EMS(電子機器製造受託)とは?関連用語との違いやメリットも解説

2025年3月25日更新
機電系エンジニア必見!!貴重なフリーランス案件はこちら ▶製造業における業務形態を指す言葉として、EMSという言葉を聞いたことはあるでしょうか。今回はEMSについて、関連用語との違いやメリット/デメリットにも触れながら網羅的に解説していきます。
EMSとは
EMS(Electronic Manufacturing Services)とは、製造業における電子機器の製造工程の一部もしくは全部を受託するサービスのことで、サービスを請け負う企業を指す場合もあります。1980年代にアメリカのシリコンバレーで誕生したビジネスモデルであり、現在ではあらゆる機器に電子部品が搭載されるようになったことで、自動車や通信、医療、ITなど様々な業界で使用されるサービスとなりました。
EMSの対象となる工程
製造業において最終製品が販売されるまでの間には、市場調査、企画、設計、試作、評価、量産、保守などのプロセスが存在します。最序盤の市場調査や企画の段階では、市場のニーズや他社の販売状況などを調査し、搭載する機能や価格帯、販売時期、販売台数などを大まかに決めていきます。
採算性が取れると判断されたら設計/試作段階へ移行し、詳細な仕様を決めながら試作と評価を繰り返すことで、少しずつ最終製品へと近付けていきます。そして製品として販売できるレベルに達したら量産を行い、販売後も必要に応じて修理などの保守を行います。EMSでは設計段階から受託するのが一般的で、委託元の企業が要求する仕様に沿う電子機器の設計から量産までを受託企業が担います。
EMSの誕生から発展までの歴史
前述の通り1980年代に誕生したEMSですが、当初はプリント基板の組み立てなど製造工程の一部を受託するのが一般的でした。しかし1990年代に突入しIT化が進むとEMSの受託数も大幅に増え、製品開発や設計、販売後の保守など、製造工程の大半を担うサービスへと進化していきました。そして2000年代に突入すると製造部門を持たない企業が増えはじめ、半導体分野の目覚ましい発展も相まって、EMSは非常に大きな市場を持つサービスへと進化したのです。
EMSと類似する用語との違いも解説
製造工程を受託する業務形態には、他にもOEMやODM、下請けなどが存在します。それぞれの意味や違いについても覚えておきましょう。
OEM
OEM(Original Equipment Manufacturing)とは他社ブランドの製品を自社で製造する業態や企業を指す言葉で、ブランド力のない企業が自社の生産能力を活かし、有名ブランドの製品を作ることで利益を得るビジネスモデルです。EMSは機器設計から製造までを請け負う業務形態であるのに対し、OEMは委託元の企業が設計を行い、製造工程のみを受託するのが一般的であるため、請け負う業務範囲が異なります。
ODM
EMSやOEMと類似した業務形態として、ODM(Original Design Manufacturer)という言葉もあります。OEMよりもEMSに近い業務形態で、製造工程だけでなく設計工程も受託するのが一般的です。違いとして、EMSは電子機器の製造に関わる部分を一括して外注するのに対し、ODMは委託元の企業とODM企業が相談し合いながら、併走するように設計、製造を行う点が挙げられます。
下請け
他社から業務を請け負う業務形態から、EMSをいわゆる下請けと考える人もいると思いますが、これらは全くの別物です。そもそも下請けとは、委託元の企業が設計や資材調達を行い、受託企業は委託元の企業の指示にしたがって製造のみを行う業態のことであり、受託企業が設計部分や工程に口出しすることはありません。一方のEMSでは受託企業が主体となって設計や製造を行うため、下請けと比べて受託企業の裁量が大きい業務形態と言えます。
EMSを利用するメリット
EMS業態を採用することで委託元の企業にはどんなメリットがあるのか、代表的な項目について解説していきます。
人材をコアビジネスに集中できる
まず1つ目に挙げられるメリットは、企業が抱える人材をコアビジネスに集中させられることです。例えば様々な電子部品が搭載されている自動車の製造を例に挙げると、電子部品の設計や開発は必須ではあるものの、これらの性能の違いによって差別化を図ることは難しいです。
そのため、企業は走行性能や燃費、デザインなど顧客満足度に直結する部分の改良にリソースを割きたいと考えます。そこで電子機器部品の開発をEMS企業へ外注して、社内のリソースを売り上げを左右するコアビジネスに集中させることで、より良い製品やサービスを生み出すことができるのです。
コストやリスクを抑えることができる
EMSを採用すると電子機器の設計や開発、製造に関わる人材と設備が不要になるため、人件費や設備の維持管理費、土地代などのコストが抑えられます。加えてEMS企業はその業務形態から大量に部品調達する傾向にあり、調達数に比例して値引率が高くなる部品においては、委託元の企業が自社で調達するより安く調達できるのも強みです。
また昨今では電子機器の発展が目覚ましく、生産設備のライフサイクルも短くなっているため、新製品開発のための設備投資が回収できないリスクが考えられますが、EMSを採用すれば委託元の企業が設備投資リスクを負う必要が無くなるのも、EMSの強みと言えるでしょう。
専門企業のノウハウを活用できる
EMSの受託企業は多くの企業から電子機器の設計や製造を請け負っているため、様々な知識やノウハウを多く保有しています。これらのノウハウはEMSにおける付加価値であり、提供することで受託企業側の評価に繋がります。またEMSは受託者側が主体となって設計などを行う業務形態のためフィードバックが得られやすく、結果として委託企業が自社で設計を行うより高品質な製品を作れるようになるのです。
販売までの工程を短縮できる
製品開発を行う企業の多くは常に必要な人材や設備を抱えているわけではなく、開発規模に応じて必要な人材を採用したり、新たな設備を用意して開発に臨むことが多いです。このやり方はコスト面で考えれば非常に合理的であるものの、これらの準備段階がボトルネックとなって開発工程が遅れることも珍しくありません。一方でEMSの受託企業は開発に必要な人材や設備を潤沢に持ち合わせているため、EMSを採用することで準備段階の工程を短縮でき、結果として通常より短納期でリリースできる効果も期待できます。
EMSにはデメリットもある
非常に優れた業務形態のEMSですが、採用によるデメリットも幾つかあるので覚えておきましょう。1つ目に挙げられるのが、製品の仕様など企業秘密となる情報を提供して業務を行うため、情報漏洩が発生するリスクがある点です。EMSの受託企業が悪意を持って情報を漏洩させる可能性は低いですが、必要に応じて機密情報保持契約などを締結する必要があります。
また製造工程を委託する業務形態であるため、自社に設計に関するノウハウが溜まりづらくなるのもデメリットと言えるでしょう。EMSを採用する際はノウハウが溜まらないことを覚悟するか、設計や製造の一部を自社で行うなど、社内人材を育成する仕組み作りを考える必要があります。
まとめ
今回は電子機器製造受託と訳されるEMSについて、関連用語との違いや誕生の歴史、メリット/デメリットなどを網羅的に解説してきました。昨今の電子機器需要の増加も相まって非常に大きなサービスとなっていることが理解できたのではないでしょうか。
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