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電気自動車を家庭用電源に!「V2H」のメリットや導入に向けたポイントを解説

2023.10.10更新

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この記事を書いた人

機電系専門ライター Div.長谷川

長谷川

FREE AID編集部 機電系専門ライター Div.
アナログ回路設計・営業を経験した後ライター&ディレクターとして独立。
電気電子・ITジャンルを得意とし、正確で分かりやすい情報の発信を行っています。

電気自動車の購入を検討する際、「V2H」という単語を聞いたことのある方は多いのではないでしょうか。V2Hは家庭に設置する充電設備の一つですが、電気自動車を蓄電池のように使えることから、コストや災害対応などの面でメリットがあります。本記事では、そんなV2Hの具体的なメリットや、導入に向けて知っておくべきことをお伝えします。

V2Hとは

V2Hとは「Viecle to Home」の略で、電気自動車のバッテリーに蓄電した電気を、家庭用電源として活用できる設備のことです。家庭で電気自動車を充電する方法としては、100V/200Vの家庭用電源を流すコンセントを設置し、充電プラグをつないで充電するのが一般的です。

しかし、この方法では電気自動車から電気を取り出せないため、電気自動車を長期間使わない場合などに、蓄電した電気を浪費してしまう問題がありました。

一方、V2Hの充電システムでは、充電後に電気自動車から家庭への放電が行えます。電気自動車を蓄電池のように使えるため、余った充電を無駄なく使えるほか、電気代の節約や緊急時の停電対策にも有効なので、導入に注目が集まっています。

V2Hを導入するメリット

それでは、V2Hを導入することで得られるメリットについて、詳しく解説していきましょう。

非常用電源として使える

まず、V2Hの導入で得られる最も大きなメリットは、停電時に電気自動車を非常用電源として使えることです。災害時の停電対策は万が一の備えとして重要ですが、家庭で大容量の蓄電池を持つことは現実的ではありません。

その点、電気自動車は蓄電池と比べても大量の電気を蓄電できることから、災害時の非常用電源として非常に有用です。V2Hの導入により、少なくとも数日間は停電に耐えられるようになります。

電気自動車の充電速度が速くなる

V2Hを使うことで、電気自動車の充電速度を速くできるのもメリットです。200V電源プラグの標準的な充電能力が3Wなのに対し、V2Hは6Wの充電能力があるため、最大2倍の速度で充電できます。また、V2Hでは家庭用電源の使用状況をモニタリングして充電速度を決めるため、ブレーカーを落とすことなく最大効率で充電できる特徴もあります。

深夜の充電を使って電気代が節約できる

深夜、電気自動車に充電した電気を日中使うことで、電気代が節約できるのも大きな特徴です。ほとんどの電力会社では、深夜の方が電気代が安くなるプランを公表しています。日中の電気料金が高くなる代わりに深夜料金が安くなるので、電気自動車の充電をうまく使えば電気代を抑えられます。

例えば東京電力の「夜トク8」プランでは、夜11時~7時までの電力料金が21.16円となります(日中は32.74円/kWh)。通常の従量料金では、電力を使うほど価格が高くなることから、一定以上の頻度で電気自動車を使う場合や、普段の電力消費量が多い場合は大きな節電効果が得られるでしょう。

V2Hによって生じるデメリット

続いて、V2H導入におけるデメリットについてもお伝えします。

電気自動車の寿命が短くなる

バッテリーは電池の特性上、充放電を繰り返すと劣化が生じ、充電容量が少しずつ減っていきます。もちろん技術的な工夫により、充放電による劣化はほとんどありませんが、長期間V2Hとして使うことで無視できない劣化が生じる可能性はあります。

電気自動車においてバッテリーは基幹部品であり、車体の価値を左右する重要な存在なので、充放電を繰り返しすぎないよう、工夫して使うとよいでしょう。

導入費用が高い

V2H設備の導入費用が高いのも無視できないデメリットです。設備の購入費用が40万円以上かかるほか、設置工事にも費用もかかるため、大きな負担となるでしょう。V2H設備は耐用年数が10年以上あるほか、電気自動車のランニングコストは安くなるので、費用対効果を見極めた上で導入を検討してください。また、V2Hの設置に対する補助金制度もあり、機器購入費用や設置費用の一部を肩代わりしてもらえるので、積極的に利用しましょう。

瞬時停電が生じる可能性がある

V2Hはそのシステム上、電気自動車からの電力供給中は電線からの電力供給は行えません。電気自動車からの供給電力には限りがあるため、使用電力が供給電力を超えた場合は電線からの電力供給に切り替わるようになっています。

しかし、切り替えの瞬間は一瞬停電するため、パソコンなどの繊細な機器が強制終了したり破損する可能性があります。最近では瞬時停電が起きないよう工夫している設備もあるため、設備の選定時にしっかり確認しておきましょう。

対応していない車種がある

V2Hは基本的にほとんどの車種で使えますが、急速充電器のプラグがついていない場合や、放電に対応していない車では使用できないので、特に古い電気自動車を使う場合は注意しましょう。ご自身の電気自動車が対応しているか分からない場合は、V2HのメーカーHPにて確認してください。また、対応している車種についても、専門店で車体のプログラムを変更しなければならない場合があります。

V2Hの補助金制度

近年では電気自動車の普及を目指し、政府からさまざまな補助金が交付されていますが、V2Hについても同様に、主に4つの補助金制度が制定されています。ちなみに、これらの補助金以外にも自治体ごとに支援を行っているケースがあり、重複して支援を受けられるため、自治体の情報も確認することをおすすめします。

CEV補助金

CEV補助金とは、経済産業省が交付している「クリーンエネルギー自動車導入促進補助金」のことです。電気自動車や外部給電機、V2Hの購入が補助の対象になっており、V2Hの場合は補助率1/2、最大で75万円までの補助金を受け取れます。本補助金は災害時のレジリエンス向上が目的となっているため、停電時などに国・地方公共団体からの要請があればV2H充放電設備を貸与するといった条件があります。

DP補助金

DP補助金は、経済産業省の「ダイナミックプライシングによる電動車の充電シフト実証事業」で行われている補助金制度です。電気自動車が普及するに従って、各家庭の消費電力は一気に増加すると予想されており、ピーク電力が重なると電力の枯渇が起きることが懸念されています。そこで、電力会社のプラン変更によってどの程度各家庭の電力消費タイミングを分散できるか、実証するために行われているのが本事業です。

こちらもV2Hの導入時に、最大で設備費の1/2(75万円以下)、工事費40万円までの補助金を受け取れるほか、実証協力費として6万円を受け取ることができます。電力会社を変更しなければならないほか、充放電や電力使用状況などのデータ収集に承諾するなどの条件があるため、申請前に確認しておきましょう。

DER補助金

DER補助金は「分散型エネルギーリソース」を意味し、蓄電池を電力の需給調整用に用いる仕組みに対する補助金のことです。V2Hを始め、家庭にある蓄電池をエネルギー源として、電力会社の発電をサポートし、より安定した電力供給を行う目的で行われています。

他の補助金制度と同様、V2Hの導入時に、最大で設備費の1/2(75万円以下)、工事費40万円までの補助金が受けられます。その分、実証事業として、蓄電池の充放電を遠隔操作される場合があるので留意しましょう。

まとめ

今回は、電気自動車の充放電システム「V2H」について解説しました。V2Hは電気自動車の充電が行えるだけでなく、家庭への電力供給を可能とするシステムです。導入費用は高いものの、災害時のレジリエンス向上につながるほか、電気代を抑えられるメリットがあります。政府による補助金制度も充実しているため、ライフサイクルコストを計算した上で導入を検討することをおすすめします。

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