サージ対策における設計手順とレイアウトの勘所
2026年3月22日更新
この記事を書いた人

大手メーカー「コマツ」、「オムロン」などで7年間、アナログ回路エンジニアとして設計・評価業務に従事。
ECU、PLCなどのエレキ開発経験を多数持つほか、機械商社での就労経験も有する。
株式会社アイズ運営の機電系フリーランスエンジニア求人情報「FREEAID」専属ライターとして、
機電分野の知識と実務経験を活かし、専門性の高い記事執筆を行っている。
サージ対策は、過渡エネルギーの流れと電流経路を制御するという観点から、部品選定だけでなく回路構成やレイアウトまで含めて設計する技術が重要になります。
本記事では、電子回路設計者を対象に、サージ対策を部品選定だけでなく、侵入経路の整理やエネルギーの逃がし方、配置とレイアウトまで含めた設計手順として整理し、実務で判断できるレベルで解説します。
サージ電圧とは?

サージ電圧とは、通常の動作電圧を大きく超えて瞬間的に発生する過渡的な電圧や電流のことを指します。発生時間は非常に短いものの、エネルギーが大きいため、電子機器に大きな負荷を与えます。
サージの代表的な発生要因には、電源や負荷の開閉動作、誘導性負荷の遮断、静電気放電、外部電源系統の変動などがあります。例えば、リレーやモータを停止させた瞬間に発生する逆起電力や、電源を投入した瞬間の突入電流もサージの一種です。
なお、サージ対策では、耐圧だけを基準に設計するのではなく、どれだけのエネルギーが流れる可能性があるのかも考えることが重要です。瞬間的な電圧が高くなくても、電流が大きければ部品は破損しますし、逆に電流が小さくても電圧が高ければ半導体が破壊されることがあります。
そのため、サージ対策では「どれだけのエネルギーを処理する必要があるか」「そのエネルギーをどこに逃がすか」という視点を持つことが重要になります。
サージの侵入経路を整理する

サージ対策を考えるためには、そもそもサージがどのように侵入してくるかを理解しておく必要があります。ここでは、代表的な侵入ルートを解説します。
電源ラインは最も基本的な経路
サージの影響が最も現れやすいのは電源ラインです。電源はすべての回路に接続されているため、電圧変動が発生すると装置全体に影響が広がり、問題となりやすいです。特にスイッチング電源や大電流負荷が接続されている場合には、電流の変化が大きくなり、電源ラインの電圧が不安定になることがあります。
また、電源ラインには配線やパターンの抵抗やインダクタンスが存在するため、急激な電流変化があると電圧降下や電圧上昇が発生します。このような電圧変動は、回路の誤動作やノイズの原因になります。
信号ラインや通信ラインにも過渡電圧は発生する
信号ラインや通信ラインでも、スイッチングや外部接続によって過渡電圧が発生することがあります。例えば、外部機器との接続時に静電気が入ったり、長いケーブルに誘導電圧が発生したりすることがあります。
これらの現象は一時的であっても、ICの入力端子に直接影響を与える可能性があります。特にマイコンや通信ICの入力は耐圧が低いため、わずかな過電圧でも故障につながることがあります。
回路内部でもサージは発生する
サージは外部から侵入するだけでなく、回路内部の動作によっても発生します。スイッチング電源のトランジスタやMOSFETがオンオフする際には、電流や電圧が急激に変化します。このとき、寄生インダクタンスや寄生容量によって過渡的な電圧が発生することがあります。
また、デジタル回路では多数のICが同時にスイッチングすることで、電源ラインに瞬間的な電流が流れ、電圧が揺らぐことがあります。この現象はグランドバウンスや電源ドロップとして知られており、高速回路では特に注意が必要です。
サージ対策の基本思想

このように、サージは様々な要因で入ってくるため対策は一様には語れないものの、基本的な対策思想に沿って対策を行えば、ある程度外れのないサージ対策が行えます。その主な基本思想を紹介します。
エネルギーの流れと電流経路を意識する
サージ対策の本質は、過渡的なエネルギーをどの経路で流し、どこで処理するかを設計することにあります。単に耐圧の高い部品を選ぶだけでは十分ではなく、電流がどの経路を通って流れるのかを明確にし、その経路上に適切な部品や配線を配置することが重要になります。
例えば、サージが電源ラインから侵入する場合には、そのエネルギーが回路内部へ広がる前に、入力部付近で吸収または逃がす構成にすることが基本になります。その際は、サージによって破損しない定格やエネルギー処理能力を持った部品を選定することに加え、その電流が流れ込む先の回路やグランド経路が安全に処理できる構成になっているかも確認する必要があります。
段階的に過渡現象を弱める設計が基本になる
電子回路では、サージを完全に遮断することは現実的ではありません。そのため実際の設計では、サージのエネルギーを一度に処理するのではなく、複数の段階で少しずつ弱めていく構成を作ることが基本になります。
例えば電源ラインでは、まず入力部付近で比較的大きなエネルギーを受け止め、その後の配線やフィルタ部で電流の変化を抑えながらエネルギーを減衰させ、最終的にはICの直近で残った高周波成分を吸収する、といった段階構成が一般的です。
このように、部品の役割を分担させながらエネルギーを順に減衰させていくことで、最終的にICやアナログ回路に到達する過渡現象を十分小さくすることができます。この考え方は、電源回路だけでなく、通信ラインやアナログ信号ラインなどでも共通して適用されます。
部品の配置と配線にも注意する
サージ対策では、部品の種類や定格だけでなく、どこに配置するか、どのように接続するかが性能に大きく影響します。同じ部品を使用していても、配置や配線が適切でない場合には、本来の性能を発揮できないことがあります。
例えば、サージを逃がすための保護部品を回路の奥に配置してしまうと、その手前の配線や部品にサージ電流が流れ込み、十分な保護ができなくなることがあります。また、配線が長くなると寄生インダクタンスが増加し、電流の立ち上がりが遅れて電圧が大きく変動することもあります。
そのため、サージ対策では部品選定だけでなく、回路構成やレイアウトを含めて一体として設計することが重要になります。
対策部品の使い分け

サージ対策には、TVSダイオードやフェライトビーズ、コンデンサなど様々な部品が効果的ですが、それぞれで得意分野が異なるため、適切な使い分けが重要となります。電子回路における代表的な対策部品とその役割を紹介します。
TVSダイオード
サージ電圧から回路を保護する部品として代表的なのが、TVSダイオードです。TVSダイオードは、通常のダイオードと同様の構造を持ちながら、非常に高速に応答するよう設計されており、サージによって一定以上の電圧が発生した際に電流を逃がす役割を担います。
特にICやマイコン、通信インタフェースなどの半導体素子は耐圧の余裕が小さく、瞬間的な過電圧でも破壊に至る可能性があります。TVSダイオードをサージが入る回路に入れておけば、電圧が危険なレベルに達する前に電流を逃がし、回路の電圧を安全な範囲に抑え込む防護壁として機能します。
インダクタ・フェライトビーズ
インダクタやフェライトビーズは、電流の急激な変化を抑えることで、サージ電流やノイズ電流が回路内部へ流れ込むのを抑制する役割を持っています。特に高周波成分に対して大きなインピーダンスを示すため、電源ラインや信号ラインの不要な電流を減衰させる効果があります。
これらの部品は、サージ電圧を直接遮断するものではありませんが、電流の立ち上がりを緩やかにすることで、後段の回路や保護部品に加わる負担を軽減することができます。そのため、TVSダイオードやコンデンサと組み合わせて使用することで、回路全体のサージ耐性やノイズ耐性を高めることができます。
積層セラミックコンデンサ
サージ対策においては、積層セラミックコンデンサも大きな役割を果たします。耐圧は小さめなのでサージを直接保護することはできませんが、過渡的なエネルギーを逃がし、電圧変動を緩和するという意味で回路のサージ耐性を大きく向上できます。
特にICの電源ピン近くに配置することで、瞬間的な電流需要に対応し、電圧の変動を最小限に抑えることができます。このような配置はデカップリングと呼ばれ、デジタル回路やアナログ回路を問わず、ほぼすべての電子回路で基本となります。
電解コンデンサ
電解コンデンサも、サージ対策に一役買っています。直接サージ電圧の遮断は行いませんが、エネルギーを蓄えることで低周波成分の電圧変動を緩和し、回路全体の耐性を支えます。
例えば、サージや負荷の急変によって瞬間的に大きな電流が流れた場合でも、電解コンデンサに蓄えられた電荷が補助的に供給されることで、電源電圧の急激な低下や過度な上昇を防ぎ、ICのリセットや誤動作を起こしにくくする効果があります。
特に、電源ラインでは積層セラミックコンデンサと組み合わせて配置することで、低周波・高周波両方の電圧変動を防ぎ、安定した回路を組むのが一般的となります。
サージ対策におけるレイアウトの勘所

サージ対策は対策部品を入れることも重要ですが、プリント基板における配線や部品配置などのレイアウトを工夫することも同じくらい重要です。ここからは、レイアウトを行う際の勘所について解説します。
コンデンサは対象ICの直近に配置する
デカップリングコンデンサは、対象となるICの電源ピンにできるだけ近い位置に配置することが重要です。これは、コンデンサとICの間の電流経路をできるだけ短くし、瞬間的な電流を遅れなく供給するためです。
距離が離れると配線のインダクタンスが増加し、電流の立ち上がりが遅れたり、電圧変動が大きくなったりすることがあります。その結果、本来コンデンサが吸収できるはずの過渡現象を十分に抑えられなくなることがあります。
そのため、コンデンサは単に回路図上で接続するだけでなく、電流が最短経路で流れる配置になっているかを意識してレイアウトすることが重要になります。
電源とグランドの経路を短く単純にする
電源ラインやグランドラインは、できるだけ短く、単純な経路になるように設計することが重要です。これは、サージ電流が流れる際の抵抗やインダクタンスを小さくし、不要な電圧変動の発生を抑えるためです。
経路が長くなったり複雑になったりすると、配線自体に電圧降下や過渡電圧が発生しやすくなり、回路の誤動作や部品の負担増加につながることがあります。特に大電流が流れる電源ラインや、高速にスイッチングする回路では、この影響が顕著になります。
そのため、電源とグランドは「電流が迷わず流れる単純な経路を作る」という意識で設計することが重要になります。
電流ループを小さくする
電流は必ず往復して流れるため、配線は必ずループを形成します。このループが大きいほど、配線のインダクタンスが増加し、電流が急激に変化した際に不要な電圧が発生しやすくなります。
また、ループ面積が大きいほど外部ノイズの影響を受けやすくなり、逆に回路自身がノイズを放射しやすくなることもあります。これはサージ対策だけでなく、EMC対策や信号品質にも直結する重要な要素です。
そのため、電源とグランドを近接させ、電流が往復する経路をできるだけ短くまとめることで、電流ループの面積を小さくすることが重要になります。この考え方は、電源回路だけでなく、アナログ回路や高速デジタル回路でも共通する基本原則となります。
まとめ
サージ対策は、単に保護部品を追加することではなく、過渡的に発生するエネルギーがどの経路を通って流れ、どこで処理されるのかを設計することに本質があります。そのためには、サージの侵入経路や発生要因を理解したうえで、部品の役割を分担させながら段階的にエネルギーを弱めていく構成を作り、それをレイアウトによって確実に実現することが重要になります。
サージ対策は特別な技術ではなく、電源設計やノイズ対策と同様に、回路全体の信頼性を支える基本的な設計技術の一つです。本記事で紹介した考え方を設計の初期段階から意識することで、より安定した電子回路を構築しやすくなるでしょう。
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