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リニアモーターカーに必須の超電導現象とは?原理や物質の例も解説

2023.09.22更新

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この記事を書いた人

機電系専門ライター Div.長谷川

長谷川

FREE AID編集部 機電系専門ライター Div.
アナログ回路設計・営業を経験した後ライター&ディレクターとして独立。
電気電子・ITジャンルを得意とし、正確で分かりやすい情報の発信を行っています。

2027年に開通すると言われているリニアモーターカー。新幹線に比べても大幅に速いこともあり、未来の乗り物として注目している方も多いのではないでしょうか。今回はそんなリニアモーターカーを動かす上で必須の超電導現象について、具体的な物質やその原理について深掘りながら解説していきます。現象は何となく知っている方でも詳しく理解できる内容となってますので、ぜひ最後まで読んでみてください。

超電導の特徴的な現象とは?

早速ですが超電導現象として知られる現象について解説していきます。超電導現象として知られる現象には、その名の通り一定の条件下で電気抵抗がゼロになる現象と、超電導体の中を磁束が通らなくなるようにふるまうマイスナー効果があります。また他にもいくつかの特徴的な特性もあるため、代表的なものを抜粋して紹介します。

電気抵抗がゼロになる現象

超電導と言う名前からも分かるように、特定の条件を満たした超電導体では電気抵抗値がゼロとなります。超電導状態にある物質を流れる電流は損失ゼロで流れるため、ループ回路を構築すれば永久に電流を流すことができます。この現象は超電導体内で生まれる電子対によって説明されます。

一般的に金属中を電流が流れるとき、金属中の不純物原子に電子が衝突したり、電子同士がぶつかり合うことで拡散が発生し、電気の流れを阻害する電気抵抗としてふるまいます。しかし超電導現象下の金属中では電子が互いにペア(電子対)を構成し、多少の阻害要因をものともしない大きな波のように電流が流れます。これにより電流を阻害する電子拡散が起こらない、電気抵抗ゼロの状態が実現するのです。

マイスナー効果と呼ばれる磁気的現象

超電導現象として知られる現象にはマイスナー効果と呼ばれる現象も含まれます。マイスナー効果とは超電導体内部に磁束が一切通らなくなる完全反磁性を示す現象で、磁石から強烈に離れようとするふるまいを見せます。一般的に強磁性体や常磁性体の物質に磁石を近づけると、磁性体内部に磁石と同じ方向の内部磁界が発生して磁化され、磁石と引き合おうとします。

一方、反磁性体の物質に磁石を近づけると、外部磁界とは逆向きの内部磁界が発生して磁石から離れようとします。そして超電導状態にある物質では、加えられた外部磁界を完全に打ち消すべく、磁石と逆向きかつ同じ強さの内部磁界を発生させます。これを完全反磁性と呼び、完全反磁性を示している超電導体を外部から見ると超電導体内には一切磁束が通っておらず、磁石に強烈に反発しているように見えます。

その他の特徴的な現象

超電導現象として知られる現象には、他にもピン止め効果や磁束の量子化、ジョセフソン効果などの特徴的な現象も存在します。例えばピン止め効果とは超電導体内に存在する磁束がピン止めされたように動かなくなる現象で、超電導現象を利用して物質を安定的に浮上させる際に重要な現象です。

また、ジョセフソン効果とは二つの超電導体を用意し超電導現象を発生させたとき、超電導体内の電子対によるトンネル効果によって超電導体間に電位差がなくても電流が流れる現象のことです。超電導現象といった時には電気抵抗がゼロになる現象とマイスナー効果ばかりが注目されがちですが、他にも特徴的なふるまいを示すことを覚えておきましょう。

超電導物質は2種類に分かれる

超電導物質と一口に言っても、厳密には特性の違いから第一種超電導体と第二種超電導体の2種類に分かれます。前提として、超電導状態になっている物質へ臨界値を超える強力な磁界を与えると、超電導状態が壊れて内部に磁束が入り込みます。

そして第一種超電導体と第二種超電導体では臨界磁界以上の磁界を与えた時の磁束の侵入の仕方が異なり、第一種超電導体では臨界値を超えたら即座に磁束が侵入するのに対し、第二種超電導体では徐々に磁束が侵入し、超電導状態が起きている部分と起きていない部分(通称、常電導状態)が混在するようになります。

ピン止め効果などの特徴的な現象も第二種超電導物質ならではのふるまいで、身の回りで実用化されている超電導技術の多くが第二種超電導体によって実現しています。

超電導現象が発生する温度と物質

超電導現象は特定の物質を特定の温度まで冷やすことで発生します。ここでは超電導現象が起こる温度や代表的な物質について解説していきます。

超電導現象を起こすための臨界温度

物質が超電導現象を引き起こす時の最高温度は臨界温度と呼ばれ、アルミニウムを例に取ると臨界温度は絶対零度に近い1.2K=-271.95℃です。一般的な金属では温度が高くなると電子の拡散が促進され、温度が低くなると拡散が抑制されます。

既に説明したように電子の拡散は電気の流れを阻害する抵抗としてふるまうため、金属を冷却して温度を下げていけば電子の拡散は抑制され、抵抗値も下がっていきます。そして絶対零度付近では電子の拡散が強く抑えられるうえ、先に説明した電子対も構築されるため、電気抵抗なく電流が流れ続ける超電導状態となります。

超電導現象を起こせる物質

超電導現象は全ての物質で起こるわけではないものの、多くの金属で発生することが確認されています。超電導物質の代表例としては、水銀、ガリウム、アルミニウム、亜鉛、鉛、ニオブ、チタンなどがあり、最近では銅酸化物を含んだ高温超電導物質としてイットリウム系超電導体やビスマス系超電導体も注目されています。なお、一般的に常温で導電性の高い金属は超電導現象が起こらないと言われており、金や銀、銅などの金属では超電導現象が起きません。

超電導現象の歴史と展望

一般的に知られている極低温での超電導現象は20世紀初頭に発見されました。金属の抵抗値は温度に対する正の相関があるため、極低温状態での超電導現象は以前から予測されていました。そして1911年にオランダの物理学者が電気抵抗がほぼゼロになる現象を、1933年にはドイツの物理学者がもう1つの特徴とも言えるマイスナー効果をそれぞれ発見し、以降も各地で超電導現象に関する実験が活発に行われます。そしてついに1957年に3人の科学者がBCS理論を提唱し、一連の不思議な現象が超電導現象として理論的に説明がつくようになったのです。

高温超電導物質の発見

1980年代には液体窒素の温度である77K以上で超電導を示す高温超電導体が発見され、さらなる技術の発展に注目が集まっています。従来の低温超電導現象を起こすには液体ヘリウムを使って温度を冷やす必要があり、臨界温度に達するまでに労力やコストがかかるのはもちろんのこと、超電導状態を安定的に維持するのも大変でした。

しかし安価で手に入りやすい液体窒素を使って超電導状態を作れるとなると、臨界温度への到達コストや労力が大幅に低下するだけでなく、超電導状態の維持も容易になります。これにより実用化レベルの技術として超電導現象は大きく発展し、この後紹介する様々な応用例に活用されるようになりました。また、最近では常温で超電導現象を引き起こす室温超電導体が発見されるなど、今後のさらなる技術革新に期待が持たれています。

超電導を活用した技術の例

超電導現象は多くの最新技術に応用されています。まず最も知名度が高いと言えるのが2027年に開通予定のリニアモーターカーです。リニアモーターカーは車両本体に取り付けた超電導コイルが生み出す磁界によって浮力と推進力を得て走行する車両で、試験的には時速600km以上ものスピードが観測されるなど、新幹線よりも速い乗り物として注目されています。

また、超電導現象による電気抵抗ゼロを利用した技術として損失のない超電導ケーブルも注目されており、高温超電導体を導体として使用すれば理論上送電損失なく長距離に亘って送電できます。専用の冷却装置を設ける必要があるなど課題が残るため、現時点では実用化の目処が立っていないものの、2012年には国内で実地検証が開始されるなど近い将来実用化される可能性の高い技術の1つと言えます。

まとめ

今回は電気抵抗ゼロやマイスナー効果に代表される特殊な現象を生み出す超電導現象について解説してきました。何となく聞いたことはある人でも、具体的な原理や物質の特徴までは知らなかった人も多かったと思います。近年では常温超電導体が発見されるなど今後ますます発展する可能性を秘めた技術ですので、応用事例や細かい原理に興味を持った方はぜひ詳しく調べてみてください。

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