オペアンプとは?機能や特性をわかりやすく説明!
2024.08.07更新
機電系エンジニア必見!!貴重なフリーランス案件はこちら ▶電子回路について勉強すると、必ずと言っていいほど登場するのがオペアンプ。非常に汎用性に優れ様々な用途で使える部品ですが、特性が複雑で理解しにくいのではないでしょうか。そこで本記事では、オペアンプの基本的な機能や特性について解説します。
オペアンプとは
オペアンプは「Operation Amplifier(オペレーション・アンプリファイア)」の略で、日本語で「演算増幅器」と呼ばれる電子部品のことを指します。演算増幅器という名称の通り、アナログ回路における加算・減算・微積分などの演算を簡単に行うために設計された部品です。
オペアンプは、2つの入力端子と1つの出力端子で構成され、入力端子は「非反転入力(+)」と「反転入力(-)」に分類されます。内部はトランジスタやダイオード、抵抗などを組み合わせた回路で構成されており、最近はIC(集積回路)チップとして販売されています。
オペアンプの基本的な機能
オペアンプの基本的な機能は「入力端子の電圧差を増幅して出力する」ことにあります。入力端子に入る電圧を比較し、非反転入力の電圧が反転入力より高ければプラス、反転入力の電圧の方が高い場合はマイナスの電圧を出力します。この時、理想的には無限大の出力電圧・電流を出力するため、入力電圧差が無限大に増幅されて出力されたように見えるのです。このような動作のことを「差動増幅」と呼びます。
また、実際の回路に応用する場合は、オペアンプの入力と出力を抵抗を介して接続し、フィードバック回路を組むのが一般的です。主に「反転増幅回路」「非反転増幅回路」「差動増幅回路」の3種類があり、それぞれで用途に合わせた任意の増幅率を得ることができます。
理想オペアンプと現実のギャップ
オペアンプを設計に使ったことのある人は「理想オペアンプ」という言葉を聞いたことがあるのではないでしょうか。オペアンプは入力における電圧差を増幅して出力する部品ですが、内部回路は複雑であり、簡単に理解することはできません。
しかし、オペアンプは非常に多くの用途で使われることから、内部回路を理解できなくともオペアンプ自体が使えるように「理想オペアンプ」という形で簡略化し、回路設計に役立てています。
ただ、この理想オペアンプは、理想的な条件におけるオペアンプの機能を説明したものであり、実際は内部回路の物理的な限界によって様々な誤差が生じます。理想オペアンプの特性と共に、実際はどのような誤差が生じるのかを理解しておくようにしましょう。
オペアンプの主な特性
それでは、オペアンプを実際に使う上で重要になる、主な特性を紹介します。理想オペアンプの特性だけでなく、実際のオペアンプで生じる誤差についても解説するので参考にしてください。
入力インピーダンス
入力インピーダンスは、オペアンプの2本の入力端子が持つインピーダンスのことです。オペアンプは入力端子の電圧を比較するだけであり、入力端子に電流を流す必要はないため、入力インピーダンスを無限大にするのが理想となります。ただ、実際の回路で抵抗値を無限大にすることは不可能なので、次に紹介する入力バイアス電流がどうしても流れてしまいます。
入力バイアス電流
オペアンプの入力端子に流れる電流のことを入力バイアス電流と呼びます。理想オペアンプのように、入力インピーダンスが無限大となる場合はバイアス電流は流れませんが、実際は回路の物理的限界によって一定量のバイアス電流が流れています。
バイアス電流は非常に小さいため通常は問題となりませんが、入力回路の電圧降下や無駄な電力消費を招くため、場合によっては注意が必要です。
入力オフセット電圧
入力オフセット電圧は、2つの端子に同じ入力電圧を入れた際、出力される誤差電圧値のことです。出力電圧は理想オペアンプでは0Vとなりますが、オペアンプ内部回路の平衡を完璧に取るのは難しいため、実際には一定の直流電圧が出力されてしまいます。
オペアンプではこの電圧誤差をなくすため、入力オフセット電圧分の電圧補償回路を入れるのが一般的です。最近のオペアンプにはオフセット電圧補償用の端子が追加されているため、簡単に誤差を抑えることができます。
スルーレート
スルーレートは、オペアンプの動作速度のことを指します。入力電圧が変化した際、出力電圧も同時に変化するのが理想ですが、実際は内部回路の遅延により、出力電圧が入力に追随するまでに一定の時間を要します。
出力波形の立上り、立下りそれぞれで応答速度は変わるので、応答が遅い方をスルーレートとして定義していることが多いです。スルーレートの高いオペアンプも販売されているので、高周波信号を扱う際は製品ごとの特性を確認して選定するとよいでしょう。
出力インピーダンス
オペアンプの出力端子が持つ内部インピーダンスの事です。出力インピーダンスが高いと内部回路によって電圧降下が生じるため、インピーダンスは可能な限り低くすることが求められます。理想オペアンプでは、出力インピーダンスはゼロになりますが、実際は数オーム程度の抵抗値があります。電圧降下だけでなく、大電流を出力する場合は内部発熱にも注意しなければなりません。
増幅率
理想オペアンプの場合、入力電圧の差を無限大に増幅しますが、実際には増幅率に限界があります。特に、出力電圧はオペアンプに供給する電源電圧以上にならないため、入力電圧が大きい場合は増幅率が極端に下がるので注意が必要です。基本的には弱い信号を増幅する前提でオペアンプを使うとよいでしょう。
ダイナミックレンジ
ダイナミックレンジとは、オペアンプの入力・出力として扱える電圧幅のことを指します。理論上は、入力・出力の最大電圧は電源電圧と同じになりますが、実際には内部回路の問題で、電源電圧付近の電圧を扱えないオペアンプが多いです。
そのため、電源電圧付近の電圧で入出力を行いたい場合は、ダイナミックレンジを確認する必要があります。特に、電源電圧が小さい場合はダイナミックレンジが狭くなり、問題が生じやすいので、そんな場合はダイナミックレンジが電源電圧と同じになる「Rail to Railオペアンプ」を利用することをおすすめします。
内部ノイズ
理想オペアンプでは発生しませんが、実際のオペアンプでは内部部品によってノイズが発生し、出力電圧に誤差が発生します。低周波信号の場合は、フリッカーノイズや抵抗で発生する熱ノイズなどの1/fノイズが、それ以外の周波数ではホワイトノイズが支配的となります。
ノイズレベルは小さく基本的には無視しても問題ありませんが、オペアンプのデータシートにノイズ特性が書かれているので、繊細な信号を扱う場合は確認しておきましょう。
差動入力電圧
入力端子に印加できる電圧は、基本的に電源電圧の範囲内となりますが、実は2本の入力端子間の電圧差(差動入力電圧)も別途定格電圧が定められています。この定格は内部部品の耐圧によって定められており、万一にも破損しないよう、内部でクランプによる保護回路が入っている場合もあります。差動入力電圧が大きくなる場合は仕様の確認が必要です。
温度特性
電子部品は多くの場合、温度変化によって特性も変わりますが、オペアンプも同様に温度による影響をうけます。特に、入力オフセット電圧と入力バイアス電流は温度が上がるほど大きくなるため、使用温度範囲が広い場合は注意が必要です。
まとめ
今回は、オペアンプの基本的な機能や、知っておくべき特性について解説しました。オペアンプは入力と出力を絶縁し、簡単に増幅が行える部品としてほとんどの電子回路に使われていますが、内部回路は複雑であり、理解は難しいです。
そのため、理想オペアンプという形で簡略化した特性が計算上用いられますが、実際は部品の物理的限界から誤差が生じます。扱う信号によって注意すべき特性は変わるので、オペアンプ選定の際には各特性を一通り確認しておきましょう。
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