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電気自動車は本当にエコなのか?環境に悪いと言われる理由を解説

2023.10.07更新

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この記事を書いた人

機電系専門ライター Div.長谷川

長谷川

FREE AID編集部 機電系専門ライター Div.
アナログ回路設計・営業を経験した後ライター&ディレクターとして独立。
電気電子・ITジャンルを得意とし、正確で分かりやすい情報の発信を行っています。

電気自動車は「環境にやさしい車」として人気が高まりつつありますが、「実は環境に悪い」という意見を見た方もいるのではないでしょうか。実際、電気自動車は走行中に二酸化炭素を排出しないなどのメリットがありますが、現状では必ずしも「エコ」とは言えない部分もあります。本記事では、電気自動車がエコなのか、環境に悪いと言われる原因などについて解説します。

排気ガスを出さないのが最大のメリット

まず、電気自動車が環境にいいと言われる最大の理由は「排気ガスを出さない」ことです。

ガソリン車は、二酸化炭素や窒素酸化物など、地球温暖化の原因と言われている物質を排出します。大気への排出量を抑えるために高性能なフィルターが使われてはいますが、対策には限界があります。その点、電気自動車ではバッテリーに充電した電気がエネルギー源となるため、有害な排気ガスが全く発生しません。

また、中国など排気ガスへの対策が十分でない国では、大都市における大気汚染も問題となっていますが、電気自動車によって劇的な改善が見込めるメリットもあります。

電気自動車自体が環境にいいかは別物

とはいえ、「排気ガスを出さない」というイメージで誤解しがちですが、「電気自動車を使えば二酸化炭素が発生しない」訳ではありません。電気自動車が必ずしもエコと言えない理由を説明します。

製造時の二酸化炭素排出量が多い

自動車は製造時に電気を使います。電気は火力発電で作られることが多いため、間接的に二酸化炭素を排出しているのです。鉄などの鉱石の採掘から、輸送、精錬、製品への加工まで、製造工程は複雑であり評価が難しいですが、一般的には電気自動車の方が二酸化炭素排出量が多いと言われています。

例えば、フォルクスワーゲンからは、2019年に開発した電気自動車「ID.3」において、同タイプのディーゼル車と比べ、製造時に約2倍の二酸化炭素を排出するとの報告が行われました。(出典:Volkswagen newsroom)

ディーゼル車が29gCO2/kmに対して、電気自動車は57gCO2/km(数値は20万km走るとした際の換算値)と報告されており、走行時の二酸化炭素排出量と比べても無視できない量が製造時に排出されていることが分かります。また、製造時の内訳としてはバッテリーが43%を占めており、電池が二酸化炭素を生み出す原因であると報告されています。

もちろん製造方法などによって状況は変わりますが、現状、電気自動車は「製造時は環境に悪い」自動車だと言えるでしょう。

走行分の環境負荷も少ないがある

同様に、電気自動車に充電する電気を作る際にも二酸化炭素は発生しており、特に火力発電では石炭や石油を燃やすため、大量の二酸化炭素が排出されます。

火力発電所では高性能なフィルターを使って二酸化炭素の排出量を抑えており、ガソリン車より二酸化炭素の排出量は少なくなりますが、それでも二酸化炭素の排出量は無視できません。

技術レベルによってエコかどうかが決まる

このように、電気自動車は製造時、走行時の両方で二酸化炭素を排出しているため、単純に「排気ガスを出さないからエコ」とは言えません。

実際に、フォルクスワーゲンからは、電気自動車が12.5万キロ走行してようやくディーゼル車と同等の二酸化炭素排出量となることが報告されており、「むしろ環境に悪い」場合もあります。(出典:Volkswagen

電池に関する環境問題も課題

ここまでは、二酸化炭素排出量の問題についてお伝えしましたが、電気自動車には電池に関する環境問題も課題となっています。

電池用資源をめぐる問題

現在、車載用の電池にはリチウムイオン電池が用いられていますが、リチウムイオン電池はリチウムやコバルト、ニッケルなどのレアメタルが必要です。

詳細はこちらの記事で言及していますが、電気自動車の普及によって爆発的にリチウムイオン電池の需要が高まることで、ニッケルやコバルトの採掘に様々な問題が発生すると懸念されています。

また、採掘が進んでいくと既存の鉱山での資源が枯渇し、より採掘が難しい所を利用しなければならないため、結果的に採掘における二酸化炭素が増えてしまうといった問題も内包しています。

廃棄時の環境汚染が深刻化

電気自動車に使われるリチウムイオン電池は5年ほどで寿命を迎えますが、コバルトやニッケル、マンガンなど、土壌や水を汚染する材料が多く使われているため、そのまま廃棄することは環境汚染に直結します。

特に電気自動車への移行が早い中国では、廃棄されるバッテリーの数は急速に増えつつあり、環境汚染は既に深刻化しているといえるでしょう。今後、各国で廃棄方法の確立が課題となることは間違いありません。

リサイクル率の低さも問題に

電池の廃棄による環境汚染や、製造コストを抑えるには電池のリサイクルやリユースも重要なポイントとなりますが、現状ではリサイクルが適切に行われているとは言えない状況です。

ガソリン車は、自動車リサイクル法によって95%以上がリサイクルされていますが、電気自動車はリサイクルの枠組みや技術が整っておらず、ほとんどのバッテリーが廃棄されています。

電気自動車の急激な普及に伴い、様々な企業がバッテリーをリサイクルし、再利用するプロセスを構築していますが、確立には今しばらくの時間が必要となるでしょう。

それでも電気自動車が主流となる理由

電気自動車は環境問題が山積していますが、それでもガソリン車の代替として、自動車業界の主流となりつつあります。その理由をお伝えします。

各国の法規制に伴うガソリン車の廃止

最も大きな理由は、欧州や中国、インド、米国、日本など、主要な国がガソリン車廃止の方向で進んでいることです。

きっかけは欧州グリーンディール政策です。2035年までに自動車の二酸化炭素排出量を100%削減すると決定されたことで、実質的にガソリン車が廃止となる流れが生じました。普通のガソリン車だけでなく、ハイブリッド車などエンジンのある自動車は全て販売できなくなるため、自動車業界は電気自動車への舵を切らざるを得なくなったのです。

この政策が制定された後、中国など他の国でも電気自動車の採用が加速し、今では多くの国でガソリン車を廃止する動きが進んでいるため、必然的に電気自動車が主流となりつつあります。

環境性能の向上に向けた開発も加速中

政策上、電気自動車が普及していくのは確実なのですが、環境性能の向上も同時に期待されています。例えば、より少ない電気で電池を作ることに成功すれば、製造時の二酸化炭素排出量を大幅に低減できるでしょう。電気自動車の電池をリサイクルする方法も有効です。

また、再生可能エネルギーなど、二酸化炭素排出量が少ない発電方法を行うことでも、電気自動車の二酸化炭素排出量を抑えられます。現状すぐに解決できる問題ではありませんが、将来的には「電気自動車はエコ」なのが常識となるかもしれません。

環境面以外のメリットも多い

電気自動車には、環境面以外でも、メンテナンス性の良さや維持費の低さ、乗り心地の良さなど、様々なメリットがあります。デメリットもあるため、走行距離などの使用状況や好みによっても変わりますが、今までの自動車にはない楽しみ方ができるでしょう。

電気自動車のメリットについて詳しく知りたい方は「電気自動車はガソリン車とどう違う?メリットとデメリットを解説」をご覧ください。

まとめ

今回は、電気自動車がエコなのか、環境に悪いと言われる理由について解説しました。電気自動車は排気ガスを排出しないという大きなメリットがありますが、間接的な二酸化炭素排出量はガソリン車と比べても少なくないため、必ずしもエコだとは言えない状況です。

ただ、各国の政策上ガソリン車が廃止されて電気自動車が主流となるため、今後の技術革新によって「電気自動車はエコ」だというのが常識となる可能性はあります。電気自動車特有のメリットも多数あるので、興味がある方は導入を検討してみてはいかがでしょうか。

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