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EMC(電磁両立性)とは?規制の種類や対策方法などの概要を伝授

2023.10.09更新

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この記事を書いた人

機電系専門ライター Div.長谷川

長谷川

FREE AID編集部 機電系専門ライター Div.
アナログ回路設計・営業を経験した後ライター&ディレクターとして独立。
電気電子・ITジャンルを得意とし、正確で分かりやすい情報の発信を行っています。

電子機器の設計や試作に関わると、EMCという言葉を所々で聞くと思います。しかし、そもそもEMCがどんな内容で、何に注意しなければならないかについては意外と分かりにくいのではないでしょうか。そこで今回は、EMCの意味や種類、対策内容などの概要を分かりやすく紹介します。

EMCとは

EMCは「電磁両立性」の略で、電子機器が周囲に電磁波ノイズを出さず、かつ周囲の電磁波ノイズによって悪影響を受けない性能のことを指します。元々は無線通信における干渉を防ぐために考案された概念であり、基地局が発する電波を規制する目的で使われました。しかし、近年になってあらゆる所に電子機器が使われ出したため、これらが干渉し合い、誤動作の原因とならないように規制することが主な目的となっています。

今では、EMCの規制はあらゆる電子機器に対して適用されています。規制によって一定以上のノイズを発生しないこと、一定のノイズで誤動作しないことを担保することで、世間でノイズによる問題が発生するのを防いでいます。

EMC規格の地域ごとの違い

EMCへの規制については、世界各国でさまざまな規格を制定して対応しています。特に中心となるのは国際的な規制である「CISPR(国際電波干渉規制)規格」と「IEC(国際電気標準会議)規格」です。他にも、アメリカのFCC規格、ヨーロッパのEN規格、日本のVCCI規格といった形で国ごとの規制も行われており、これらの規格を満たさないと製造や輸出などが行えないようになっています。

なお、製品において重要なのは、想定される状況内で不具合を起こさないことなので、企業は独自規格を制定し、EMC規格より厳しい条件下で試験を行うことが多いです。そのため、設計側として参加する際は、企業や製品ごとにどのような規格を定めているか確認する必要があります。

EMCの種類

EMC規格はノイズの送信側としての性能を「EMI」、受信側としての性能を「EMS」と分類し、それぞれで試験を行っています。これらの違いや試験内容について概要をお伝えします。

EMI(エミッション)

EMIは「エミッション」とも呼ばれ、電子機器が放射するノイズが一定基準内に収まることを確認する規格です。電子機器が加害者として、周囲の機器に悪影響を与えないようにするのが目的です。出力されるノイズには、電子機器本体から電波が放出される場合と、ケーブルを通してノイズが伝搬される場合がありますが、EMIでは両方のノイズに対する規制が行われています。

ノイズが生じる原因としては、電子機器に搭載されたリレーやスイッチングレギュレータ、CPUのクロックなどが主に挙げられます。機能上部品を取り除くのは難しいため、シールド性能を向上させるほか、対策部品の挿入、動作周波数の変更などで対策を行うことが多いです。

なお、EMI試験はアンテナを配置した電波暗室で行われ、電子機器を動作させて30〜1000MHzといった周波数のノイズ強度を測定します。製品を様々な角度や動作モードにして何度も測定し、あらゆる状況で強いノイズを出さないことが求められます。

EMS(イミュニティ)

EMSは「イミュニティ」とも呼ばれ、ノイズによって電子機器が誤動作しないことを確かめる規格のことです。電子機器本体に照射される電波への耐性はもちろん、静電気によるノイズや、ケーブルから伝搬するサージ電圧などへの耐性も、EMSに含まれます。

EMIとは異なり、製品が置かれる環境によってノイズ強度が変わるので、どの程度のノイズを想定するかといった定義も重要です。また、どの部分からノイズが入っているかが可視化できないことから、対策が非常に難しい試験でもあります。

なお、EMS試験はEMI試験と同様に電波暗室で行われ、アンテナから30〜1000MHzなどの電波ノイズを照射して動作異常の有無を確認します。サージ電圧や静電気についても、それぞれのノイズ発生器を使い、指定条件でノイズを与えて試験を行います。

EMCの対策方法

電子機器のEMC性能は非常に多くの要素が複雑に影響し合って決定するため、対策は簡単ではありません。ただ、主流となっている対策方法はいくつか存在するため、それらについて紹介します。

シールド性能を向上させる

最もシンプルな対策方法としては、電磁シールドを使用し、電子機器の内外から飛んでくる電波を遮る方法があります。金属筐体で電子機器を丸ごと覆うのはもちろん、コネクタなどの開口部にカバーを入れる、ケーブルにシールド線を使うなどといった対策も有効です。

製品のコストが上がるという難点こそありますが、電子回路の設計を変えずにすみ、大きな効果が得られることから、非常に多く採用される方法です。

GNDを強化する

電子機器のGNDは、電圧の基準となるだけでなく、ノイズ電流が逃げる先として重要な役割を果たします。ここで、GNDが脆弱だとノイズ電流が十分に流れず、基準電圧が不安定になることで、予期せぬ不具合の原因となることが多いです。

このような現象は電子機器内のGNDパターンが狭いことや、接続先のGNDが脆弱であることなどが原因で起きるので、GNDを太く、強くすることでノイズ性能を大きく向上できます。

パターンや配線の長さを調整する

特定の周波数を持ったノイズのみに影響を受ける場合は、銅箔パターンやケーブルにノイズが共振し、ノイズが増幅されている可能性があります。この場合、パターンなどの長さを調整すれば共振は防げることが多いです。

また、エミッション試験の場合は、マイコンなどのクロックとパターンが共振し、ノイズが増幅されることもあります。その場合はマイコンの動作周波数などを変更するといった対策が有効です。

部品を追加してノイズを吸収する

上記のような対策でノイズ自体を減らしても対策が不十分な場合は、ノイズを吸収するような部品を追加する方法が有効です。インダクタやコンデンサ、抵抗などでフィルタ回路を作るのはもちろん、回路上やケーブル上にフェライトコアを配置するといった方法が効果的です。

まとめ

今回は、電子機器におけるEMC(電磁両立性)について紹介しました。EMCは電波ノイズに関する規格で、電子機器がノイズを放出せず、外部ノイズで壊れないことを確かめるために用いられます。

電波は目に見えず、不具合が発生する原因にもさまざまな種類があるため、EMCの対策は容易ではありません。しかし、ある程度共通した対策方法は存在するため、EMCに関わる時は色々な対策を試してみることをおすすめします。

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