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  • 高周波回路とは?特徴や低周波回路との違いをわかりやすく解説!
  • 高周波回路とは?特徴や低周波回路との違いをわかりやすく解説!

                       

    2025年12月6日更新

    この記事を書いた人

    機電系専門ライター Div.長谷川
    「FREE AID」編集部:長谷川

    大手メーカー「コマツ」、「オムロン」などで7年間、アナログ回路エンジニアとして設計・評価業務に従事。
    ECU、PLCなどのエレキ開発経験を多数持つほか、機械商社での就労経験も有する。
    株式会社アイズ運営の機電系フリーランスエンジニア求人情報「FREEAID」専属ライターとして、
    機電分野の知識と実務経験を活かし、専門性の高い記事執筆を行っている。

    高周波回路とは?

    高周波回路とは、「高周波で動作する時の挙動が、低周波で動作する時の挙動と異なる電子回路」のことです。無線LANや携帯電話など、周波数が数GHzになる電子信号を扱う電子回路は、全て高周波回路となります。高周波回路では信号の波長に対して電子基板が相対的に大きくなり、信号の位相や振幅を無視できなくなるため、低周波信号とは回路の挙動が大きく変わります。高周波回路ではこの挙動の違いを考慮した回路設計が必要になります。

    高周波回路が使用されている機器

    高周波回路とは?

    では、具体的にどのような製品が高周波回路を利用しているのか、代表的なものを紹介します。

    身の回りの高周波回路が使用されている機器

    なお[Hz]は周波数の単位で、1秒間に何回振動を繰り返したかを示しています。[Hz]の前にあるGやMは数の大きさを示す意味をもち、読み方・単位はそれぞれ1G(ギガ) = 10^9(1000000000)、1M(メガ) = 10^6(1000000)です。つまり1[GHz]の信号とは「1秒間に10億回振動する信号」となります。なお周波数の考え方や単位は高周波回路の分野では頻繁に使用されます。

    低周波回路との違い

    高周波回路の基礎

    高周波回路とは逆に「低周波の信号を扱う回路」を低周波回路と言います。高周波回路設計の初心者は特にこの違いを覚えましょう。高周波回路と低周波回路の最も大きな違いは「扱う電気信号の周波数帯が異なること」ですが、何故周波数が異なることで多くの違いが出てくるのでしょうか?

    携帯電話やWi-Fiなどの無線LANは電波や電気信号で情報をやり取りしており、これらは波の性質を持っています。電波は1Hzの間に信号のレベル(振幅)が0⇒1⇒-1⇒0のように、時間によって変化しており一定ではありません。

    扱う電波の周波数が大きくなると、電子回路の場所によって信号の電流・電圧レベルが異なる状況を考慮する必要が出てきます。この振る舞いを扱う回路を「分布定数回路」と言います。一方低周波回路は電子回路全体が均一の電流・電圧レベルとして近似出来るため分布定数回路と区別され、「集中定数回路」と呼ばれています。

    高周波回路の周波数帯

    高周波回路は高周波帯の信号を扱う電子回路ですが、高周波と言っても「何Hz以上から高周波」という厳密な定義はありません。何故なら高周波回路の「高周波」は周波数のみならず、電子回路との相対的な大きさで決まるモノだからです。

    電波は光の速さ(3×10^8 [m/s])で空間中を伝わります。従って高速を周波数で割った値が電波が1周波数の間に進む距離となり、これを波長と定義されます。この数字が電子回路の大きさに比べて十分に大きいと低周波回路、逆に近いか小さくなると高周波回路として扱われます。

    また用途によっても高周波の定義は異なります。例えばオーディオ信号や電子回路では、音声周波数帯域と同程度の周波数帯(数十 [Hz]程度)でも低周波に見なされますが、無線通信では10 [kHz]以上が高周波とされます。

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    高周波回路におけるインピーダンスマッチング

    高周波回路の特徴

    高周波信号は波として伝わるため、基板上の配線や部品も伝送線路として動作します。送信側と受信側でインピーダンスが一致していないと信号が反射し、伝送効率が大きく低下します。そのため、高周波回路ではインピーダンスマッチングが不可欠な設計要素となります。

    インピーダンスマッチングとは

    インピーダンスとは交流信号に対する電圧と電流の比を示す量であり、直流における抵抗を高周波領域まで拡張した概念です。送信側と受信側のインピーダンスを一致させることで、信号が反射することなく負荷側へと電力を最大限伝送できます。この状態をインピーダンスマッチング、またはインピーダンス整合と呼び、通信品質や伝送効率を確保するための基本となっています。

    インピーダンスマッチングの方法>

    抵抗を用いる方法は、回路を直列または並列に接続して等価インピーダンスを整えるもので、構成が簡単で広い周波数帯域に渡って安定した整合が得られます。ただし、信号エネルギーの一部を抵抗で熱として消費してしまうため、送信電力が小さい用途や測定環境で用いられることが一般的です。

    インダクタとコンデンサを組み合わせる方法では、共振特性を利用して特定の周波数でインピーダンスを整えます。例えば、L型やπ型、T型と呼ばれる構成があり、アンテナやRFフロントエンドでよく用いられます。損失が小さく高効率な整合が可能ですが、設計した共振周波数から外れると整合が崩れるため、狭い周波数範囲に限定されます。

    トランスを利用する方法は、巻数比を変えることでインピーダンス比を電磁誘導により変換します。RFトランスやバランは受信機の増幅段などで広い周波数帯の整合に用いられます。低損失で信号の振幅を変えずに整合できる利点があるものの、巻線構造やコア材に起因する周波数特性の制約があり、適用できるインピーダンス範囲にも限りがあります。

    用途や必要な帯域幅、許容損失に応じて、これらの方法を単独または組み合わせて選択します。

    インピーダンスマッチングが無い場合の問題点

    整合が取れていない場合、負荷側で消費されなかった電力が反射波として送信側に戻ります。反射波と進行波が干渉すると伝送線路上の位置によって電圧が極端に高くなったり低くなったりする定在波が発生します。その結果、電力伝送効率の低下や回路素子への過大電圧、さらには不要な電磁放射の増加によるノイズ干渉などが生じ、通信性能と信頼性を大きく損ないます。高周波回路では、この反射と定在波を抑制するために適切なインピーダンスマッチングを設計段階から確保することが重要です。

    関連記事:  タンタルコンデンサの主な特性は?仕組みや用途なども解説!

    高周波回路の構成要素

    高周波回路の構成要素

    スイッチ

    高周波回路に用いられるスイッチは高周波スイッチまたはRFスイッチと呼ばれます。機械式と電子式のスイッチがあり、高周波信号の経路を切り替える役割を持っています。具体的な用途としてはケータイやワイヤレスLANのアンテナなどで、送信と受信を切り替えるために利用されています。

    LNA(ローノイズアンプ)

    ローノイズアンプは入力した信号を選択して増幅する「低雑音増幅器」です。デジタル放送や携帯電話、無線LANなどの高周波回路の送・受信機に多く用いられています。ローノイズアンプは特にレベルが低い信号を受信する時に用いられます。レベルの低い信号は受信時に増幅させますが、雑音と信号のレベルが近いと雑音に埋もれやすくなるため雑音を取り除く必要が生じるため、ローノイズアンプが用いられます。

    ミキサ

    ミキサはその名前の通り信号と信号を「混ぜる」時に用いられる回路で、ミキサを用いると周波数を下げたり上げたりすることが出来ます。高周波回路にミキサを使う目的はズバリ「コストダウン」です。高周波回路の周波数帯の信号を直接やり取り出来る電子回路は複雑になり、使用できる部品も限られるため製品コストが上がってしまいます。

    そこで一般の高周波回路の送受信機では、ミキサを用いて信号の周波数を下げてから信号処理を行います。なおデータを送受信する場合の「信号処理」は伝送したい信号を特定の搬送波に乗せる「変調」と、変調された信号を元に戻す「復調」を指します。これらは無線LANなどの電波を飛ばす高周波回路の基礎なので覚えておきましょう。

    フィルタ

    携帯電話やスマートフォンなどのアンテナは周波数特性を持っているため、特定の周波数帯の電波のみを受信できるように出来ていますが、それでも不要な電波を受信してしまうことがあります。そこで不要な周波数帯の電波を取り除く役割を持つBPF(バンドパスフィルタ)が利用されます。BPFには次の種類があります。

    BPFの種類

    • LPF(Low Pass Filter) :ローパスフィルタは低域通過フィルタで、低周波の信号を除く役割を持っています
    • HPF(High Pass Filter) ハイパスフィルタは広域通貨フィルタで、高周波の信号を除く役割を持っています
    • BEF(Band Elimination Filter)バンドエリミネーションフィルタは帯域除去フィルタで、特定の周波数信号のみを除く役割を持っています

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    まとめ

    今回は高周波回路の基礎知識や特徴・構成要素を紹介しました。高周波回路を扱うには専門的な知識が必要であり、初心者の方は習得するに苦労されると思います。ただ携帯電話の5Gの普及や電子機器の小型化に伴い、高周波回路設計者の役割は今後益々重要になります。これから高周波回路設計者を目指す方は是非参考にしてみて下さい。

    関連記事:  ヒートシンクとは?原理や使用時の注意点などを紹介します

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