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強磁性、常磁性、反磁性とは?それぞれの違いをわかりやすく解説!

2023.10.10更新

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この記事を書いた人

機電系専門ライター Div.長谷川

長谷川

FREE AID編集部 機電系専門ライター Div.
アナログ回路設計・営業を経験した後ライター&ディレクターとして独立。
電気電子・ITジャンルを得意とし、正確で分かりやすい情報の発信を行っています。

金属の種類によって、磁力に対するふるまいが変わるのはなぜでしょうか。磁性体の種類によって違うことは知っていても、その理由まで知っている方は少ないかと思います。そこで今回は、磁性のメカニズムや3種類の磁性の違いなどについて詳しく解説します。

磁性とは何か

まず前提として、そもそも「磁性」が何を指しているかを解説しましょう。磁石によって発生した磁場に物質を置くと、置かれた物質は磁場に影響を受けて磁気的な特性を持つようになります。この外部磁場に対して発動する磁気的特性が「磁性」です。

磁性は物質ごとに強さが変わるため、大まかに強磁性、常磁性、反磁性の3種類に分けられます。詳しい違いは後述しますが、大まかには磁石に引き寄せられるのが強磁性、磁石にほとんど反応しないのが常磁性、磁石から離れるのが反磁性、となります。

磁性はどのように生まれるか

続いて、磁性が生まれるメカニズムを解説しましょう。磁性は原子核を周回する電子において、電子そのものが持つ磁気特性「電子スピン」と、電子の周回運動による磁場によって発生すると言われています。

電子スピン

まず、磁性に対し最も大きな影響を与えるのが電子スピンです。電子スピンとは、大まかにいうと「電子の自転」のことで、上向きのスピンと下向きのスピンの2種類が存在します。(厳密には電子は自転していないため、あくまでイメージであることに注意ください)。

上向きの磁界を生み出す方向に自転するのが上向きスピン、下向きの磁界を生み出す方向に自転するのが下向きスピンと例えられます。物質を構成する原子には多数の電子が存在するため、電子スピンが生み出す磁気モーメントの総量が、物質の磁気的性質を左右するのです。

多くの物質では逆方向の電子スピンをもつ電子が対となって存在するため、磁気モーメントは相殺されます。しかし、不対電子などで電子スピンに偏りが生じる場合、磁性として大きな存在感を示します。

電子軌道

磁性が発生するもう一つの要因が、電子がもつ周回軌道の方向です。電子はマイナスの電荷を持った物質のため、電子が動くと逆方向に電流が流れます。そして、電子は原子核の周りを常に周回運動しているため、原子核の周囲には常に逆向きの周回電流が流れています。

コイルをイメージすると分かりやすいですが、周回電流は右ねじの法則に沿って磁界を生み出すため、一定方向への磁気モーメントを生み出すのです。ただ、上向きと下向きの2方向しかない電子スピンに対し、電子の周回軌道は様々な方向をとり得ます。

そのため、電子軌道によって生まれる磁気モーメントの総量は電子スピンによる磁気モーメントより小さくなると言われています。

強磁性体の特徴

それでは、磁性の種類ごとの特徴について解説しましょう。まずは強磁性体について紹介します。

磁界により強く磁化される

強磁性体は、磁界中に置かれると磁界と同じ方向に強く磁化される物体のことです。素材によっては外部磁界が無くなった後も磁性を持ち続け、永久磁石としての性質を持つこともあります。常温で強磁性を示す金属は、鉄、コバルト、ニッケル、ガドリニウムの4種類しか存在しておらず、非常に珍しい特性だといえます。なお、ガドリニウムは20℃以下でしか強磁性を示さないため、他の3種類に比べて扱いづらいです。

電子スピンの偏りが磁力を生む

鉄などが強磁性体となるのは、磁化によって強い磁気モーメントが発生するのが要因です。通常、原子を構成する電子は上向きスピンと下向きスピンが交互に繰り返して配置され、巨視的には非常に弱い磁気モーメントしか発生しません。

しかし、遷移金属として知られる金属では、不対電子が安定して多数存在しており、スピンに偏りが生じやすいので、原子レベルで磁気モーメントが発現します。特に、強磁性体は遷移金属の中でも電子スピンの偏りが著しく、電子スピンによる磁気モーメントの総量も大きくなっています。

そのため、外部から強い磁界を与えて磁気モーメントの向きを揃えると、物質そのものが非常に大きい磁気モーメントを発するようになるのです。さらに、強磁性体において一度揃った磁気モーメントは高温条件下でないと変化しないため、安定して強い磁気モーメントを持ち続けます。

常磁性体の特徴

続いて、常磁性体の特徴を紹介します。

磁界により少しだけ磁化される

磁界中に置かれると、外部磁界と同じ方向に弱く磁化されるのが常磁性体です。強磁性と磁気モーメントの方向こそ同じものの、磁化力が非常に弱いため、磁石には引き寄せられません。また、外部磁界を遠ざけても磁化し続ける強磁性体と異なり、常磁性体は外部磁界がなければ磁化されることはありません。常磁性は物体のもつ磁性として最も一般的であり、アルミニウムやチタンなどを始め、酸素なども常磁性体に含まれます。

熱ゆらぎが磁気モーメントを打ち消す

常磁性を持つ物質では、強磁性物体と同じく電子スピンの偏りによる磁気モーメントが発生しています。しかし、強磁性体に比べて電子スピンの偏りの総量が少なく、熱ゆらぎによってスピンの方向がバラバラに分散させられるため、巨視的には非常に弱い磁気的特性しか示しません。

そのため、外部磁界を与えると電子スピンの向きが揃い、磁界と同じ方向に磁化されますが、強磁性体ほど強く磁化されることはありません。また、磁石が遠ざかると磁化された電子スピンもすぐに分散させられるため、磁気モーメントが残らないようになっています。

ちなみに、磁気モーメントに対し、熱ゆらぎが支配的になる温度をキュリー温度と呼びます。常磁性体は室温よりキュリー温度が低いため常磁性を示しますが、常磁性体を冷やすと熱ゆらぎが少なくなるため、強磁性体としての性質を持つようになります。

反磁性体の特徴

最後に、反磁性体の性質について解説します。

磁界と逆方向に弱く磁化される

外部磁界を与えたときに外部磁界と逆方向に弱く磁化されるのが反磁性体です。逆方向に磁化されるため、磁石を近づけると磁石から離れる方向に動きます。ただ、反磁性は非常に弱く目に見えないため、磁性を持っていないと誤解されることが多いです。

反磁性を持つ物質には金や銀、ビスマス、窒素、水などがあり、常磁性体と同様に沢山の種類があります。ちなみに、強磁性体や常磁性体も反磁性を持っていますが、強磁性・常磁性に打ち消され、性質としては発現しません。

電子軌道による磁性が要因

反磁性は、電子の周回軌道によって磁界が生じることが要因です。まず、物質に外部磁界を与えると、原子核を周回する電子は電磁誘導の影響を受け、磁界と垂直方向に円運動を行うようになります。すると、電子の円運動と逆方向に電流が流れるため、レンツの法則から外部磁界と逆方向の磁界が発生するのです。

ここで、不対電子の存在により電子スピンによる磁気モーメントが存在していると、そちらが支配的となり周回軌道の磁界は打ち消されてしまいます。しかし、電子スピンの偏りがない物質では磁気モーメントが生じないため、電子軌道による逆方向の磁界が特性として表面化するのです。

超電導体は強い反磁性を示す

反磁性体は総じて磁気モーメントが非常に弱いですが、例外として物体を極低温まで冷却し、超電導状態にすると「完全反磁性」を持つ非常に強い反磁性体になります。この特性は、超電導体が「電気抵抗がゼロになる」ことによって生じます。外部磁界により発生した誘導電流が全く減衰しないため、レンツの法則により発生した逆方向の磁界が、外部磁界と全く同じ強さとなるからです。

まとめ

今回は物体のもつ磁性に着目し、強磁性、常磁性、反磁性の違いを紹介しました。磁性は外部磁界を与えた際、どのような性質を持つかを示す特性です。磁石に引き寄せられるのが強磁性、磁石にほとんど反応しないのが常磁性、磁石から離れるのが反磁性として分類されています。

強磁性と常磁性は電子スピンの偏りが、反磁性は電子軌道が磁性を生み出す要因だとして考えられています。今回は概要をお伝えしましたが、正確に理解するには量子力学などの知識が欠かせないため、気になる方はより詳しく物性を調べてみてください。

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