キュリー温度とは?原理や磁性体ごとの温度について解説!
2024.08.27更新
機電系エンジニア必見!!貴重なフリーランス案件はこちら ▶磁石を扱う際、高熱環境において注意しなければならない「キュリー温度」。なぜこのような特性が存在するのか気になる方も多いのではないでしょうか。本記事では、キュリー温度の原理などを分かりやすく解説します。
キュリー温度とは
キュリー温度とは、磁石を高温に熱した場合に、磁石が磁力を失う温度のことです。磁石は温度が上がると少しずつ磁力を失っていき、キュリー温度に近づくと急激に磁力を失い、ゼロになります。磁石には様々な種類がありますが、キュリー温度もそれぞれ異なります。例えば強力な磁石として有名なネオジム磁石はキュリー温度が低く、高温環境では使いづらいといった特性を持っています。
主な磁性体のキュリー温度
実際に主な磁性体や磁石がどのようなキュリー温度を持っているか、下図に紹介します。
磁性体・磁石名 | キュリー温度 |
---|---|
鉄 | 770℃ |
ニッケル | 360℃ |
コバルト | 1100℃ |
ネオジム磁石 | 330℃ |
フェライト磁石 | 450℃ |
アルニコ磁石 | 850℃ |
磁性体としてはコバルトのキュリー温度が特に高いです。そのため、高温領域ではアルミ・ニッケル・コバルトの合金であるアルニコ磁石や、サマリウム・コバルトの合金であるサマコバ磁石が良く使われます。
これらの磁石はキュリー温度自体が高いだけでなく、温度変化に対する磁束の変化率が低いという特徴もあります。この特徴により温度に関わらず安定した性能を保てることから、精密機器などの用途でも使われています。
キュリー温度が生じる原理
それでは、なぜキュリー温度になると磁力が失われるのか、理由を解説しましょう。まず、磁石が磁力を持つ理由は、電子のスピンによって生まれた磁気が一方向に整列することで、大きな磁気モーメントとして働くからです。電子ごとの磁気モーメントは通常ばらばらな方向を向いているため、外部から磁力を通すことで磁気モーメントを整列させ、磁石としての性質を持たせています。ここで、磁石として使われる磁性体(強磁性体)は、一度磁気モーメントが整列すると自然に戻ることがないため、磁石として機能するのです。
一方、このような特徴を持つ磁石に熱を加えると、電子の熱振動が大きくなっていき、電子の位置がゆらぎ始めます。すると、磁気モーメントの方向もゆらぎ始めるため、磁力が少しずつ小さくなっていきます。
この熱振動によるゆらぎは、キュリー温度になると磁気モーメントが揃う力よりも大きくなるため、磁気モーメントが完全にばらばらになってしまい、磁力を失うことになるのです。なお、一度キュリー温度に達して磁力を持たなくなった磁石は、温度を下げた後、外部磁力を再度掛ければ再度磁石として働くようになります。
熱消磁は火山噴火の予知に使われる
このように、キュリー温度に近づくほど磁力を失う「熱消磁」は磁石を使う上で注意すべき特性といえますが、火山噴火の予知に使われているという側面もあります。火山の噴火は、地下にあるマグマが地表に上ってくることで起きますが、このマグマの上昇は目に見えず、温度で検知することも難しいです。
しかし、地下にある岩の磁力を観測すれば、マグマに熱せられて磁気を失う様がリアルタイムに検知できることから、噴火予測に活用できると考えられています。もちろん、噴火以外にも地盤の磁気が変化する要因があるため正確とは言い切れませんが、一つの指標として実際に利用されています。
人工的に磁力を消す「交流消磁」も
ちなみに、磁石から磁力を消す方法として、キュリー温度による熱消磁以外に「交流消磁」という手法もあります。これは、コイルの中に磁石を入れて交流電流を流し、その電流を少しずつ小さくしてゼロにする方法のことです。中の磁石は交流電流によって磁化の方向が反転し続けながら減衰していき、最終的に磁力を失います。この手法は磁力を消す手法として一般的であり、磁石や磁気テープの消磁などに用いられています。
まとめ
今回は、磁性体が熱によって磁力を失う温度である「キュリー温度」について、原理などを解説しました。キュリー温度は熱振動が磁気モーメントの配列を乱し、ばらばらにする温度のことです。キュリー温度を超えた磁石は磁力を失うことから、注意すべき性質として知られていますが、火山噴火の予測などに使われるという側面もあります。なお、エンジニアの場合、キュリー温度以下でも温度上昇が磁力の減少を誘発することで様々な問題が生じるため、留意しておくとよいでしょう。
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