アドバンスドパッケージとは?具体的な技術や課題を詳しく解説!

2025年6月14日更新
機電系エンジニア必見!!貴重なフリーランス案件はこちら ▶日進月歩で性能が進化する半導体において、アドバンスドパッケージという新たな製造技術が注目されていることをご存知でしょうか。今回はアドバンスドパッケージについて、具体的な技術の中身や課題点などを中心に解説します。
アドバンスドパッケージとは
アドバンスドパッケージとは、半導体パッケージの性能向上やサイズダウンを目指し、複数の半導体チップを効率的に配置する技術の総称です。そもそも半導体製造工程はシリコンウェハーに回路パターンを印字して半導体チップを作り出す前工程と、ウェハーから半導体チップを切り出し、半導体パッケージとして完成させる後工程に大別されます。アドバンスドパッケージは後工程において、チップを立体的に配置したり、従来とは異なる方法でパッケージングすることで、これまで以上に高性能な半導体を作るのに大きく貢献します。
アドバンスドパッケージが注目され始めた背景
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従来の半導体産業では、半導体回路の集積率が約24か月で倍になるという経験則、通称ムーアの法則に基づき、およそ50年以上にわたって半導体チップのサイズダウンに力を入れてきました。このサイズダウンは半導体構造の微細化により行われてきましたが、内部のトランジスタを極限まで小さくすると発熱やリーク電流が無視できなくなるため、最近ではチップのサイズダウンが限界を迎えつつありました。そこで、チップの内部構造を作る前工程ではなく、パッケージングを行う後工程に工夫を凝らす重要性が高まり、アドバンスドパッケージ技術に注目が集まるようになったのです。
アドバンスドパッケージの具体的な技術
ここからはアドバンスドパッケージと称される技術について、代表的なものを解説していきます。
チップレット
チップレットとは、特定の素子や機能に特化した小規模な半導体チップに分割する技術のことです。従来は大規模な回路を1枚の半導体チップ上に構成するのが主流でしたが、ここ最近はチップレット技術を用いて、複数の小規模な半導体チップを組み合わせて回路を構築するのが主流になりつつあります。
同じ機能や回路を構築するのであれば、大規模な1枚の半導体チップで完結した方が良いように思えますが、回路が大規模になるほど歩留まり(製造した数に対する完成品の割合)が低下することから、特定の機能に特化した小規模なチップを大量生産し、後から組み合わせる方法が採用されるようになったのです。
2.5Dパッケージ
2.5Dパッケージとは、チップレットによって特定の機能に特化して分割された複数の半導体チップを組み合わせ、大規模な回路を構築する技術の1つです。具体的には基板上にシリコンインターポーザと呼ばれる配線に特化した部材を配置し、複数の半導体チップを高密度に接続します。2.5Dとあることからも分かるように、垂直方向に何枚もチップを重ねる訳ではなく、水平方向に配置するのが特徴です。
3次元集積回路(3D-IC)
3次元集積回路(3D-IC)とは、半導体チップを水平方向ではなく垂直方向に積層した回路のことで、それぞれの半導体チップはシリコン貫通ビア(通称TSV)と呼ばれる孔を介して接続されます。チップを積層する関係で蓄熱しやすく、量産体制も十分でないため、成熟してない技術と言われることも多いです。ちなみに、2.5Dパッケージや3次元集積回路技術を利用し、1つのパッケージ内でシステムを構築する技術を総称して、システムインパッケージ(SiP)と呼びます。
フリップチップ
通常の半導体チップでは、ワイヤボンディングによって上部の能動部からワイヤを伸ばして基板と接続するのが一般的であるのに対し、半導体チップを上下逆さまにして、ワイヤ部を省略して接続する技術をフリップチップ技術と呼びます。半導体チップと基板との接続にはバンプと呼ばれる金属製部品が使用され、周辺の空隙にはアンダーフィルと呼ばれる樹脂が充填されます。ワイヤボンディング方式と比較してモールド樹脂のサイズが抑えられるのが最大の特徴で、後に説明するように発熱や電力消費を抑えられるのがメリットです。
WLP
WLP(Wafer Level Package)とは、半導体チップを樹脂でモールドせず、チップサイズとほぼ同じ大きさの半導体パッケージとして仕上げる技術のことです。従来、ダイシングによって個々の半導体チップへと切り出してからボンディングやモールドを行っていたのに対し、WLPでは半導体チップに切り出す前に再配線層を構築し、樹脂封止や半田ボール取り付けを行ってからダイシングを行います。
FO-WLP
WLPは半導体パッケージサイズを大幅に小さくできる技術ではあるものの、小さすぎるが故に半田ボールの取付面積が限られるデメリットがありました。そこで半導体チップを囲うようにファンアウト部と呼ばれるモールド樹脂を取り付け、再配線層を拡張したWLPをFO-WLP(Fan-Out Wafer level Package)と呼びます。FO-WLPはチップサイズの拡張によって入出力ピン数を増やせるのはもちろんのこと、複数の機能を搭載してSiPを実現できるのも強みです。
アドバンスドパッケージのメリット
様々な技術があるアドバンスドパッケージですが、それぞれの技術に共通するメリットについても解説していきましょう。
小型化と軽量化に繋がる
アドバンスドパッケージの最大のメリットと言えば、半導体パッケージの小型化と軽量化が挙げられます。これまで解説した技術によって半導体パッケージそのものを小型化できるのはもちろんのこと、フリップチップやWLP技術によって樹脂やワイヤの部分が減ることで、半導体パッケージの軽量化も期待できます。
また多機能な回路を実現する場合、これまでは歩留まりの低下を懸念して複数のパッケージを基板上で組み合わせていましたが、2.5Dパッケージや3次元集積回路技術によって1つの半導体パッケージ内に多くの機能を実現できるようになったことで、従来よりもコンパクトな回路設計も可能になりました。
デバイスの性能が向上する
アドバンスドパッケージは半導体パッケージの性能向上にも寄与します。例えば2.5Dパッケージや3次元集積回路技術を用いれば、従来よりも周波数帯域幅の広い通信が扱えるため、1度にやり取りできる情報量が増加し、相対的な通信速度の向上が期待できます。また半導体チップの効率的な配置やボンディングワイヤを使用しない構造にすることで、物理的な通信距離の短縮にも繋がるため、同じく通信速度が向上します。
発熱や電力消費が抑えられる
アドバンスドパッケージは発熱や電力消費を抑える効果も期待できます。例えば半導体チップの効率的な配置やフリップチップなどの技術によって、配線距離を物理的に短くできれば、配線部分における発熱や消費電力が抑えられます。また、WLP技術などによって半導体チップを覆うモールド樹脂を少なくできれば、半導体チップを容易に冷却できるようになるため、冷却機構で消費するエネルギー量を抑えることも可能です。
アドバンスドパッケージにおける課題点
非常に優れた技術であるアドバンスドパッケージですが、コストや技術力、発熱管理などに課題が残っていると言われています。コストに関して言えば、アドバンスドパッケージ技術は最先端技術であるため、機器の導入や技術開発はもちろんのこと、既存の後工程プロセスや管理体制を見直すにも高い費用が掛かってしまいます。
また、半導体チップの立体的な配置による回路設計の自由度が向上した反面、設計にはより複雑な技術力が求められるようにもなりました。さらにチップ同士を垂直方向に配置すると蓄熱しやすいため、これまで以上に発熱管理に気を遣わなくてはならないのも難点と言われています。
まとめ
今回は半導体製造の後工程における革新的な技術、アドバンスドパッケージについて解説してきました。これまでは半導体チップそのもののサイズダウンや高性能化が重要と考えられていたのに対し、今後は後工程の技術革新が半導体性能を左右することを理解できたのではないでしょうか。AIやスーパーコンピュータなど最新鋭の機器に欠かせない技術になりつつあるので、気になる方は詳しく調べてみることをオススメします。
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