定電流回路とは?動作原理やトランジスタ・オペアンプを用いた基本の設計方法について
2024.08.06更新
機電系エンジニア必見!!貴重なフリーランス案件はこちら ▶定電流回路とは何かご存知ですか?実は日常生活で使われるLEDなどに、定電流回路は使われています。ここでは、定電流回路の基礎的な原理や定電圧回路との違いについて解説します。
定電流回路とは
定電流回路の原理
定電流回路とは、接続した負荷や両端電圧の大きさに関わらず、一定の電流を流す回路のことです。LEDやセンサーなど、入力電流を一定に保ちたい機器に用いられます。定電流回路はどんな負荷をかけても電流が変わらないので、無限大の内部抵抗を持った回路として仮想的に表現されることが多いです。
ただし、無限大の内部抵抗をもつことは不可能なので、さまざまな部品を組み合わせ、接続した負荷に一定の電圧がかかるように設計することで定電流回路を実現しています。
定電圧回路との違い
定電流回路と対照的なのが定電圧回路です。負荷にかかわらず電圧が一定になるのが特徴で、負荷が変化すると電流値も同様に変化します。理想的には内部抵抗が0の回路として表現されますが、こちらも実際には実現不可能なので、回路上で工夫を行い一定電圧を保つことが可能です。
車のバッテリーなど、電源は基本的に電圧が一定となるよう設計されていることもあり、世の中の回路は基本的に定電圧回路で成り立っています。そのため、定電流回路を作成するためには、トランジスタなどを使った特殊な回路の設計が必要です。
定電流回路の接続における注意点
定電流回路を使う際の注意点として、回路の両端を開放してはいけません。定電流回路は常に一定の電流が流れるよう動くことから、回路の両端を開放すると抵抗値が無限大となり、両端にかかる電圧も理論上は無限大になります。 実際は回路の限界で無限大になることはありませんが、高電圧が発生して放電現象を起こすなど、事故や発火の原因となりかねないので注意しましょう。
普段身近に存在する定電圧回路の場合は、短絡すると危険ですが開放しても問題ないため、混同しないよう注意が必要です。ちなみに定電流回路は短絡しても問題ないので、定電流源などを使用しないときは短絡しておくようにしましょう。
定電流回路を使う用途
定電流回路は特殊な設計が必要となりますが、それでも必要に応じてさまざまな回路で採用されています。その主な用途について解説します。
LEDの光源
定電流回路がもっともよく利用されるのは、LEDの電源として使う場合です。LEDは流した電流を光に変換して発光しますが、流れる電流量に応じて光量が変わるため、明暗やちらつきをなくすためには、電流を細かく制御する必要があります。
LEDは温度によって抵抗値も変わってくるため、定電圧回路では安定した電流値の制御は難しいことから、定電流回路が用いられるのです。LEDは照明器具やディスプレイの光源などに使われており、消費電流も多くなるので、大電流に対応できる定電流回路が求められます。
センサー信号電源
センサー信号の電源としても、定電流回路が用いられています。センサーの材料には、条件によって抵抗率の変わる素子が使われることが多いです。圧力がかかると抵抗率が変わるピエゾ素子や、温度変化による金属の抵抗率の差を測定する測温抵抗体などが例として挙げられます。
これらの素子を使う場合、抵抗の変化を読み取る必要があり、読み取りを行うCPUでは、信号を電圧の変化として読み取ることから、抵抗値の変化を電圧変化に変換する必要があります。そのため、抵抗値の変化がそのまま電圧の変化に変換される定電流回路が必要とされるのです。
センサー信号は微弱な電圧差が大きな誤差となってしまうので、精度の高い定電流源が求められます。ただほとんど電流消費はないので、出力電流は小さく手も問題ありません。
二次電池の充電
二次電池は、充電速度を高めつつ、電池の寿命に悪影響を与えないような充電方法が設定されています。例えば、リチウムイオン電池では「定電圧定電流充電」と呼ばれる、残り充電が少ない時に定電流による充電を行い、途中で定電圧充電に切り替える方法が一般的です。他にも充電方法はいくつかありますが、定電流回路は多くの充電方式で採用されており、スマートフォンから電気自動車まで、多くの場面で利用されています。
電圧信号の絶縁
こちらは少し特殊な使い方ですが、電源から信号電圧を取り除きたい場合にも定電流回路が役立つでしょう。定電流回路は、電圧変動に関わらず一定の電流が出力されるので、信号電圧が含まれた電源を使用しても、その影響を受けずに一定電圧を取り出せます。用途は限定
されますが、電源電圧がノイズなどでばらつく場合にも活用できる場合があります。
定電流回路を作るために使われる部品
それでは、実際に定電流回路を作るにはどうすればいいのでしょうか。定電流回路の設計に必要となる代表的な部品と、回路の例を紹介します。回路はさまざまな作り方があり、用途によって使用する部品や回路は変わるため、あくまで一例として参考にしてください。
トランジスタ
もっともシンプルな定電流回路を作るときに使われるのが、NPN型のバイポーラトランジスタです。トランジスタとツェナーダイオード、抵抗の組み合わせのみで簡易的な定電流回路が実現できます。
まず、トランジスタのエミッタ側に一定値の抵抗(R1)をつなぎ、ベースに一定の電圧(V1)をかけると、R1に流れる電流(I1)は「I1=V1/R1」となり、電流値が一定になります。ベース-エミッタ間は理想的には電流が流れないので、コレクタ電流はエミッタ電流と同じI1となり、コレクタに接続した負荷の大きさに関わらず、定電流回路として機能するようになります。
ベース電圧を一定に保つためには、ツェナーダイオードやトランジスタ、抵抗などを使って回路を形成することが多いです。また、大電流を流したいがトランジスタ1つでは増幅率(hFE)が足りない場合は、トランジスタを2段に重ねるダーリントン接続により、増幅率を上げるとよいでしょう。コレクタ側に負荷を接続するのが難しい場合は、カレントミラー回路をコレクタ側に追加すれば定電流回路として使いやすくなります。
このように、非常にシンプルな回路で定電流回路は完成しますが、実際はさまざまな要因で電流値に誤差が発生するという問題もあります。例えばツェナーダイオードやトランジスタは半導体であり、しきい値電圧はばらつきが大きいです。また温度変化も大きいので、精度を保つにはトランジスタの温度を一定に保たなければなりません。そのため、簡易的な回路でいい場合をのぞき、より複雑な回路を組んで精度を高める場合が多いです。
オペアンプ
トランジスタを使った定電流回路の精度を上げるため、よく用いられるのがオペアンプです。オペアンプは、2つの入力信号(反転信号、非反転信号)の電圧差を検知し、電圧差を増幅させて出力信号を出します。フィードバック回路を組めば、特定箇所の電圧を精密に制御できるほか、非反転増幅回路のように電圧を増幅することも可能なので、さまざまな回路の設計に重宝されている部品です。
定電流回路においては、エミッタ側の出力電圧を制御することで、トランジスタの持つ誤差を低減し、より高精度な定電流を出力できるようになります。オペアンプの非反転信号に電
圧(V1)を入力し、反転信号をトランジスタのエミッタ側に接続、出力信号をベース側に接続すれば、エミッタ電圧がV1になるよう、オペアンプが出力を調整してくれるのです。
つまり、エミッタ電圧がV1で安定し、トランジスタ単体を使った回路と同様にI1=V1/R1の電流値がコレクタ側に流れることとなりますが、トランジスタ単体の時とは違い、トランジスタや周辺回路の誤差をオペアンプが調整するため、より高精度の定電流が実現できます。
もちろんオペアンプにも、入力オフセット電圧や温度ドリフト、入力バイアス電流などの誤差要因はありますが、トランジスタなどと比較すると誤差は圧倒的に小さいです。ちなみに、オペアンプの定電流回路にバイポーラトランジスタを使った場合は、ベース-エミッタ間電流が誤差要因として生じますが、MOSFETを使うことで解決できます。
LEDドライバなどのIC
このように、トランジスタやオペアンプを利用すれば精度の高い定電流回路は作れますが、考慮すべき項目が多く、設計は難しいです。LEDの駆動用などであれば、LEDドライバなどの専用ICが数多く販売されています。ICを利用すれば簡単に定電流回路が実現できるでしょう。利用用途にあった仕様のICがあれば、周辺の回路はメーカーによる指定に合わせて設計するだけでいいので簡単です。
ちなみに、単体のICではありませんが、電源電圧の昇圧・高圧、定電流回路などを搭載した可変電源回路なども販売されているので、より簡単に導入することも可能です。
定電流ダイオード
トランジスタを使った簡易回路よりさらに簡単に定電流を作りたいときは、定電流ダイオードを使うのもおすすめです。定電流ダイオードはMOSFETのゲート-ソース間を短絡したような構造をしており、かかる電圧を上げても電流が増えないようになっています。構造はあくまでただのダイオードなので誤差が大きく温度で性能が変わるほか、大電流を流すと発熱で破損するため注意が必要ですが、簡易的な回路で使うとよいでしょう。
基本原理を理解して定電流回路を設計してみよう
今回は、定電流回路のことを詳しく知りたい方に向けて、動作原理やトランジスタ、オペアンプなどを用いた基本の設計方法について解説しました。定電流回路は、LEDやセンサーを駆動するうえで欠かせない存在です。
オペアンプがあればある程度の精度を持った定電流回路は設計できますが、さまざまな誤差要因が考えられるため、精度を上げるのは難易度が高くなります。オペアンプなどを用いて設計する前に、LEDドライバなどのICで利用できるものがないか検討すると良いでしょう。
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