンが陽極・負極間を動くことで充放電を行います。

リチウムイオン電池は、鉛蓄電池などと違って電極や電解液が化学反応を起こさないため、充放電による劣化が生じにくいのが特徴ですが、それでもさまざまな要因で劣化が生じます。

例えば、リチウムイオン電池では、負極に微細な孔が空いた炭素材料を使っており、効率よく電解質が析出するようになっています。しかし、充放電を繰り返す中で、反応する材料である電極材料が剥離して電極と電解質の反応量が低下してしまうといったことがあります。

同様に、負極表面で電解液が分解すると膜(SEI膜)が作られますが、その厚みや構造が変化することも劣化を引き起こします。メーカーも寿命を延ばすための対策は行っていますが、性能の劣化は避けられないのが現状です。

高温環境下での使用

このように、電池を使用する以上、充放電による劣化は避けられませんが、それ以外にもより速く電池が劣化してしまう原因もあります。

その一つが、高温環境下での使用です。

通常、リチウムイオン電池は劣化が生じにくいように、電極や電解質の特性や構造を調整しており、リチウムイオン電池の使用温度範囲である60℃以下であれば、ほとんど劣化が起きないよう設計されています。

しかし、電池が高温になると電池内部の反応が活発になり、バッテリー劣化につながる化学反応が生じやすくなるため、急速に寿命が短くなってしまうのです。

長期間の放置

電気自動車を充電せず長期間放置することも、バッテリーの急速な劣化を引き起こす原因です。バッテリーは内部抵抗により、使っていない時でも少しずつ放電が進んでいきますが、充電が完全になくなった後も放電反応は止まらず、「過放電」という状況に陥ります。

過放電の時は、負極側には充電で貯めたリチウムイオンの貯蔵は無くなっているので、別の方法でリチウムイオンを生み出す必要が生じます。この時、電解質や電極などを溶かしてリチウムイオンを生み出すので、電池が急速に劣化するのです。

逆に、電池を充電したままでも「過充電」が生じて劣化の原因となるので、長期間放置する際は、充電プラグはつながず、バッテリーが放電しきる前に定期的な充電を行うことが重要です。

電気自動車のバッテリーを長持ちさせるコツ

電気自動車にはバッテリーが劣化する原因が数多く存在するため、長持ちさせるためには工夫が要ります。ここからは、押さえるべき主なポイントを解説します。

急速充電を多用しすぎない

まず一つ目は、不要な急速充電を多用しすぎないことです。急速充電は、大電流をバッテリーに流して充電しますが、バッテリーの温度は流れる電流に比例して上昇するため、バッテリーに悪影響を及ぼしやすくなります。

特に、高速道路などで長時間走った後に何度も急速充電を行うと、バッテリー温度が想定以上に上がってしまい、劣化が進む可能性が高いです。急速充電は利便性が高く、メーカーによる熱対策も進んでいるため直ちに大きな影響があるわけではありませんが、無駄に急速充電を多用するのは避けましょう。

バッテリーが高温になるのを防ぐ

同様に、バッテリー温度が高くなりすぎないよう気を付けるのも大事です。各メーカーはバッテリー温度を一定に保つようさまざまな工夫をしているため、基本的な使われ方の範疇で問題が起きることはほとんどありません。

しかし、長時間直射日光を浴びる所においておくなど、状況によっては悪影響を及ぼす可能性があるため、注意しておくとよいでしょう。

適切な頻度で充放電を行う

バッテリーの過放電や、長期間放置による劣化が生じないよう、定期的な充放電も行いましょう。定期的に電気自動車を使っている場合でも、バッテリーが0%になるぎりぎりまで使うより、余裕を持って充電した方がバッテリーには優しいです。

バッテリーの充電が常に「30~80%」程度となるように運用するのがおすすめです。

途中で充電するのは問題ない

余談ではありますが、バッテリーの充電において「バッテリーは放電しきってから充電しないと寿命が短くなる」とよく言われますが、リチウムイオン電池には当てはまりません。

これは、ニッケル水素電池などで生じるメモリー効果(充電を使い切らないうちに再充電することで、継ぎ足した充電分のみしか放電されなくなる現象)のことを指しているからです。

リチウムイオン電池にはこのメモリー効果はありませんので、途中で充電しても寿命に与える影響はありません。そのため、充電を使い切る前にこまめに充電しても大丈夫です。

バッテリーの交換は高価

バッテリーを長持ちさせるコツをお伝えしましたが、実際に電気自動車のバッテリーが劣化してしまい、航続距離が足りなくなってしまった際はどのように対応すればよいのでしょうか。

まず、劣化したバッテリーは復旧できないので、バッテリー本体を丸ごと交換することとなります。ただ、バッテリーは電気自動車の中でも最も原価の高い部品であり、テスラのMODEL Sにおいて、バッテリー交換費で260万円を請求された人がいるなど、交換費用が車体に匹敵する価格となる可能性が高いです。

そのため、バッテリーが劣化した場合、バッテリーの交換ではなく車自体を買い替えるのが現実的となるでしょう。これからバッテリーの再利用なども進むため、交換費用が安くなっていく可能性はありますが、バッテリーの劣化が車の買い替え時期と密接な関係があることは事前に理解しておく必要があります。

まとめ

今回は、電気自動車のバッテリー寿命や、バッテリーが劣化する原因、劣化を抑えるための方法についてお伝えしました。バッテリーの寿命は、車の寿命と大きくは変わりませんが、高温環境下での使用や充電後に長期間放置すると短くなりやすい傾向があります。バッテリーが劣化しやすい条件を理解して、普段から適切な使い方をするように心掛けましょう。

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