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マルチプレクサ回路とは?4入力回路の作り方なども分かりやすく解説

2023.09.22更新

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この記事を書いた人

機電系専門ライター Div.長谷川

長谷川

FREE AID編集部 機電系専門ライター Div.
アナログ回路設計・営業を経験した後ライター&ディレクターとして独立。
電気電子・ITジャンルを得意とし、正確で分かりやすい情報の発信を行っています。

多くの入出力信号を制御するシステムを構築する時、マルチプレクサ回路を欠かすことはできません。マルチプレクサ回路とは複数の入力に対して1つの出力を出すよう制御する回路のことです。今回はそんなマルチプレクサ回路について、具体的な回路構成や使い方にも触れながら解説していきます。

マルチプレクサとは

既に触れたとおり、マルチプレクサ回路とは複数の入力信号に対して1つの出力信号を出す回路のことです。マルチプレクサという名称以外にも、多重器や多重化装置、合波器などと呼ばれることもあります。マルチプレクサを使うことで複数の信号を1つのチャネルで送信できるため、チャネルを節約するのに役立ちます。

一方、全ての入力をリアルタイムで出力先に伝えることはできないため、連続的な通信ではなく断続的に通信を行う場面で特に活躍します。これらのメリットから、人工衛星と地球間の通信のようにチャネルが限定される場面や、監視カメラを使った集中監視システムのように大量の入力信号を切り替えながら出力しても問題ないシステムに多く利用されます。

なお、マルチプレクサによって送信したデータを適切な受信先へ送るには、デマルチプレクサと呼ばれる回路も必要です。デマルチプレクサとはマルチプレクサによって単一チャネルで送信されたデータを、複数の受信先から適切な相手へ選択的に分配する回路のことで、基本的にはマルチプレクサと逆の動作をする回路と覚えておけば問題ありません。また、マルチプレクサとデマルチプレクサは基本的にセットで使用するため、これらを一括りにしてマルチプレクサと呼ぶこともあります。

マルチプレクサの具体的な回路

それではマルチプレクサ回路の具体的な回路構成や論理式について解説していきます。入力数によって回路構成自体の複雑さが変わるものの、基本的な考え方さえ抑えておけば多入力回路を構築できるので、ここでは2入力回路と4入力回路の2つに絞って解説します。

基本的な回路構成

最もシンプルなマルチプレクサ回路は、2つの入力信号と出力信号を選択するためのセレクタ信号が入力され、選択された信号が1つだけ出力される2入力回路です。2つの入力信号をそれぞれX1とX2、セレクタ信号をSとすると、出力信号Yは以下の論理式で与えられます。

Y=(X1S)+(X2S)
(但し、は論理積、+は論理和、は否定を表す)

この式の意味はセレクタ信号Sが真(1)のときは入力X1が、Sが偽(0)のときは入力X2が出力される回路で、セレクタ信号は1ビットの2進数と考えることができます。これを論理回路で構成するには、各入力信号とセレクタ信号が入力される2つのAND素子を1つのOR素子に入力する形で構成できます。

4入力回路などの応用回路

シンプルな2入力マルチプレクサ回路に対し、3つ以上の入力が存在する場合はセレクタ信号の数(2進数の桁)を増やすことで対応できます。例として4入力マルチプレクサ回路を考えてみると、以下の式で表されます。

Y=(X1S1S2)+(X2S1S2)+(X3S1S2)+(X4S1S2)
(但し、X1,X2,X3,X4は4つの入力信号、S1,S2は2ビットのセレクタ信号を表す)

この式では、4つの入力X1〜X4のうちセレクタ信号S1、S2によって選ばれた信号だけが出力される、というふるまいとなります。例えばセレクタ信号がS1=0、S2=1であるとき、第2項以外は0となり、Y=X2として出力されます。

上記の式だけを見るとやや複雑に感じるかもしれませんが、基本的な考えそのものは2入力マルチプレクサと同じで、セレクタ信号によって出力する信号を選択しているにすぎません。多入力回路は入力数に応じてセレクタ信号の個数(桁)を増やせば対応でき、数学的に一般化するとn個のセレクタ信号を用意すれば2n個の入力数のマルチプレクサ回路が構築できます。

デマルチプレクサの具体的な回路

続いてマルチプレクサとセットで使用されるデマルチプレクサ回路の具体的な回路構成を解説します。デマルチプレクサはマルチプレクサとは逆の考え方で1つの入力信号を複数のチャネルへ分配するため、回路の式は出力の数だけ存在します。分かりやすく単純な1入力2出力のデマルチプレクサの回路式を例に取ると、次式で表されます。

Y1=XS
Y2=XS

この式では、2つの出力先Y1、Y2のうちどちらに信号を出力するかをセレクタ信号によって選択していて、セレクタ信号Sが真(1)であれば出力Y1に、Sが偽(0)であれば出力Y2にXがは入力信号Xが出力されます。マルチプレクサ回路とは違い、デマルチプレクサ回路は1つの入力信号をどこに出力するか決める回路のため、式を1本で表すことはできません。

しかし応用回路を構築する上では、セレクタ信号の値に応じて出力する信号が決まること、セレクタ信号の数がn個に増えれば2nの出力のデマルチプレクサ回路を構築できること、を理解しておけば多出力回路が設計できます。

マルチプレクサ回路を利用するシステム例

マルチプレクサ回路は入力信号数に対して信号チャネルが限定され、常時全ての入力信号を出力する必要のないシステムに使われます。例えば、複数の監視カメラからの映像を一つのモニターで監視するシステムであれば、監視人の処理能力や映像を映し出すモニタ数に限界があるため、全ての映像を同時に出力する必要はありません。

そのため入出力間にマルチプレクサ回路を入れて、時間や操作によって映像を切り替えるようにすれば、現実的に使いやすい多入力監視システムが構築できます。他にも人工衛星などのような遠隔地との通信の場合も、通信に高いリアルタイム性が不要なため、マルチプレクサ回路を使って時間的に通信先を切り替える通信システムで十分です。

まとめ

今回は複数の入力信号を1つのチャネルによって送信するのに欠かせないマルチプレクサ回路について解説してきました。基本的な回路構成や具体的な用途、代表的なIC型番だけでなく、マルチプレクサ回路とセットで使うデマルチプレクサ回路についても理解できたのではないでしょうか。これらの回路は1つのチャネルで様々なデータを送受信するシステムにおいて必須の回路と言えますので、内容をしっかりと理解しておきましょう。

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