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突入電流対策とは?回路設計者が知っておきたい設計手法を解説

                   

2026年6月26日更新

この記事を書いた人

機電系専門ライター Div.長谷川
「FREE AID」編集部:長谷川

大手メーカー「コマツ」、「オムロン」などで7年間、アナログ回路エンジニアとして設計・評価業務に従事。
ECU、PLCなどのエレキ開発経験を多数持つほか、機械商社での就労経験も有する。
株式会社アイズ運営の機電系フリーランスエンジニア求人情報「FREEAID」専属ライターとして、
機電分野の知識と実務経験を活かし、専門性の高い記事執筆を行っている。

突入電流対策は、NTCサーミスタやソフトスタート機能などを用い、電源投入時などに発生する一時的な大電流を抑えながら、通常動作に必要な電流は損なわないよう設計することが重要です。本記事では、電子回路設計者を対象に、突入電流の発生メカニズム、設計時に考えるべきポイント、対策部品の選定方法までを実務目線で解説します。

突入電流とは?

突入電流とは

突入電流とは、電源投入時や負荷を接続した瞬間に、一時的に通常動作時を大きく超える電流が流れる現象です。継続時間は数十マイクロ〜数十ミリ秒程度と短いものの、そのピーク値は定常電流の数倍から数十倍に達することも珍しくありません。
代表的な例として、スイッチング電源の入力コンデンサを充電する際に流れる電流や、モータやトランスを起動する際の電流が挙げられます。これらはいずれも正常動作の一部として発生する現象ですが、大きな電流が瞬間的に流れるため、電源や部品に大きな負荷を与えます。

そのため突入電流対策では、瞬時電流がどこまで大きいか、どれくらいの時間継続するのかを考慮し、回路に影響がないよう対策することが重要になります。

突入電流が発生する理由

突入電流が発生する理由

突入電流は、電圧が印加された瞬間にエネルギーを蓄積する素子へ一気に電流が流れ込もうとすることで発生します。そのため、回路内でエネルギーを蓄える部品ほど突入電流の原因になりやすくなります。

最も代表的なのがコンデンサです。電源投入直後のコンデンサは電圧がほぼ0Vであり、充電が完了するまでの間は短絡に近い状態となります。このため、一時的に電源から非常に大きな電流が流れ込みます。特にスイッチング電源では大容量の平滑コンデンサが使用されることが多く、突入電流も大きくなりやすい傾向があります。

また、モータでは起動直後は回転していないため逆起電力が発生せず、巻線抵抗によって電流が決まるため、通常運転時よりも大きな電流が流れます。トランスについても同様に、投入タイミングによっては鉄心が一時的に磁気飽和し、大きな励磁電流が流れることがあります。

このように、発生する理由は機器によって異なりますが、いずれもエネルギーを蓄える過程で一時的に大電流が必要になるという点が共通しています。

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突入電流対策の基本思想

突入電流対策の基本思想

突入電流対策では、電流を完全になくすことではなく、ピーク電流を抑えながら必要なエネルギーを安全に供給することが基本になります。例えばコンデンサは最終的に必要な電荷を蓄える必要があるため、流れる電荷の総量そのものは変わりません。

そのため、「流れる電流を減らす」のではなく、「同じエネルギーを少し長い時間をかけて供給する」という考え方が重要です。また、単純に抵抗を直列に挿入すると通常動作時にも電圧降下や発熱が生じるため、実際の電源設計では起動時だけ電流を制限し、定常動作ではできるだけ損失を増やさない構成が一般的です。

抵抗をバイパスする方式やソフトスタート機能などは、この考え方に基づいた代表的な方法です。このように、突入電流対策では、起動時のピーク電流を抑えつつ、通常動作への影響を最小限にすることが重要になります。

代表的な突入電流対策

代表的な突入電流対策

次に、突入電流対策として実際によく用いられている手段と、その特徴を紹介します。

NTCサーミスタを使用する

NTCサーミスタは、温度が低いときには抵抗値が高く、温度が上がると抵抗値が低下する特性を利用して突入電流を抑える部品です。電源投入直後は高い抵抗によって電流を制限し、自己発熱によって抵抗値が低下すると、通常動作時の電力損失を小さくできます。

主にAC入力を持つスイッチング電源や電源装置の入力部で使用されており、整流後の大容量平滑コンデンサを充電する際の突入電流対策として一般的になっています。一方、DC電源回路では、ソフトスタート機能やMOSFETを用いた電流制御が採用されることが多く、NTCサーミスタが使われる頻度は少ないです。また、一度温まると抵抗値が低下したままとなるため、短時間で再投入する用途には適しません。

抵抗とリレーを組み合わせる

電源投入時には抵抗を介してコンデンサを充電し、一定時間後にリレーで抵抗を短絡する方式です。起動時のみ電流を制限できるため、通常動作時の電圧降下や発熱をほとんど発生させずに済みます。

大容量電源や産業機器など、比較的大きな突入電流が発生する装置で広く採用されています。リレーの制御回路が必要になるため回路規模はやや大きくなりますが、大電力用途でも安定した突入電流対策を実現できます。

ソフトスタート機能を利用する

DC-DCコンバータやスイッチングレギュレータには、出力電圧を徐々に立ち上げるソフトスタート機能を備えたものがあります。急激な立ち上がりを防ぐことで、コンデンサへの充電電流を抑え、突入電流を低減できます。

追加部品をほとんど必要とせず実現できるため、DC電源回路では最も採用しやすい対策方法の一つです。ただし、この方法は主にDC-DCコンバータの出力側で発生する突入電流に有効であり、AC入力部の大容量平滑コンデンサに流れる突入電流には適用できない場合があります。

突入電流設計で確認したいポイント

突入電流設計で確認したいポイント

最後に、突入電流対策を行う際、特に確認しておくべきポイントを紹介します。

コンデンサ容量は必要最小限にする

平滑コンデンサは容量が大きいほど電源電圧の変動を抑えられますが、その一方で、充電時の突入電流も増加します。十分な余裕を持たせることは重要ですが、必要以上に容量を大きくすると、突入電流対策が難しくなるだけでなく、部品コストや実装面積も増加します。

そのため、リップル電圧やホールドアップ時間などの要求仕様を満たしたうえで、必要最小限の容量を選定することが望まれます。

電源全体のインピーダンスを考慮する

突入電流は、コンデンサの容量だけで決まるものではありません。電源の内部抵抗やケーブルの抵抗、配線抵抗、コネクタの接触抵抗など、電流経路全体のインピーダンスによっても大きく変化します。

例えば、試験では問題なく動作していた回路でも、内部抵抗の小さいバッテリーに接続すると想定以上の突入電流が発生することがあります。一方で、長いケーブルを介して接続した場合には、配線抵抗やインダクタンスの影響によって電流の立ち上がりが緩やかになることもあります。

そのため、回路単体だけで評価するのではなく、実際の使用環境まで含めた電源系全体として検討することが重要です。

電源側の供給能力を確認する

突入電流が問題となるかどうかは、負荷だけではなく、電源側の供給能力にも左右されます。同じ突入電流であっても、十分な余裕を持つ電源ではほとんど影響がない一方、小容量のACアダプターやバッテリーでは電圧降下が発生し、起動不良の原因となることがあります。

また、複数の電源回路や負荷が同時に立ち上がると、それぞれの突入電流が重なり、瞬間的に非常に大きな電流が流れる場合があります。このようなシステムでは、起動タイミングをずらすシーケンス制御を導入することで、電源への負荷を分散できることがあります。

このように、設計においては個々の回路だけを見るのではなく、システム全体として起動時の電流が電源の供給能力を超えないよう、確認しておくことが重要です。

最悪条件で評価する

突入電流の大きさは、それまでの回路の動作状況にも影響を受けます。例えば電源電圧が高い場合や、コンデンサが完全に放電された状態から投入した場合には、通常よりも大きな突入電流が発生します。

また、NTCサーミスタを使用する場合は、起動直後と十分に時間を置いた後で抵抗値が大きく変化するため、評価条件として考慮する必要があります。このように、動作条件によって突入電流が変わるため、設計段階では最も厳しい条件で電流波形を測定し、電源や保護部品がどのような状態でも正常に動くよう、確認することが重要です。

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まとめ

突入電流は、電源投入時などに一時的に発生する大電流であり、電源や部品に大きな負荷を与える要因となります。そのため設計では、ピーク電流を抑えながら必要なエネルギーを供給し、通常動作への影響を最小限にすることが重要です。

対策方法には、NTCサーミスタや抵抗とリレーを組み合わせる方式、ソフトスタート機能を利用する方式などがあり、回路構成や用途に応じて適切に選択する必要があります。コンデンサ容量や電流経路全体のインピーダンス、電源側の供給能力を考慮するとともに、最悪条件で評価を行うことで、安定した電源設計が行えるでしょう。

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