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  • スナバ回路とは?役割・設計方法・種類などを網羅的に解説!
  • スナバ回路とは?役割・設計方法・種類などを網羅的に解説!

    2024.12.13更新

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    この記事を書いた人

    機電系専門ライター Div.長谷川

    長谷川

    FREE AID編集部 機電系専門ライター Div.
    アナログ回路設計・営業を経験した後ライター&ディレクターとして独立。
    電気電子・ITジャンルを得意とし、正確で分かりやすい情報の発信を行っています。

    電気回路においてノイズや機器故障の原因となりうるサージ。その中でもスイッチングサージから回路を保護するのに、スナバ回路は活躍しています。今回はそんなスナバ回路について、具体的な役割や設計方法、種類毎の特徴などを解説します。

    スナバ回路とは?

    そもそもスナバは英語で急停止を意味する単語のことで、スナバ回路とはスイッチングによって生まれる高電圧信号(通称スイッチングサージ)を抑制する回路の総称です。スイッチングサージは思わぬ誤作動や機器故障を招く可能性があるため、スイッチ素子と並列にスナバ回路を接続することで、スイッチングサージをスナバ回路へ流し、サージを吸収・消費して主回路を保護します。スナバ回路の種類は後述しますが、基本的には抵抗、コンデンサ、ダイオードなどの素子を接続しただけのシンプルな構成のものばかりです。

    スイッチングサージが発生する原理と影響とは?

    続いてそもそもスイッチングサージがなぜ発生するのか、また発生したスイッチングサージが回路にどのような影響を与えるのかを解説します。

    スイッチングサージの要因はインダクタンス成分

    スイッチングサージが生まれるのは回路中に存在する寄生インダクタンスが原因です。いかなる回路であっても回路配線の曲がりやループ、配線同士の近接部などでは、設計者が意図しないインダクタンス成分が存在してしまいます。インダクタンスには急激な磁界や電流の変化に対し、変化を打ち消す方向に電流を流そうとする性質があります。そのため、スイッチングにより回路電流が急激に遮断されると、回路上の寄生インダクタンスが大きなサージ電圧を発生させてしまいます。

    インダクタンスとスイッチによりリンギングが発生する

    スイッチングによりオフ状態となったスイッチ素子を微視的に見ると、2つの電極が誘電体(空気)で隔てられているので、寄生容量(キャパシタンス)を持ちます。ここで、キャパシタンスとインダクタンスを並列に接続すると、共振周波数の信号が2つの素子の間で振動するように流れ続け、リンギングが発生するようになります。つまりスイッチングによって寄生インダクタンスが生み出したサージ信号は、寄生容量との間でリンギングを起こし、信号波形に高周波の歪みを生じることでノイズや機器破損を招く原因となります。

    代表的なスナバ回路の種類と特徴

    スナバ回路にはスイッチ素子と個別に並列接続する個別スナバ回路と、複数のスイッチ素子とまとめて並列接続する一括スナバ回路があり、それぞれでさらに細かい種類に分かれています。ここでは代表的な回路の種類と特徴について解説していくので、しっかり理解しましょう。

    Cスナバ回路

    最もシンプルな一括スナバ回路はスイッチ素子と並列にコンデンサを接続しただけのCスナバ回路です。インダクタンスと逆の性質を持つコンデンサを接続することによって、インダクタンスが生み出すサージを吸収します。見た目通り部品点数が少ないのがメリットではあるものの、寄生インダクタンスと共振を起こしてしまうリスクがある上、一括スナバ回路の特徴として回路配線が個別スナバ回路よりも長くなってしまうのも欠点です。主な用途として、ディスクリート構成よりも2in1構成で使われることが多いと言われています。

    RCスナバ回路

    Cスナバ回路ではスイッチを短絡した際、コンデンサに充電された電流が全て流れてしまい、スイッチ素子に負荷が掛かる恐れがあります。そこで抵抗を直列に接続することで、スイッチ素子に掛かる負荷を低減したのがRCスナバ回路で、​​個別スナバ回路の中で最も有名な回路と言えるでしょう。リンギングのエネルギーを抵抗素子で消費するため、Cスナバ回路に比べてサージ電圧の抑制効果が高いのも特徴です。一方でスナバコンデンサが吸収したエネルギーもスナバ抵抗が消費してしまう特性があり、特に高周波信号でその傾向が顕著となるため、スイッチング周波数が高い回路にはあまり向いていません。

    RCDスナバ回路

    RCスナバ回路のスナバ抵抗と並列にダイオードを接続し、スナバ抵抗をより大きくできるよう改善した回路をRCDスナバ回路と呼びます。インダクタンスが発生したサージのエネルギーをコンデンサが吸収するのはCスナバ回路やRCスナバ回路と同様ですが、コンデンサがエネルギーを吸収する過程でスナバ抵抗を経由しないため、より効率的にエネルギーを吸収できます。但しスナバコンデンサが放出するエネルギーをスナバ抵抗が消費してしまうのは変わらないため、RCスナバ回路と同様、高周波信号には向きません。

    スナバ回路を設計する際の注意点と手順

    続いてスナバ回路を実際に設計する上で考えるべき項目や手順について、RCスナバ回路を例に基本的な内容について解説していきます。読んだだけで設計ができるようになるわけではないですが、考え方を軽く知っておくだけでも役に立つので、ぜひ参考にしてみてください。

    リンギング周波数の寄生成分の測定

    RCスナバ回路の設計はリンギング周波数の特定、寄生容量と寄生インダクタンスの導出、スナバ抵抗とスナバコンデンサの値の決定という流れで行われます。初めにスナバ回路を接続していない状態で回路のスイッチを開閉し、信号波形に現れる高周波のリンギング波形を観測することでリンギング周波数を測定します。

    続いて適当な容量のコンデンサをスイッチ素子と並列に接続し、容量を変えながらリンギング周波数を何度か観測することでスイッチの寄生容量も算出していきます。またリンギング周波数と寄生容量が分かればLC並列回路における共振現象の原理から、寄生インダクタンスも求めることができるでしょう。

    スナバ抵抗とスナバコンデンサの値の決定

    今度はスナバ抵抗とスナバコンデンサの値を決めていきます。前提としてスナバ抵抗は寄生成分によって生まれたサージエネルギーを最大限消費しつつ、スナバ回路から本来の回路へ反射する信号を最小限に留めることが重要です。この条件を満たすには抵抗値と寄生成分を同じ特性インピーダンスにする必要があるため、先に求めた寄生容量と寄生インダクタンスの値から適切な抵抗値を逆算して求めていきます。

    スナバ抵抗の値が決まったら、スナバコンデンサを寄生容量の1倍から4倍程度の範囲で実験的に決めていきます。最後にスナバ回路における電力消費とサージ信号の低減度合いを見ながら、スナバ抵抗とスナバコンデンサの値を最適化してスナバ回路の完成です。

    スナバ回路によるデメリット

    スナバ回路は重要な保護回路ではあるものの、設置に伴い幾つかのデメリットが発生することも覚えておきましょう。まず先ほど軽く触れたように、抵抗素子を使用するスナバ回路では原理的に抵抗値に余計な電流を流してエネルギーを消費させるため、スナバ回路の設置は回路全体のエネルギー効率の低下を招いてしまいます。

    またリンギングを抑えるためにスナバコンデンサの容量を大きくすると、スイッチをオンにした際に流れるスパイク電流が大きくなってノイズが生まれたり、より許容電力の大きいスナバ抵抗を選定する必要性が生まれ、実装面積の拡大やコスト増加に繋がる可能性があります。

    まとめ

    今回はスイッチングサージから主回路を保護するスナバ回路について、スイッチングサージの発生原因から具体的なスナバ回路の種類や設計方法などを網羅的に解説してきました。スナバ回路は重要な保護回路ではあるものの、効率低下やスパイク電流の増加といったデメリットも招いてしまうため、一般論的にはスナバ回路の容量は少ないに越したことはないことを併せて覚えておきましょう。

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