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サージ電圧とは何のこと?種類や周囲への影響、対策方法などを解説!

2023.10.09更新

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この記事を書いた人

機電系専門ライター Div.長谷川

長谷川

FREE AID編集部 機電系専門ライター Div.
アナログ回路設計・営業を経験した後ライター&ディレクターとして独立。
電気電子・ITジャンルを得意とし、正確で分かりやすい情報の発信を行っています。

家電など、身の回りの電子機器は周囲環境によって生じる電気的な外乱にさらされています。中でもサージ電圧は影響が大きく、電子機器が故障する原因となるためさまざまな対策が必要です。今回は、そんなサージ電圧の種類や発生要因、対策方法について解説します。

サージとは

サージとは、送電線や電子回路などにおいて、外的な要因により瞬間的に大電圧、大電流が印加するノイズのことです。瞬間的とはいえ、電子回路における実装部品の耐圧を大きく超える信号が入るため、機器が故障する原因となります。

サージが発生しにくいような対策も行われてはいますが、雷サージなどを始め、発生が止められないサージも多いです。そのため、サージが入っても故障しないよう、機器側で対策を行う必要があります。

サージの種類

サージにはさまざまな要因があり、それぞれでサージの電圧やパルスの時間も変動します。サージの種類と生じる要因、波形の特徴を解説します。

雷サージ

雷サージは、その名の通り雷によって発生するサージです。雷は1億ボルト級の電圧を持ち、圧倒的なエネルギーを有するため、周囲に甚大な影響を与えます。送電線に直接落雷した場合はもちろん、近くに落雷するだけでも電子機器へのダメージは大きいです。落雷の仕方によって3つの種類のサージが印加するため、それぞれのサージに合わせた対策が求められます。

直撃雷

建物自体やアンテナ、建物に入る送電線・電柱に直撃した落雷のことです。雷の持つエネルギーの多くが導体に伝搬し、大きな電磁力が発生することから、建物内の電子機器に致命的なダメージを与えるほか、雷のエネルギーによって建物自体にダメージが入ることもあります。

高層ビルなどでは避雷針による雷の誘導や、雷の電流を地表に上手く逃がす工夫がされていますが、対策が完璧とは言えません。一般住宅などでも可能性は低いものの落雷の危険性はあり、家電等にダメージが入ることもあります。機器ごとの対策にも限界があるため、万が一でも破損を防ぐのであれば、機器を絶縁、もしくはサージを逃がす対策回路をしっかり作りこむ必要があります。

誘導雷

誘導雷とは、近くに落ちた雷から電磁場が発生し、送電線やアンテナ、アース線などに高電圧が発生する現象のことです。誘導雷が発生する範囲は広く、直撃雷よりも発生頻度が圧倒的に高いため、雷サージというとほとんどの場合、誘導雷のことを指します。

誘導雷で発生する電圧は数十kV程度であり、直撃雷よりエネルギーは小さく電流の流れる時間も短いですが、電子機器を破壊するには十分なエネルギーを持っているため、対策は必須です。

逆流雷

逆流雷は、アース(接地)側からサージが入る現象のことです。雷は建物などに落ちると、アースに電流が流れ込み、拡散して消えていきます。ただ、雷が落ちた直後はアースに大量の電流が流れるため、アースの電位も他の場所と比べて高くなります。すると、周囲の電子機器ではアースから電源入力などに電流が逆流し、サージの原因となるのです。

アースは電流容量が非常に大きいため、直撃雷や誘導雷のような電圧は発生しませんが、サージの侵入経路が異なるため、電子機器に予想外の影響を与える可能性があります。

スイッチングサージ

機器をON/OFFするため、電源や信号線にはリレーやトランジスタなどのスイッチが取り付けられていますが、これらのスイッチもサージを発生させます。スイッチングサージが生じる理由は、回路上のインダクタンス成分です。

インダクタンスは電流の変化に対し、変化を妨げる向きに電流を流すのですが、スイッチを遮断すると回路に流れる電流は一気に減るため、インダクタンスは電流を増やすように働きます。しかし、スイッチOFFにより回路が遮断されているため、電流は流れず、行き場のなくなった電荷による高電圧が発生するのです。電圧は数kV程度と雷サージよりは低いですが、特に電源回路ではほとんどの場合スイッチとコイルが接続されているため、回路設計時は高い頻度で対策が必須となります。

ロードダンプ

ロードダンプは、自動車など、発電機(オルタネーター)とバッテリーを使った機器に生じるサージです。自動車の駆動中に、接触不良などでバッテリーの接続が切れた際に生じます。通常、自動車はオルタネーターとバッテリー、駆動部分の負荷が接続された状態で動作しますが、何らかの事情でバッテリーの接続が遮断された場合、オルタネーターの電流量は一気に減少します。

ただ、この場合でもモーターなどにある寄生インダクタンスによって電流を流し続けようとする動きが生じるため、結果的にオルタネーターの出力電圧が一気に上がるのです。こちらは数100V程度の電圧値となりますが、サージの持続時間が長く、通常の対策ではサージを吸収しきれない場合があるため、注意が必要です。

静電気(ESD)

最も日常的に生じる電圧サージは、静電気によるサージ(ESD)です。人はさまざまな要因により帯電しており、電子機器に触れた際に指先などから放電し、電子機器に致命的なダメージを与えます。

静電気によるサージの持続時間はサブミクロン秒と短いですが、数十kV単位の高電圧が印加されるため、影響は大きいです。電子回路自体は筐体で保護されていますが、筐体やコネクタなどに静電気が印加した際、不具合が生じないか確認が必要です。

サージのモード

サージ対策を行う上では、サージのモードを理解することも重要です。ノーマルモード、コモンモードに分類され、それぞれで電流の流れ方が異なるため対策方法も変わります。

ノーマルモード

ノーマルモードとは、サージが電源側から入力し、GNDを通って出ていくサージのことです。電源とGND線に流れる電流が逆方向になることから、ディファレンシャルモードとも呼ばれます。サージによって電源とGND間で電位差が発生するため、電源・GND間にサージ対策部品を入れることで対策できます。

コモンモード

コモンモードとは、電源とGND、両方に同じ電圧が入るサージのことで、外部のアースを通してサージ電流が流れます。電源・GND間には電圧差が生じないことから、これらの間にサージ対策部品を入れても効果がありません。ノイズの経路が分かりづらいため慎重に対策を行う必要があります。

主なサージ対策部品

サージにはさまざまな種類がありますが、サージの電圧や波形に合った対策部品を挿入することで、ほとんどの場合は対策が行えます。ここからは主要なサージ対策部品について解説します。

ツェナーダイオード

ツェナーダイオードは、逆電圧が一定以上になると雪崩電流により抵抗値がゼロになり、導通する半導体部品です。部品のバリエーションが多く回路への影響もほぼないので使いやすいですが、一方向のサージにしか対応していないというデメリットがあります。

バリスタ

バリスタは「variable resistor」の略で、抵抗値を変化させることでサージを逃がす構造の部品です。一定の電圧を超えると一気に抵抗値が下がる部品のため、ツェナーダイオードのようにサージを逃がし、一定の電圧を保てます。バリスタは耐圧が高く、動作電圧のバリエーションも多いため使いやすいですが、寄生容量が大きく、信号の波形が鈍ってしまうことに注意しましょう。

アレスタ

アレスタは、部品内部で意図的にギャップを生じさせ、一定の電圧でアーク放電現象を起こすよう設計することで、電圧を逃がす構造の部品です。バリスタよりも電流容量が大きく、さらに寄生容量がほとんどなく漏れ電流も少ないなどメリットが多いです。

ただ、一度通電すると抵抗値が一気に低下し、電流を止めるまで漏電し続けるため、サージ印加後に正常復帰する回路を組む必要があります。

まとめ

今回は、電子回路が故障する原因となるサージについて、種類や影響の大きさ、対策部品などを解説しました。サージは雷やスイッチング、静電気など生じるメカニズムは解明されていますが、発生を防ぐことは難しいため、電子回路側で対策を行わなければなりません。

バリスタやアレスタなど、メーカーからさまざまな対策部品が販売されていますが、サージの大きさや回路構成により使い分けが必要です。ノーマルモード、コモンモードなどノイズ経路によっても対策箇所は変わるので、サージの原因や経路をしっかり検討した上で対策を行いましょう。

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