プリント基板(PCB)の構造や、配線の基本構想などを設計者向けに解説
2026年4月26日更新
この記事を書いた人

大手メーカー「コマツ」、「オムロン」などで7年間、アナログ回路エンジニアとして設計・評価業務に従事。
ECU、PLCなどのエレキ開発経験を多数持つほか、機械商社での就労経験も有する。
株式会社アイズ運営の機電系フリーランスエンジニア求人情報「FREEAID」専属ライターとして、
機電分野の知識と実務経験を活かし、専門性の高い記事執筆を行っている。
プリント基板は電子回路を形にするために使われる部品ですが、信号線の配線やGNDプレーンの配置など、設計の仕方によって電子回路の性能を大きく左右する存在でもあります。本記事では、技術者向けにプリント基板の構造や、配線の基本構想など、設計に役立つ基本的な知識を解説します。
プリント基板(PCB)の基本構造

まず、プリント基板がどのように構成されているか、その基本的な構造を紹介します。
基板材料(ベース材)
プリント基板では、配線するためのベースとして、機械的強度や電気的絶縁性、耐熱性などに優れた材料が使われます。一般的な電子機器では、ガラス繊維にエポキシ樹脂を含浸させた「FR-4」と呼ばれる材料がコストと性能のバランスに優れており、多くの基板で標準的に採用されています。
また、用途によっては、紙フェノールのような低コスト材料や、耐熱性や高周波特性に優れた材料が選ばれることもあります。他にもアルミなどの金属を用いた金属基板や、柔らかいポリイミドを使ったフレキシブル基板が使用されることもあり、回路の特性や使用環境に応じて材料が選定されます。なお、ベース材の両面に銅箔を張ったものを「コア材」と呼びます。
導体層(銅箔)
導体層は、信号や電力を伝えるための配線を形成する部分で、一般的には銅箔が使用されます。銅は導電性や加工性に優れており、プリント基板の標準的な材料となっています。銅箔の厚さは用途に応じて選択され、一般的な基板では35µm(1oz)がよく用いられますが、大電流を扱う電源回路ではより厚い銅箔が使用されることもあります。また、多層基板では各層にも導体層が配置され、ビアを介して層間接続が行われます。
絶縁層(プリプレグ)
プリプレグは、導体層やコア材の間に挟み込まれ、層同士を電気的に絶縁するとともに接着する役割を持つ材料です。ガラス繊維にエポキシ樹脂を含浸させた半硬化状態のシート形状をしており、加熱・加圧することで樹脂が溶融・硬化し、層同士を一体化させます。
多層基板では、このプリプレグを用いてコア材や導体層を積み重ねることで、所定の層構成が形成されます。このプリプレグの厚みや樹脂量、誘電率などには様々な種類があり、プリント基板の特性に大きな影響を与えます。そのため、特に高密度実装や高速信号を扱う設計では慎重な選定が求められます。
プリント基板(PCB)の層構成の種類

次に、プリント基板がどのような層構成で使われることがあるかを紹介します。
片面基板・両面基板
片面基板および両面基板は、最も基本的なプリント基板の層構成です。片面基板は基板の片側のみに、両面基板は表面と裏面の両方に導体層を持ちます。両面基板では、スルーホールを用いて両面の配線を接続します。
片面基板と両面基板はどちらも製造コストを抑えられるため、部品点数が少ない回路や単純な制御回路、表示基板、電源回路などの低密度な用途で使われています。特に両面基板は部品を両面に実装でき、コストと設計自由度を両立できるメリットがあるため、幅広い製品に使われています。
積層基板(多層基板)
片面・両面基板では配線が足りない用途では、基板内部にも導体層の入った積層基板が使われます。4層、6層、8層といった層構成により、より配線の自由度を高め、高密度な回路を作ることができます。近年では回路規模が増大していることから、ほとんどの用途で一般的に用いられています。
また、積層基板では、グランドや電源のプレーンを内部層に配置できるのも特徴です。信号電流のリターンパスを確保しやすくなることで、ノイズの低減や信号品質の向上が実現できるので、低密度な回路でも積層基板が採用されることがあります。
ビルドアップ基板
積層基板の中でも、さらに高密度な実装や小型化に対応するために採用される構造が、ビルドアップ基板です。通常の積層基板では、スルーホールによって基板全体を貫通させて各層を導通させますが、それでは配線の自由度に限界があります。そこでビルドアップ基板では積層の途中でビアを開けたり、レーザーで貫通しない穴をあけたりして必要な層だけを導通させます。
これにより、従来のスルーホールのように基板全体を貫通する穴を減らすことができるため、配線スペースを有効に活用でき、より高密度な配線が行えます。一方で、製造工程が複雑になるため、一般的な多層基板と比べてコストが高くなる傾向があります。
プリント基板(PCB)に配線する際の基本構想

続いて、プリント基板に配線を行う際に設計者が考える、基本的な構想を解説します。
信号線は「電流の流れ」を意識して配線する
回路図では信号線が主役となることが多いですが、この信号線を配線する際には、電流の流れを意識することが基本となります。実際のプリント基板では、限られた面積や層数の中に多数の部品や配線を配置する必要があるため、単に接続するだけでなく、さまざまな条件を同時に満たすように配線をまとめていくことが求められます。
例えば、信号線はできるだけ短くしたい一方で、部品配置や他の配線との干渉を避ける必要があります。また、電流の戻り道となるグランドとの関係を保ちながら、ノイズ源となる回路から距離を取ることや、製造上のクリアランスや配線幅の制約を守ることも必要になります。このように、信号配線は単一の条件だけで決まるものではなく、複数の要件をバランスさせながら成立させていく作業といえます。
さらに、層変更や配線の引き回しによって電流の経路が大きく変わることもあるため、配線の経路だけでなく、グランドや電源との位置関係を含めて全体を見ながら設計することが重要になります。特に部品点数が多い基板や高密度実装の基板では、すべての条件を理想どおりに満たすことが難しい場面も多く、どの条件を優先するかを判断することが設計者の重要な役割になります。
積層基板では内部にグランド(GND)プレーンを入れる
多層基板では、内部層にグランド(GND)のプレーンを配置することが一般的です。グランドは単なる基準電位ではなく、信号電流が戻るための経路(リターンパス)として重要な役割を持っています。
広いグランドプレーンを確保することで、信号電流は最短距離で安定して戻ることができるようになります。これにより電流ループが小さくなり、電磁ノイズの発生や外来ノイズの影響を抑える効果が期待できます。
逆に、グランドプレーンが途切れていたり、不要に分割されていたりすると、電流が遠回りすることになり、ノイズや誤動作の原因になることがあります。そのため、グランドは単に接続するだけではなく、連続した面として確保することが重要になります。
電源プレーンは電圧を安定させるために使う
電源プレーンは、回路全体に安定した電圧を供給するために使用されます。ICは動作中に瞬間的な電流変動を伴うため、電源経路の抵抗やインダクタンスが大きいと、電圧が変動して誤動作の原因になることがあります。
電源プレーンを面状に確保することで、電流経路が広がり、電源インピーダンスを低く保つことができます。これにより電圧変動が抑えられ、回路の安定性が向上します。特に部品点数が多い基板や電流変動が大きい回路では、電源プレーンの有無が動作の安定性に影響することがあります。
また、電源プレーンとグランドプレーンが近接して配置されている場合、両者の間に微小な容量が形成され、高周波ノイズを吸収する効果も期待できます。このように、プレーンの配置は電気的な特性に直接影響するため、設計初期の段階から意図して構成することが重要になります。
一方で、比較的小規模な回路や消費電流が小さい回路では、電源を配線で分配する構成とすることも一般的です。そのため、電源プレーンは必ずしもすべての基板に必要なものではなく、回路の規模や要求性能、コストなどを踏まえて選択される設計手段の一つといえます。
まとめ
プリント基板は、ベース材に導体層、絶縁体を重ねて作るシンプルな回路要素ですが、構造や設計手法は様々なものがあります。構造においてはベース材やプリプレグなどの選定や層構成の決定、設計手法においては信号線の配置やGND・電源プレーンの配置などが電子回路の性能に大きな影響を与えるため、これらを正しく理解して設計を行う必要があります。
これらの設計手法は基板設計者はもちろん、回路設計者も知っておいた方がよい知識なので、ぜひ理解しておくようにしてください。
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