電磁開閉器、電磁接触器とは?原理やリレーとの違いも紹介!
2024.07.15更新
機電系エンジニア必見!!貴重なフリーランス案件はこちら ▶私たちの生活のあらゆる所で使われているスイッチ。照明や家電のON/OFFを始め用途は幅広いですが、業界・用途・電力容量によって細かく名称が分かれているため、戸惑うことも多いのではないでしょうか。そこで今回は、電気回路で使用されるスイッチの一種である「電磁開閉器」と「電磁接触器」の概要と原理をご紹介します。また、電気回路でよく使用されるリレーとの違いも言及します。
電磁接触器とは
電磁接触器とは、主として工業用電気機器(電動機、電灯)に使用される、電機スイッチの一種です。主に200〜440V、20〜800Aの電気定格であり、プラントやビルで使用される電気機器と共に使用されます。
電磁接触器には主接点と制御接点(補助接点)という2つの接点があり、主接点に接続された制御コイルに制御電源から電流を流すことで、主接点が開閉する仕組みです。主接点には工業用電気機器を、制御接点にはマイコンやボタンなどの制御機器やインターフェースを接続して動作させます。
電磁接触器の種類
電磁接触器はいくつかの種類に分かれており、用途に応じて選択する必要があります。主な6つの種類について解説します。
可逆式
三相電動機で使用される電磁接触器です。三相電動機はU相、V相、W相の3相電力で駆動しますが、その内の2相の接続を交換すると電流の経路が逆転する特徴を持っています。クレーンやコンベアなどは正転に加えて逆転動作も行うため、可逆式が使用されるのが一般的です。
可逆式の内部では、入力側と出力側の配線がU-U,V-V,W-WとU-U,V-W,W-Vという形で接続されており、通常は前者のみ接続されています。制御信号によって逆転方向を指示すると、後者の接続方式へ機械的に切り替わる構造となっています。
非可逆式
標準的な用途で使用される電磁接触器です。接続方向の逆転は行えないため、可逆式と区別するために、非可逆式と呼称されます。
遅延釈放式
制御回路にコンデンサを搭載し、制御信号が無くなっても数秒間は接続を保持する方式です。重要機器を電源の瞬停から守りたい場合や、大規模プラントの高輝度放電ランプ(HIDランプ)の電磁接触器などに使用されます。
ちなみに、HIDランプは金属蒸気を高圧放電によって発生させる原理のランプで、再点灯に時間を要する短所があります。短時間でも電圧を維持できないと消えてしまうため、予防のため遅延釈放式の電磁接触器が使用されています。
機械ラッチ式
接続用制御信号をOFFにしても、主接点が開放しない方式です。主接点を開放するためには、開放用の制御信号を入力する必要があります。一度動作させたら停止させたくない用途に使用されます。代表的な用途は発電所の補器用電動機や、電力用コンデンサ、リアクトルです。
直流操作式
制御信号に直流信号を利用する方式です。制御用に直流電源を利用したい際に採用されます。交流信号による制御コイルのうなりなどが問題になる場合、直流操作式の電磁接触器を利用することで改善できます。
高感度式
制御信号入力部に信号増幅用のトランジスタを搭載した方式です。近年の制御用マイコンは3.3Vや5V系で動作するため、出力電流も数十mAと小さいです。このままでは電磁接触器の制御信号としては、電圧・電流共に能力が足りないため、通常は外付けで信号増幅器を設置します。
しかし、機器を追加すると追加コストやスペースが問題となるため、マイコン出力を入れても検知できる高感度式の電磁接触器が開発されました。高感度式では、電磁接触器の内部にトランジスタを組み込むことで、信号を増幅し検知します。
電磁開閉器とは
それでは、続いて電磁開閉器について説明しましょう。電磁開閉器は、電磁接触器にサーマルリレー(熱動継電器とも言う)を接続した機器のことを指します。サーマルリレーは、電磁接触器に過電流が流れた際に、回路を強制的に遮断するスイッチです。特に電動機などに多く使用され、モーターが過負荷で焼損するのを防ぐために用いられます。
サーマルリレーの種類
電磁開閉器は基本的に電磁接触器と同じ種類がありますが、サーマルリレーの種類によっても違いがあります。サーマルリレーの種類とそれぞれの違いを紹介します。
速動型
過電流を検知した際、短時間で回路を遮断するのが速動型サーマルリレーです。過電流により破損しやすい機器を使う場合に採用されます。例えば水中ポンプやコンプレッサに使用される電動機は、密閉されたフレーム内に設置されているため、冷却条件が悪く耐熱温度が低いです。過電流遮断が遅れると電動機の巻線を焼損する危険性が高いので、速動型を採用します。
遅動型
過電流が一定時間継続して流れるまで、回路を遮断しないのが遅動型サーマルリレーです。始動時間が長く、正常状態でも一定時間の突入電流が流れてしまう電動機に使用します。例えば、ファンやブロワーは始動時間が数秒に及ぶため、速動型のサーマルリレーでは始動電流を検知してリレーがトリップしてしまいます。これでは機器が動かなくなるため、遅動型を採用するのが一般的です。
電磁接触器、電磁開閉器の動作原理
続いて、電磁接触器、サーマルリレーの動作原理についても説明しましょう。
電磁接触器の仕組み
まず、電磁接触器が開閉する仕組みにおいては、制御コイルの磁力が大きな役割を果たします。制御コイルには、制御接点から入力した信号が流れる構造になっており、制御信号がONすると、電磁誘導による磁界が発生します。一方、主接点のスイッチ端子は固定端子と可動端子に分かれ、可動端子はバネによって保持されているのが基本的な構造です。ここで、可動端子には鉄心が接続され、コイルの磁束に引き寄せられて鉄心が移動するようになっています。
制御信号に一定の電流が流れると、バネの力を超えて可動端子が移動するので、スイッチの開閉を切り替えられるのです。ちなみに、主接点のスイッチ切り替えは、制御信号がONになると導通する常閉式と、制御信号がONになると切れる常開式の両方が開発され、販売されています。
サーマルリレーの仕組み
サーマルリレーは熱を発生させるヒーターエレメントと、熱を検知して変形するバイメタルで作られています。サーマルリレーに電流が流れると、ヒーターエレメントが発熱し、その熱がバイメタルに伝わります。バイメタルは一定の温度を超えると一気に変形するため、強制的に接点を開放し、電流を遮断するのです。遮断後はリセットボタンを押せば、元の導通状態に戻ります。
リレーとの違い
最後に、リレーとの違いについてお伝えしましょう。実は、リレーの基本構造、動作原理は電磁接触器と全く同じです。ただし、リレーと電磁接触器や電磁開閉器では、電流定格や接点の耐久能力が異なります。電磁接触器や電磁開閉器はJIS規格により、大電流の導通能力とアーク発生時の消弧能力に加えて、インパルス電流による故障や筐体の強度が保証されています。一方、単に『リレー』と表現されるときは、電子回路に使用される小型のスイッチも含めているため、性能が保証されているとは限りません。
まとめ
今回は、電磁接触器、電磁開閉器の違いや、それぞれの種類、仕組みについて簡単に紹介しました。電磁接触器はリレーと同じく、電子機器の電源をON/OFFするために使われる機械です。そして、電磁開閉器は電磁接触器にサーマルリレーを追加し、過電流による破損を防ぐ機能を持っています。
機能はリレーと変わりませんが、性能や耐久性が規格で定められており、特に安全性を求める用途で使われます。選定の際には機能のみならず、安全性の確保も前提に製品を選定してください。
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