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フィルムコンデンサの基礎知識|構造や特徴、役割などを紹介

2023.10.10更新

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機電系専門ライター Div.長谷川

長谷川

FREE AID編集部 機電系専門ライター Div.
アナログ回路設計・営業を経験した後ライター&ディレクターとして独立。
電気電子・ITジャンルを得意とし、正確で分かりやすい情報の発信を行っています。

ノイズ対策など、一定の用途で使われているフィルムコンデンサ。存在は知っていても、セラミックコンデンサなど、他のコンデンサとの違いを知らない方は多いのではないでしょうか。そこで本記事では、フィルムコンデンサに着目し、特徴や構造などについて詳しく解説します。

フィルムコンデンサとは

引用:ルビコン株式会社

フィルムコンデンサは、プラスチックのフィルムを誘電体として使う、無極性のコンデンサです。電極には主にアルミニウム箔を使い、フィルムを挟みこんで電荷を蓄える形状をしています。また、電荷を多く蓄えるため、金属箔とフィルムを部品内部で何重にも巻くか、積層させて製品化するのが一般的です。

プラスチックのコストが高く用途は限定されるものの、コンデンサとして非常に性能が良いことから、高精度・高耐久性などが求められる製品に使用されています。

フィルムコンデンサの特徴

それでは、フィルムコンデンサがコンデンサの中でどんな特徴を有しているのか、主な点を紹介します。

絶縁抵抗が高い

まず、フィルムコンデンサの主な特徴として挙げられるのが、絶縁抵抗の高さです。プラスチックは絶縁性能が高いため、印加電圧や外部環境の影響を受けず、安定して電荷を貯めることができます。また、絶縁抵抗の自己修復機能を有することも、他のコンデンサにはない特徴です。蒸着電極を用いた製品に限りますが、高電圧が印加されて絶縁破壊が生じてしまっても、電極が瞬時に酸化して絶縁状態を回復します。

DCバイアス特性が良い

もう一つ、フィルムコンデンサの大きな特徴としては、DCバイアス特性の良さがあります。DCバイアス特性は、コンデンサに加わる直流電源の電圧に比例して、静電容量がどの程度変化するかを示した指標のことです。高電圧下にあるほど静電容量が低下することが多いため、直流電源回路ではコンデンサ性能の低下に注意しなければなりません。

特に、セラミックコンデンサの場合はDCバイアス特性による影響が大きく、10V程度の電圧でも数十%静電容量が低下するため、高電圧下での使用は難しいです。一方、フィルムコンデンサではDCバイアス特性による影響がほとんどないため、他のコンデンサと異なり直流電源下でも安心して使用できます。

無極性である

電解コンデンサなどは端子に極性があり、電圧を印加できる方向が決まっています。一方、フィルムコンデンサには極性がないため接続方向に制限がなく、交流電源でも問題なく使えます。

温度特性が良い

セラミックコンデンサなどの場合、温度変化によって誘電体の誘電率が変わるため、静電容量が増減してしまいます。しかし、フィルムコンデンサの場合はプラスチックの誘電率が変化しにくいため、温度変化に対する静電容量の変化が少なくて済みます。

フィルムの材質にもよりますが、特にPPS(ポリフェニレンサルフェイド)を材質に使った場合、温度が変化してもほとんど静電容量は変わりません。そのため、屋外など温度変化しやすい環境下でも、安心して使用できます。

高周波特性が良い

フィルムコンデンサは、温度特性と同様に、信号の周波数に対しても静電容量が変わらないのが特徴です。また、電解コンデンサのように高周波信号に対してインピーダンスが増加することもないので、高周波信号を扱う回路でも気にせず使えます。

長寿命で故障率が低い

フィルムコンデンサはプラスチックを使うため、物性が安定しており故障率が非常に低いです。また、他のコンデンサのように電解質が劣化する心配もないので、数十年にわたり安定した長寿命が期待できます。

フィルムコンデンサの構造

フィルムコンデンサは金属電極とプラスチックフィルムを重ねて作られますが、素材の作り方や重ね方には複数の方法があります。それぞれの分類と構造の違いを紹介します。

箔電極型

電極にアルミニウムなどの金属箔を使い、プラスチックフィルムと共に何重にも巻いて作るコンデンサのことです。箔電極型は、端子の取り付け方によってさらに「誘導型」「無誘導型」に分類されます。

誘導型は金属箔の両端にリード端子を取り付けたもので、無誘導型は金属箔をフィルムとずらし、渦巻き部分の両端からはみ出した金属箔に、それぞれ端子を取り付けたものです。無誘導型は金属箔の複数個所に端子が接続され、積層コンデンサのような構造となるため、抵抗値が下がりコンデンサとしての性能が上がります。

蒸着電極型

蒸着電極型は、プラスチックフィルムの表面に薄く金属を蒸着させ、電極として使うコンデンサのことです。電極の厚みが薄いため、箔電極型より小型化しやすいのが特徴です。電極が非常に薄く、直接端子を取り付けられないことから、電極の接続方法は無誘導型に限られます。また、フィルムを巻き回すだけでなく、短いフィルムを何層にも積層させる方式でも作られます。

フィルム材料別の特性

フィルムコンデンサは、誘電体として利用するプラスチックフィルムの材料で大きく性能・耐久性などが変わります。材料ごとの特徴は、以下の表のようになっています。

材質 コンデンサの特徴
PET(ポリエチレンテレフタラート) 小型で安価な製品に使われる。マイラコンデンサとも呼ばれる。
PP(ポリプロピレン) 高周波特性と耐湿性に優れる樹脂材料。
ハイエンド製品向けで使われていたが、小型化・低コスト化が進み主流の材料になりつつある。
PPS(ポリフェニレンサルフェイド) 表面実装部品で使われる。静電容量の温度・周波数特性が非常に良い。
非常に高価。
PEN(ポリエチレンナフタレート) 表面実装部品で使われる。耐熱性が高く小型化しやすいが、その他の性能は低めで価格も高い。

ただし、表に記載した特徴はあくまで一部の情報です。特性は材質ごとに細かな違いがあるので、選定する際はデータシートのグラフを見比べて違いを確かめることをおすすめします。

まとめ

今回は、フィルムコンデンサの仕組みや特徴など、基本的な情報についてお伝えしました。フィルムコンデンサは価格が高いため用途こそ限られるものの、コンデンサとしての性能が非常に高いことから、高性能・耐久性が求められる製品に利用されています。

フィルムコンデンサは、プラスチックの種類や電極・フィルムの巻き方によってもコストや性能が大きく変わるコンデンサでもあります。データシートを確認し、製品ごとの特性の違いを把握して選定するようご注意ください。

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