マイコン向け統合開発環境のHEWとは?機能や後継ソフトの解説も!
2024.08.23更新
機電系エンジニア必見!!貴重なフリーランス案件はこちら ▶ソフトウェア開発の利便性を高めてくれる統合開発環境には、マイコン向けに特化されたHEWという開発環境も存在します。今回はそんなHEWについて、具体的な機能や開発の流れ、後継のソフトウェアなどを解説していきます。
HEWとは
HEWはルネサスエレクトロニクス株式会社の「High-performance Embedded Workshop」のことで、マイコン開発に特化した統合開発環境です。マイコン開発ではエディタやコンパイラ、エミュレータなど複数の機能やツールを使う必要がありますが、ツール同士の操作性や設定の違い、複数ツールを使用することによるプロジェクト管理の複雑さなどの問題がありました。
そこで各ツールを一元化し、あたかも高機能な1つのソフトウェアであるかのような開発環境を実現したのがHEWです。現行の統合開発環境ではなく、2012年のV.4.09.01を最後にバージョンアップ等はありません。対応しているマイコンデバイスには、販売が終了しているH8ファミリやM16Cファミリ、R8Cファミリ、SuperHファミリ、現行のRX200シリーズやRX600シリーズなどがあります。
HEWで使える代表的な機能
続いてHEWで使える機能について紹介していきます。マイコン開発に必須の機能から開発プロジェクトを管理するための機能もあるので、それぞれ覚えておきましょう。
プロジェクト管理機能
1つ目に紹介するのはプロジェクト管理機能です。具体的な内容として、プログラムを記述するソースファイルをプロジェクト単位で管理できるワークスペース、1つのプロジェクト内で階層を増やして管理できるサブプロジェクト、オプションのパターンを保存して各プロジェクトに適用できるコンフィグレーション、複数のプロジェクトを作成し相互の依存関係を指定できる機能などがあります。いずれもマイコン開発に必須の機能というわけではありませんが、プロジェクト管理の効率化に欠かせない機能です。
ビルド機能
続いて紹介するのはビルド機能です。ビルドにはソースコードを機械語へと翻訳するコンパイルやアセンブルと、オブジェクトコード同士を結合して実行ファイルを生み出すリンクまでの一連の操作が含まれています。全てのビルドを行う全ビルドや必要な分だけソースファイルをコンパイルする差分ビルドなど、状況に応じたビルドスタイルを指定することができます。また、ビルド中のコンパイルでエラーが生じた場合、エラーを示すタグへジャンプする機能や、エラー内容に関するヘルプを表示する機能もあります。
シミュレーション機能
HEWには記述したソースをHEW上でシミュレーションする機能も搭載しており、マイコンが手元になくてもプログラム動作を確認することができます。マイコンには動作が確認できる機構がない一方で、シミュレーション機能を使えば視覚的に動作状況が分かるため、手元にマイコンがあっても重宝する機能です。また、ブレークポイントを用いて動作を割り込ませたり、プログラム内の実行回数や呼び出し回数を指定することもできます。
HEWを使ったマイコン開発の流れ
ここからはHEWを用いたマイコン開発の具体的な流れについて解説していきます。
プログラムの作成
まずはワークスペースとプロジェクトを作成し、その中にソースコードを追加してC言語やアセンブリ言語でプログラムを作成していきます。ワークスペースは複数のプロジェクトを管理する構成単位で、システムや製品の最も大きなものを表すイメージです。
また、プロジェクトは複数のソースコードを管理する構成単位で、システム中の1つの機能についてまとめたものを表すイメージです。HEW上でソースを記述すると関数や変数などに色が付いて視覚化されるため、単語間違いや関数のルールにそぐわない記述があればこの段階で気付くことができます。
ビルドの実行
ソースコードが出来上がったら、ビルド機能によってコンパイルやアセンブル、リンクを行います。基本的にはビルドボタンを押せばビルドが開始されますが、オプションに起因するエラーを回避するために、コンパイルやリンクのオプション設定してからビルドすると良いでしょう。
ビルドを実行し、エラーが出たら当該箇所の修正が必要となるため、この段階でデバッグするのが基本です。一度に大規模なビルドを行うとエラー原因の特定や修正作業が煩雑になるため、ソースファイル単位や機能単位でコンパイルを実行するなど工夫するのが効率的なデバッグのコツです。
プログラムの転送と動作確認
ビルドが完了すると、実行ファイルに該当するmotファイルなどの必要なファイルが出力されます。USBケーブルを使用してマイコンへデータを転送し、実機で動作確認を行いましょう。基本的にコンパイルやデバッグを終えた状態でデータを送っているためエラーが出る可能性は低いです。ただ、接続されている機器マイコン自体のハードウェアスペックなどに起因するエラーが生じる可能性はあるため、動作条件を変えて何度かテストを行いましょう。
また、マイコンは基本的にエラーが発生しても丁寧に教えてくれることはありません。動作状況に応じてLEDを点灯させたり、LCDに文字を表示させるなどして、実機でも確認できる工夫を施すと良いでしょう。
HEWの後継ソフトは2種類ある
これまで解説してきたHEWですが、現在では後継品となる2つのソフトウェアが登場しています。それぞれの違いにも触れていくので、マイコン開発を始めたい方はぜひ参考にしてみてください。
CS+
CS+は元々「CubeSuite+」という名称でリリースされていたルネサス社製の開発環境で、2014年のバージョンアップに合わせて現在の名称でリリースされました。ベースがルネサス社の開発環境だったこともあり、HEWと同じような使用感で使えるのが魅力です。また、HEWのV.4.0.4.07以降のバージョンで作成したプロジェクトデータであれば、CS+プロジェクトファイルへ変換することもできます。
e² studio
e² studioはオープンソースの統合開発環境である「Eclipse」をベースに、ルネサス社製のマイコン向けに特化させたもので、CS+では対応していないRAシリーズのマイコンの開発も可能です。ベースがEclipseのためHEWやCS+とは使用感が異なりますが、Eclipseに慣れている方であればむしろ使いやすいでしょう。また拡張性が高いのも売りで、使いたいプラグインを追加すれば自分好みの環境を揃えることができます。
まとめ
今回はマイコン向けの統合開発環境であるHEWについて、基本的な機能や開発の流れ、後継ソフトなどを中心に解説してきました。統合開発環境の存在は知っていても、マイコン向けに特化したものがあることを知らなかった方も多いのではないでしょうか。パソコン向けのソフトウェアと違ってマイコンは動作状況が分かりにくいので、グラフィカルに開発が進められる統合開発環境は必須と言えるでしょう。
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