ディスクリート部品とは?種類やモジュールとの違い、市況について
2023.10.09更新
機電系エンジニア必見!!貴重なフリーランス案件はこちら ▶電子回路用の部品を扱っていると「ディスクリート部品」「ディスクリート半導体」という単語を聞く機会は多いですが、何の部品を指すか分からない人もいるのではないでしょうか。本記事では、ディスクリート半導体の意味や、どの電子部品が当てはまるのかを解説します。
ディスクリート部品とは
まずは、ディスクリート部品が何を指しているか解説します。
単一の機能を持つ電子部品
ディスクリート部品は「個別部品」とも呼ばれ、単一の機能を持った電子部品のことです。一つ一つの部品を樹脂でパッケージングし、電子回路に接続するための端子を取り付けた形状をしています。部品の形状は、基板実装用のチップ部品と、基板に端子の足を挿して使うリード部品に分かれます。
最も基本的な機能を持つ分、さまざまなディスクリート半導体を組み合わせることで、自由自在に電子回路の機能を生み出せるのが特徴です。1つの回路に数十個以上使われるため、部品は大量生産によって作られ、またメーカーが変わっても使い回せるようにパッケージや機能が共通化されていることが多いです。ちなみに、ディスクリート半導体はダイオードやトランジスタなど、半導体を使った能動素子に限られますが、ディスクリート部品は抵抗やコンデンサなどの受動素子も含まれます。
モジュールとの違い
ディスクリート部品と対になる電子部品は、モジュールと呼ばれます。モジュールは、単一の目的を実現するため、複数のディスクリート部品を組み合わせて接続し、パッケージングした部品です。モジュールはディスクリート半導体のような自由度はなく、目的に合致したものしか使えませんが、その分サイズが小さくなり、モジュールの性能が担保されているため、設計にかかる手間も減るといったメリットもあります。
ICやLSIを始め、モジュール部品は微細化が進んでおり、ナノメートル単位のディスクリート半導体が大量に内蔵され、ディスクリート部品だけでは得られない高い性能を実現しています。
ディスクリート部品の種類
続いて、主なディスクリート部品の種類を紹介します。
抵抗
抵抗値の高い金属を使い、流れる電気エネルギーを熱として放出するディスクリート部品です。最も基本的な部品であり、電源の分圧、電流の制限、電流値を測るシャント抵抗など、幅広い用途で利用されています。
コンデンサ
コンデンサは金属板を平行に配置し、間に絶縁体を挟むことで、電荷を貯えるディスクリート部品です。蓄電、電圧変動の抑制、サージ吸収などの用途として、抵抗と同様にあらゆる電子回路で使われています。交流電流は通し、直流電流は絶縁する機能も持っており、ハイパスフィルタとしても使えます。
コイル
コイルは、導線を何重にも巻いた形状のディスクリート部品です。巻線に電流を流すと磁界が発生することから、電気エネルギーを磁束に変換して蓄積できるのが特徴です。また、交流電流が流れると、発生した磁束が電流を妨げるように作用するため、ローパスフィルタとしての役割も担います。抵抗・コンデンサと組み合わせてさまざまなフィルタ回路に用いられます。
ダイオード
ダイオードは、回路の電流を一方向にのみ流し、逆方向の電流をさえぎるために使われるディスクリート部品です。順方向電流のみを取り出す整流回路に使われるほか、電波から音声信号を取り出す検波回路などに使われます。また、電流を光に変換するLEDや、逆電圧を一定に保つツェナーダイオードなど、特殊なダイオードもあります。
トランジスタ
トランジスタは、信号のスイッチングや増幅器として働く半導体です。電子回路の小型化に大きく貢献した部品であり、今ではIC内部にナノメートルサイズのトランジスタが形成されるまでに至っています。主にバイポーラトランジスタ、MOSFET、IGBTに分類されており、用途に応じて使い分けを行います。
サイリスタ
サイリスタは、ダイオードにスイッチ制御を行うゲート端子を付けた電子部品です。バイポーラトランジスタを2つ接続したような構造となっており、ゲート電圧をスイッチとして、一度ゲート電圧を掛けると電流が流れ続ける、保持(ラッチ)回路としての機能を持っています。サイリスタにはトランジスタのような増幅機能こそありませんが、大電流回路におけるスイッチ用途として幅広く用いられています。
イメージセンサー
イメージセンサーは、人間の眼のように、光を電気信号に変換する機能を持った半導体です。受光素子に光を受けることで電荷を発生させ、その電荷を取り出すことで電気信号を生み出します。CCDやCMOSが主流であり、デジタルカメラには欠かせない存在です。
ディスクリート部品の市況
半導体の市場は頭打ちとなっていますが、ディスクリート部品・半導体は需要が伸び続けており、技術開発も盛んに継続されています。そんなディスクリート部品の市況や将来の展望について記載します。
小型化が進む
ディスクリート部品は、マウンターや人の手により実装を行うことや耐熱性の問題から、ある程度のチップサイズを有しているのが通常です。しかし、電子回路の小型化・高密度化への要求は高まっており、今では米粒より小さなチップサイズの部品も多数登場しています。また、今後もさらなる小型化が進むことが予想されます。
ディスクリート部品の市場は成長中
ディスクリート部品は目立たない存在ですが、頭打ちが続く半導体市場において、堅実に成長を続けています。その理由には、あらゆる電子回路に使われており、高機能化に伴って製品あたりの部品点数が増えていることがあります。
特に顕著なのが、5G通信の普及に伴って、日々やり取りされる情報量が爆発的に増加することです。データを蓄積するデータセンターや、モノのインターネットと呼ばれるIoTデバイスの需要が非常に増加するため、ディスクリート部品の需要もそれに合わせて増加するでしょう。
パワー半導体の成長が顕著
ディスクリート部品の需要が増加している分野の一つに、電気自動車や電力など大電力を扱う業界がありますが、これらの分野ではパワー半導体の需要が特に高まっています。パワー半導体とは、SiCやGaNなどの材料を使い、大電力分野の性能を向上させた半導体のことです。主にバイポーラトランジスタ、パワーMOSFET、IGBTとして使われています。
パワー半導体はまだまだ発展途上の技術であり、今でも世界中の企業が開発に力を入れています。現在は日本勢が世界トップのシェアを持っていますが、各国が性能向上とコスト低減に取り組んでいるため、これから電気自動車や電力、通信、産業機器から家電まで、さまざまな電子機器に搭載され、消費電力の低減が実現すると期待されます。
まとめ
今回は、ディスクリート部品の意味や、該当する部品の種類を中心にお伝えしました。ディスクリート部品は一つの機能しか持ちませんが、その分汎用的に電子回路を設計できることから、電子回路の設計には欠かせない存在です。ディスクリート部品は需要が高まり続けており、更なる小型化や、パワー半導体による効率向上など、さらなる技術革新も期待されます。最新の動向を把握し、最適な部品選定を行いましょう。
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