フェライト磁石(フェライトコア)って何?特徴や用途を紹介!
2024.08.07更新
機電系エンジニア必見!!貴重なフリーランス案件はこちら ▶磁石について語る上で、安価かつ自由な成形が可能な「フェライト」は外せません。ただ、磁石としての特徴や、幅広く使われている理由など、詳しい内容を知る機会は少ないのではないでしょうか。そこで本記事では、フェライト磁石の特徴や用途などの基本的な知識と、ノイズ対策として使われる「フェライトコア」についてを中心に解説します。
フェライト磁石とは
引用:株式会社マグナ
フェライトは、酸化鉄を主な材料として、コバルトやニッケル、バリウムなどを少量加えて作る磁石のことです。酸化鉄を粉末状に粉砕し、高温の炉に入れて焼結させるセラミックスの一種で、安価で自由な成形を行えます。フェライトは、焼結しただけでは磁性体の向きがばらばらです。そのため、外部から磁界を与えて磁性体の向きを揃えることで、磁石としての機能を持たせます。
ただし、フェライトの材質によって磁界に対する反応が変わるため、注意が必要です。具体的には、一度磁界を与えると永久磁石と同じ性質になる「ハードフェライト」と、磁界を与えると磁石になり、磁界が消えると元の状態に戻る「ソフトフェライト」の2種類があります。
フェライト磁石の歴史
フェライトは、昭和時代に日本人によって発明された磁石です。1930年にフェライトの前身となる「OP磁石」を、東京工業大学の加藤与五郎博士、武井武博士が発見します。その後、フェライトの量産を実現したのが、両博士から特許を取得した齋藤憲三氏です。齋藤氏はフェライトを事業化するためにTDK(東京電気化学工業株式会社)を設立し、1937年に「オキサイドコア」として発売します。
発売後、フェライトの優れた特性が認知されたため、無線やオーディオ機器を始め、テレビや各種家電など、各種電気製品への利用がどんどん広がり、現在にまで至っています。
フェライト磁石の特徴
それでは、どのような部分でフェライト磁石が優れているのか、特徴をお伝えしましょう。
高周波特性が良い
フェライトが有名になったのは、高周波特性の良さが最も大きな理由です。通常の磁石は合金製で導電率が高いため、高周波磁界を発生させると「渦電流損」(磁石内に渦電流が流れ、発熱してしまう現象)が大きな問題となります。
一方で、フェライトの材料である酸化鉄は抵抗率が高く、電流をほとんど流しません。そのため、高周波の磁界が入っても渦電流が流れないので損失を低く抑えられるのです。この特性を活かし、IHヒーターなど、高周波信号を流すコイルのコアとしてフェライトが数多く使われています。
低コストで使いやすい
低コストで使いやすいことも、フェライトの大きな強みです。フェライトは、非常に安価な酸化鉄が主成分なので、コストを非常に安く抑えられます。また、金型を使って成形するため、複雑な形状を簡単に作れることも強みです。合金製と異なり軽量であり、ネオジム磁石などには及ばないものの発生磁界もかなり強いので、用途を問わず様々な場所で使えるでしょう。
耐薬品性に優れる
フェライトは、酸化鉄を使ったセラミックなので耐薬品性、耐食性に優れるという特徴を持っています。割れやすいという欠点こそ持つものの、錆にも強いため使う場所を選びません。
フェライトコアとは
引用:株式会社タカチ電機工業
続いて、ノイズ対策において名前をよく見かける「フェライトコア」について解説しましょう。フェライトコアとは、リング状に加工されたソフトフェライトのことです。元々はリング状のフェライトをコイルのコアとして使うことから、フェライトコアという名前が付けられました。
しかし、フェライトコアに電線を通すと高周波ノイズを妨げる働きを持つことから、ノイズ対策部品としての利用が増加し、今ではノイズ対策用の部品のことを指すようになっています。外部から入るノイズを抑制し、耐ノイズ性を簡単に高められる手法として、デジタル機器の電線に数多く採用されています。
フェライトコアの原理
それでは、フェライトコアが高周波ノイズを妨げる理由を解説しましょう。まず、フェライトコアは電線を囲む形で配置され、電磁誘導によって渦電流が流れることでインダクタと同様の働きをします。インダクタは周波数が高くなるほどインピーダンスも増加するため、周波数の高いノイズ電流を効果的に妨げ、磁力に変換します。
さらに、フェライトコアがインダクタとも異なるのは、ヒステリシス損失が大きいことです。インダクタの場合はノイズ電流のエネルギーを一時的に蓄え、低い周波数の電流として放出しますが、フェライトコアは蓄えたエネルギーを熱に変換するため、電流に戻しません。
これらの効果により、フェライトコアは電線に流れるノイズを効果的にシャットアウトできるのです。ノイズレベルが大きいとフェライトが磁気飽和を起こすため、万能というわけではありませんが、複数個のフェライトを入れるだけでも大きなノイズ削減効果が得られるでしょう。
ちなみに、ケーブルに印加するノイズは、電流が流れる経路によって「コモンモードノイズ」と「ノーマルモードノイズ」に分類されます。それぞれでフェライトコアを繋ぐ場所や通す電線の数が変わるので、ノイズの特性を把握しておくことも必要です。
ノイズ対策で使いやすいEMIクランプ
ここまでで、フェライトコアがノイズ対策に有用なことを説明しました。ただ、フェライトコアは電線に巻きつけて使いますが、既に完成している製品のノイズ対策を行うには、通常のトロイダルコアは使いにくいです。
そこで登場したのが、トロイダルコアを2つに分割し、クリップで留められる形状になったEMIクランプです。EMIクランプは、電線を切断するなどの加工を必要とせず簡単に巻きつけられる上、通常のトロイダルコアと性能が変わらないため、ノイズ対策の現場で重宝されています。後付けでノイズ対策を行いたい場合は、EMIクランプを採用すると良いでしょう。
まとめ
今回は、フェライト磁石に注目し、磁石としての歴史や特徴、ノイズ対策として使われるフェライトコアなどについて解説しました。フェライト磁石は酸化鉄のセラミックで作られた、非常に珍しい磁石です。その磁力の強さはもとより、高周波特性が良い、コストが低いなどの特徴を持つことから、磁石の中で最も数多く使用されています。
歴史が古い技術ではありますが、工夫次第で意外な用途にも使われるので、身の回りの機器でどのように使われているのか、注意して探してみて下さい。
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