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  • 焦電型赤外センサに使われる焦電素子とは?原理や用途も解説!
  • 焦電型赤外センサに使われる焦電素子とは?原理や用途も解説!

    2024.08.22更新

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    この記事を書いた人

    機電系専門ライター Div.長谷川

    長谷川

    FREE AID編集部 機電系専門ライター Div.
    アナログ回路設計・営業を経験した後ライター&ディレクターとして独立。
    電気電子・ITジャンルを得意とし、正確で分かりやすい情報の発信を行っています。

    焦電型赤外センサというセンサを聞いたことがあるでしょうか。人体から出る赤外線を測定して人の検知などに利用されるセンサですが、このセンサには焦電素子と呼ばれる素子が欠かせません。そこで今回は焦電素子について基本的な原理や具体的な構造、焦電素子を使った温度測定における注意点などを解説していきます。

    焦電素子が温度を測定する原理

    まずは、焦電素子がどのように温度を測定できるか解説します。焦電素子は誘電体の一種です。誘電体とは絶縁体と同様に通常では電気を通さない物質であるものの、外部から電場を与えると内部が電気的に正負に分かれる分極を引き起こす性質を持ちます。また、誘電体の中には外部電場を与えなくとも内部分極が発生しているものがあり、これこそが焦電素子と呼ばれる物質です。

    内部分極が起こっている焦電素子の表面は常に帯電しているものの、大気中の浮遊電子が引き寄せられて結びつくことで、巨視的には電気的に安定しています。しかし、外部から赤外線が放射されると物質表面の分極状態が変化し、自由電子とのバランスが崩れ、焦電体表面が正または負に帯電する焦電効果が起こります。

    この瞬間的な分極の乱れによる電荷を測定することで、結果的に照射された赤外線および熱源の表面温度を測定するのが、焦電素子を用いた温度測定の原理です。ちなみに赤外線が照射された状態で時間が経つと、浮遊電子が再度焦電素子の表面に結びついて電気的に安定するため、焦電素子による温度測定は静止物体の温度測定ではなく、温度が変化している部分の測定に向いています。

    焦電型温度センサの具体的な構造について

    焦電素子を使った温度センサは、焦電体を適切な大きさにカットした焦電素子に加えて、検出用のゲート抵抗や電界効果トランジスタ(MOS FET)、信号選択性を高める光学フィルタなどによって構成されています。焦電効果によって生じる電荷の乱れは電流信号として検出できるものの、生じる電流値があまりに小さく、直接的な測定は困難です。

    そこでゲート抵抗と呼ばれる抵抗を焦電素子に接続し、微弱な電流信号を高い電圧信号へと変換します。また、例え電圧信号に変換したとしても元々の信号自体が微弱なため、電圧信号を測定回路へ導く際のわずかなリーク電流が測定誤差の原因となります。そこで、さらに入力抵抗が大きいMOS FETを検出素子として接続し、焦電素子が生み出した電荷の乱れをソース端子に生じる電圧の変化として検出します。

    基本的に焦電素子を用いた焦電型温度センサは上記の構成によって成立しますが、このままではいかなる波長の赤外線に対しても一定の感度を持つため、希望する測定物以外の温度変化まで敏感に検知してしまいます。そこで、一般的には測定したい赤外線波長に応じた光学フィルタを焦電素子近くに取り付け、赤外線波長に対する選択性を持たせます。例えば人体の温度検知に特化する場合、人体の温度変化が生み出す赤外線波長が概ね9.4μm付近のため、その辺りの波長を選択的に受光する光学フィルタが使用されます。

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    焦電素子を使った温度測定の注意点

    焦電素子を使った温度センサを使用する場合、これから説明する3つの点に注意が必要です。正しく測定するためにも内容を覚えておきましょう。

    注意点①:測定物の状態について

    焦電型センサによる温度検知は温度変化や動いている物体の検知には適しているものの、温度が変化しない静止物体の温度測定には向いていません。焦電体では赤外線の放射により内部分極が乱れたとしても、長時間赤外線の放射量が安定していると浮遊電子によって表面電荷が中和され、焦電効果が見られなくなってしまうからです。

    また、たとえ測定対象物が動いていたとしても、動作速度が速すぎるのも遅すぎるのも良くない上、動作が大きすぎても検知しづらいです。焦電型温度センサの使用を検討する際は、測定対象が動くのか否か、動作の速度も含めて確認しましょう。

    注意点②:測定する環境について

    赤外線は温度を持つ全ての物体から放射され、温度が高くなるほど放射量も増えるため、センサの測定範囲に日光や暖房器具などの高温物が存在していると誤動作を招く恐れがあります。日光の影響を受ける屋外での測定や近くに高温物が存在する環境での測定は避けましょう。

    また、測定対象物との間にアクリルやガラスがある場合の測定も控えましょう。一見すると透明なガラス類は可視光線を通すため、赤外線への影響もないと考えるかもしれませんが、遠赤外線など波長の長い赤外線になるほど透過率が下がる傾向にあるため、透明であっても、何らかの障害物越しの測定はできないと覚えておきましょう。

    注意点③:測定器の特性について

    一般に販売されている焦電型温度センサを使用する場合は、機器ごとの特性も理解して使用する必要があります。例えばセンサの投射方向に対して垂直方向(奥行き)の動作検知が苦手で、水平方向の動きに特化しているなど、機種によって得意な検知方向が決まっている場合が多いです。

    設置する場所や測定対象の動きを考慮して適切なものを使用しましょう。他にも電源を入れてから起動にかかる時間も機種によって異なるポイントの1つです。市販の焦電型温度センサを購入する際は、機器の特性や使い方を取扱説明書などでしっかり読んでから買うようにしましょう。

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    焦電素子の具体的な用途や使い方

    焦電素子が実際に使用される場面は、既に説明した通り赤外線を感知するセンサとしての利用がほとんどで、特に人体の動きを検知する人感センサとしての利用が多いです。注意点の部分でも触れましたが、焦電型温度センサは定常状態での温度測定には不向きで、温度変化の感知が得意です。

    そのため、単純な非接触型の温度計としてではなく、人体のように周囲より熱を持つものを感知する用途として、暗闇で電気を点灯させるためのスイッチや監視カメラの警報用として使用される事が多いです。

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    焦電型温度センサの代表的な種類と特徴

    焦電型温度センサには構成と精度の違いからいくつかのタイプに分けられ、代表的なタイプは焦電素子が1つだけのシングルタイプ、焦電素子を2つにしたデュアルタイプ、焦電素子を4つに増やして精度を高めたクワッドタイプなどがあります。例えばシングルタイプであれば、火炎の状態を監視する火炎検知器など、火が着いたかあるいは消えたかを判別する単純な温度センサとしての利用が多いです。

    また、素子が2つに増えたデュアルタイプなら、互いの素子が生み出す信号を打ち消すように回路を構成することで、部屋の照明や太陽などの測定環境そのものの温度変化は感知しない一方で、センサ前を横切る人体のように動きのある物体を検知する高精度なセンサとして利用されます。更に、素子数を4つに増やすことで精度を上げたものがクワッドタイプです。これらは用途や求められる精度によって最適なものが変わるので、実際に購入時に改めて検討するのが良いでしょう。

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    まとめ

    今回は赤外線を照射することで一時的な帯電を引き起こす焦電素子について、具体的な仕組みや用途などを解説してきました。そもそも誘電体の中で常時分極が発生しているものが焦電体と呼ばれることを初めて知ったという方も多いと思います。

    また、温度に起因する赤外線を測定することでシンプルに物体の表面温度を測れるのはもちろんのこと、温度変化を捉えることで暗視カメラや人感センサといった様々な用途で使用されていることが分かったと思います。今回の内容で興味を持った方はぜひ他の記事も読んで勉強してみてください。

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