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  • 高周波回路とは?特徴や低周波回路との違いや特徴を初心者にもわかりやすく解説!
  • 高周波回路とは?特徴や低周波回路との違いや特徴を初心者にもわかりやすく解説!

    2024.08.05更新

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    この記事を書いた人

    機電系専門ライター Div.長谷川

    長谷川

    FREE AID編集部 機電系専門ライター Div.
    アナログ回路設計・営業を経験した後ライター&ディレクターとして独立。
    電気電子・ITジャンルを得意とし、正確で分かりやすい情報の発信を行っています。

    家庭での無線LANや携帯電話の普及に伴い、高周波回路は今最も注目されている技術の一つです。今回はこの高周波回路について、初心者の方向けに基礎や特徴をまとめました。これから高周波回路を学ぼうとしている方は是非参考にしてみてください。

    高周波回路とは?

    高周波回路の定義

    高周波回路とは、「高周波で動作する時の挙動が、低周波で動作する時の挙動と異なる電子回路」のことです。無線LANや携帯電話などの周波数が数GHzになる電子信号を扱う電子回路は、全て高周波回路となります。

    高周波回路では信号の波長に対して電子基板が相対的に大きくなるため、信号の位相や振幅を無視できなくなります。従って高周波信号を扱う場合と低周波信号を扱う場合では、全く同じ電子回路でも挙動が異なります。高周波回路ではこの挙動の違いを考慮した回路設計が必要になります。

    身の回りの高周波回路が使用されている機器

    私たちの身の回りには様々な高周波回路があります。最近では特に無線通信機器の増加・高速化により高い周波数帯が用いられることが多くなっているため、身の回りの電子機器は高周波回路で溢れています。では具体的にどのような高周波回路があるのでしょうか?代表的な身の回りにある高周波回路を使用している機器を紹介します。

    なお[Hz]は周波数の単位です。読み方は「ヘルツ」で、1秒間に何回振動を繰り返したかを示しています。[Hz]の前にあるGやMは数の大きさを示す意味をもち、読み方・単位はそれぞれ1G(ギガ) = 10^9(1000000000)、1M(メガ) = 10^6(1000000)です。

    つまり1[GHz]の信号とは「1秒間に10億回振動する信号」となります。なお周波数の考え方や単位は高周波回路の分野では頻繁に使用されます。基礎的な概念ですので初心者の方は必ず習得するようにしましょう。

    高周波回路の基礎

    低周波回路との違い

    高周波回路とは逆に「低周波の信号を扱う回路」を低周波回路と言います。高周波回路設計の初心者は特にこの違いを覚えましょう。高周波回路と低周波回路の最も大きな違いは「扱う電気信号の周波数帯が異なること」ですが、何故周波数が異なることで多くの違いが出てくるのでしょうか?

    携帯電話やWi-Fiなどの無線LANは電波や電気信号で情報をやり取りしており、これらは波の性質を持っています。電波は1Hzの間に信号のレベル(振幅)が0⇒1⇒-1⇒0のように、時間によって変化しており一定ではありません。

    扱う電波の周波数が大きくなると、電子回路の場所によって信号の電流・電圧レベルが異なる状況を考慮する必要が出てきます。この振る舞いを扱う回路を「分布定数回路」と言います。一方低周波回路は電子回路全体が均一の電流・電圧レベルとして近似出来るため分布定数回路と区別され、「集中定数回路」と呼ばれています。

    高周波回路の周波数帯

    高周波回路は高周波帯の信号を扱う電子回路ですが、高周波と言っても「何Hz以上から高周波」という厳密な定義はありません。何故なら高周波回路の「高周波」は周波数のみならず、電子回路との相対的な大きさで決まるモノだからです。

    電波は光の速さ(3×10^8 [m/s])で空間中を伝わります。従って高速を周波数で割った値が電波が1周波数の間に進む距離となり、これを波長と定義されます。この数字が電子回路の大きさに比べて十分に大きいと低周波回路、逆に近いか小さくなると高周波回路として扱われます。

    また用途によっても高周波の定義は異なります。例えばオーディオ信号や電子回路では、音声周波数帯域と同程度の周波数帯(数十 [Hz]程度)でも低周波に見なされますが、無線通信では10 [kHz]以上をが高周波とされます。

    高周波信号の扱い

    高周波回路を扱う際は低周波回路のように、電圧と電流の測定が難しくなります。何故なら電圧や電流を測定するための測定器を回路につなぐと、その測定器までの長さに対して新たな回路が形成されてしまうためです。従って高周波回路では信号の位相が変化しても安定して計測できる「電力」を扱います。

    また高周波回路の特徴にインピーダンスマッチング(後述)がありますが、インピーダンスマッチングを行うと電圧が変化するため電圧や電流の表示はその時のインピーダンスと併せて記載しないと意味のない値となってしまいます。これらの理由から、高周波回路では電力で評価することが一般的です。

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    高周波回路の特徴

    インピーダンスマッチング

    インピーダンスマッチングとは?

    インピーダンスは交流電流における電圧と電流の比で、直流回路でいう「抵抗」に相当する値です。単位はΩで読み方は「オーム」です。高周波回路の送受信間で高周波の電気信号を効率よく伝達する際に送信側と受信側のインピーダンスが異なると、信号を反射して波形が乱れ、不要な輻射が発生し電力損失などが発生してしまいます。

    この電力損失を避けるために送・受信側両方のインピーダンスを一致させることをインピーダンスマッチング(インピーダンス整合)といいます。インピーダンスマッチングには回路の役割や用途によって様々な方法があり、適切な整合方法を取る必要があります。

    トランス(変圧器)を用いたインピーダンスマッチング

    トランスは交流電力の電圧の高さを電磁誘導を利用して変換する電力機器・電子部品です。高周波回路では受信機のRFアンプなどの広帯域が必要な回路で用いられます。他の機器と比べると適切な周波数帯では損失が極めて小さいが、変換できるインピーダンスの比に制約があることが特徴です。

    コイルとコンデンサを用いたインピーダンスマッチング

    コイルとコンデンサを用いたインピーダンスマッチングは、高周波回路中のコイルの比率やコンデンサを調整することで電源側と負荷側の整合を取る方法です。この方法は特定の狭域帯の周波数のみを整合させれば十分な場合に用いられますが、広い周波数範囲には不向きです。

    抵抗器によるインピーダンスマッチング

    抵抗器は一定の電気的抵抗を得るための電子機器のことです。直列回路であれば送受信側の抵抗を単純に合わせることが出来るため、広域帯で簡単に高周波回路のインピーダンスマッチングを取ることが出来ます。ただし、抵抗による電力損失が発生するため注意が必要です。

    反射波と定在波

    電子機器間でインピーダンスマッチングが行われていないとき、電力はどこにいくのでしょうか?インピーダンスマッチングが行われていないときに受信側に流れた電力は、受信側の抵抗(インピーダンス)で消費されず送信側の機器に戻ってきます。これを「反射波」と言います。

    受信側に反射した電力は受信側のインピーダンスで消費されますが、消費されない分はまた受信側に流れ、全て消費されるまで反射を繰り返します。反射波が発生すると本来送信側から受信側に流れる波(進行波)と干渉し、場所によって弱めあったり強め合ったりします。

    波長・周期・振幅・速度が同じ二つの波が重なり合うと、その場でとどまっているように振舞う波形が発生しこれを「定在波」と言います。高周波回路の特徴の一つに、インピーダンスマッチングを行い「反射波」と「定在波」を発生させないように注意します。

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    高周波回路の構成要素

    スイッチ

    高周波回路に用いられるスイッチは高周波スイッチまたはRFスイッチと呼ばれます。機械式と電子式のスイッチがあり、高周波信号の経路を切り替える役割を持っています。具体的な用途としてはケータイやワイヤレスLANのアンテナなどで、送信と受信を切り替えるために利用されています。

    LNA(ローノイズアンプ)

    ローノイズアンプは入力した信号を選択して増幅する「低雑音増幅器」です。デジタル放送や携帯電話、無線LANなどの高周波回路の送・受信機に多く用いられています。ローノイズアンプは特にレベルが低い信号を受信する時に用いられます。レベルの低い信号は受信時に増幅させますが、雑音と信号のレベルが近いと雑音に埋もれやすくなるため雑音を取り除く必要が生じるため、ローノイズアンプが用いられます。

    ミキサ

    ミキサはその名前の通り信号と信号を「混ぜる」時に用いられる回路で、ミキサを用いると周波数を下げたり上げたりすることが出来ます。高周波回路にミキサを使う目的はズバリ「コストダウン」です。高周波回路の周波数帯の信号を直接やり取り出来る電子回路は複雑になり、使用できる部品も限られるため製品コストが上がってしまいます。

    そこで一般の高周波回路の送受信機では、ミキサを用いて信号の周波数を下げてから信号処理を行います。なおデータを送受信する場合の「信号処理」は伝送したい信号を特定の搬送波に乗せる「変調」と、変調された信号を元に戻す「復調」を指します。これらは無線LANなどの電波を飛ばす高周波回路の基礎なので覚えておきましょう。

    フィルタ

    携帯電話やスマートフォンなどのアンテナは周波数特性を持っているため、特定の周波数帯の電波のみを受信できるように出来ていますが、それでも不要な電波を受信してしまうことがあります。そこで不要な周波数帯の電波を取り除く役割を持つBPF(バンドパスフィルタ)が利用されます。BPFには次の種類があります。

    BPFの種類

    • LPF(Low Pass Filter) :ローパスフィルタは低域通過フィルタで、低周波の信号を除く役割を持っています
    • HPF(High Pass Filter) ハイパスフィルタは広域通貨フィルタで、高周波の信号を除く役割を持っています
    • BEF(Band Elimination Filter)バンドエリミネーションフィルタは帯域除去フィルタで、特定の周波数信号のみを除く役割を持っています

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    まとめ

    今回は高周波回路の基礎知識や特徴・構成要素を紹介しました。高周波回路を扱うには専門的な知識が必要であり、初心者の方は習得するに苦労されると思います。ただ携帯電話の5Gの普及や電子機器の小型化に伴い、高周波回路設計者の役割は今後益々重要になります。これから高周波回路設計者を目指す方は是非参考にしてみて下さい。

    関連記事:  電解コンデンサにはなぜ寿命があるのか?設計時の注意点と合わせて解説!

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