磁石の着磁とは?原理や消磁との違いなどを解説!
2024.08.27更新
機電系エンジニア必見!!貴重なフリーランス案件はこちら ▶磁石を作る際に「着磁」を行うことは広く知られていますが、なぜ行う必要があるのかや、どうやって磁石になるのか詳しく知らない方も多いと思います。そこで本記事では、着磁の原理や消磁との違いなどについてわかりやすく解説します。
磁石の着磁とは
まず前提として、磁石の着磁とは何かを解説しましょう。磁石は鉄などの強磁性体で作られていますが、元々の鉄が金属を引き寄せたりしないように、初めから磁石としての性質を持つわけではありません。そんな強磁性体に磁石の性質を持たせるため、別の磁石などで磁力を与えるのが着磁です。磁力を与えることで自身が磁石の性質を持つようになることから、「磁力を着ける」という意味の着磁という名前が付けられています。
着磁の原理
それでは、なぜ着磁によって金属が磁石の性質を持つようになるのかを詳しくお伝えします。
磁石の源はスピンによる磁気モーメント
まず、磁石の磁力の源が何かという所から解説しましょう。その答えは、電子がもつ「スピン」にあります。スピンとは電子が持つ状態の一つで、「電子の自転」と呼ばれる現象のことです。スピンがどんな現象かは正確には分かっていないものの、電子のスピンにより磁気モーメントが発生していることは証明されています。
ここで、通常の物質であれば「電子が必ず対になって存在する」という原子の特性により、スピンによる磁気モーメントは対になる電子によって相殺され、ゼロになります。しかし、金属原子は特別に対を持たない不対電子が存在するため、この磁気モーメントが磁石としての性質を持ちます。
着磁によりバラバラな方向を向いた磁気モーメントが一つに
金属原子が持つ磁気モーメントが磁力の源だとお話しましたが、通常は熱振動によって電子の方向はバラバラに散らばっています。スピンから生じる磁気モーメントもバラバラな方向を向いているので、全体では磁気モーメントが相殺し合うこととなり、磁石としての性質は当然持ちません。
ここで、外部から強い磁力を与えると、電子は磁力に引き寄せられて整列し、磁気モーメントも同じ方向にそろいます。すると、全ての磁気モーメントが足し合わされて大きな磁力となるため、磁力としての力を持つことになるのです。
強磁性体という特性により永久磁石になる
磁気モーメントが整列すると磁石としての性質が生まれることをお話ししましたが、通常の金属では、外部からの磁気を無くすと磁気モーメントは再度バラバラな方向を向いてしまいます。つまり、外部磁力がある間だけ磁石になり、外部磁力を消すとただの金属に戻ってしまうのです。
しかし、鉄などの「強磁性体」と呼ばれる金属だけは、一度磁力を与えて整列した電子が、磁気を消してもそのままで残り続けるという特性を持ちます。そのため、一度着磁すれば半永久的に磁力を持ち続けることから、永久磁石として働きます。なお、この特性は「ヒステリシス曲線」で示されているので、気になる方は調べてみて下さい。
着磁の具体的な方法
続いて、着磁の具体的な方法についても紹介します。S極/N極に分かれる単純な磁石であれば、空芯コイルを用意し、中に素材を入れてコイルに電流を流すだけで着磁が行えます。しっかりと着磁するため、コイルには一時的に大電流を流す必要がありますが、複雑な装置や制御が不要なので幅広く用いられています。
もう一つの手法は「着磁ヨーク」と呼ばれる装置を使った方法です。こちらは様々な形状に加工した鉄心にコイルを巻いて作った装置で、基本的な仕組みは空芯コイルと同じものの、素材に複雑な磁性を持たせることができます。例えば、素材を囲むように4つのコイルを配置した着磁ヨークなら、S/N極が4つずつできた磁石ができあがります。他にも縞模様にS/N極が配置された磁石なども作れるため、より広い用途に活用できます。
消磁との違い
着磁とは逆に、強磁性体から磁石としての性質を取り除く「消磁」という手法もあります。消磁には磁石を高温にする「熱消磁」、交流磁界をかける「交流消磁」、強力な直流磁界をかける「直流消磁」という3つの方法がありますが、一般的には交流消磁が利用されています。
この方法は、空芯コイルに徐々に弱くなっていく交流電流を与えることで行えます。交流磁界の中では磁力が反転するたびに磁気モーメントの方向も反転しますが、磁界が弱まると各原子の磁気モーメントがしっかり反転しなくなり、最終的にバラバラな方向を向く、という原理で磁石としての性質を打ち消します。
まとめ
今回は、磁石の着磁に焦点を当て、その原理や主な手法などについて解説しました。着磁とは、金属に磁石としての性質を持たせるため、磁力を与える作業のことです。空芯コイルや着磁ヨークを使うことで行え、強磁性体に永久磁石としての性質を持たせることができます。特に着磁ヨークはさまざまなS/N極を持つ磁石が作れるので、幅広い用途に使える磁石の製法として利用されています。より詳細が気になる方は、その構造についてぜひ調べてみて下さい。
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