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シングルエンドと差動伝送の違いとは?基本知識も含めて解説!

                   

2026年5月24日更新

この記事を書いた人

機電系専門ライター Div.長谷川
「FREE AID」編集部:長谷川

大手メーカー「コマツ」、「オムロン」などで7年間、アナログ回路エンジニアとして設計・評価業務に従事。
ECU、PLCなどのエレキ開発経験を多数持つほか、機械商社での就労経験も有する。
株式会社アイズ運営の機電系フリーランスエンジニア求人情報「FREEAID」専属ライターとして、
機電分野の知識と実務経験を活かし、専門性の高い記事執筆を行っている。

シングルエンド方式と差動伝送方式の違いとは?

シングルエンド方式と差動伝送方式の違いとは?

シングルエンド方式と差動伝送方式の違いは、信号を「基準電位(GND)との電位差」で表現するか、「2本の信号線同士の電位差」で表現するかという点にあります。シングルエンド方式は、1本の信号線の電位をGND電位と比較することで論理情報を伝達する方式で、構成がシンプルで扱いやすいことから、比較的低速なデジタル回路や機器内部の信号伝送などで広く利用されています。

一方の差動伝送方式は、2本の信号線の電位差を利用して論理情報を伝達する方式で、ノイズの影響を受けにくく、高速かつ長距離の通信に適していることから、近年の高速通信インターフェースで広く採用されています。

シングルエンド方式と差動伝送方式の主な違い

シングルエンド方式と差動伝送方式の主な違い

それでは、2つの方式にどのような差があるのか、具体的な違いを順番に解説します。

ノイズ影響の違い

デジタル通信におけるノイズには様々な種類がありますが、中でもノイズ影響が大きく、ノイズ源の特定が難しいため対策も取りづらいノイズとして、信号線とグランド線を同一方向に流れ、アースを経由して信号源へ還ってくるコモンモードノイズが知られています。

シンプルな構成のシングルエンド方式ではコモンモードノイズの対策が取りづらいのに対し、差動伝送方式であれば、2つの信号電位の差分を取る際にコモンモードノイズ成分も打ち消されやすくなるため、結果的にノイズの影響を受けにくい信号を取り出すことができます。

またシングルエンド方式では、信号線に流れる電流によって電磁波(放射ノイズ)が発生しやすいのに対し、差動伝送方式では各信号線を流れる電流が互いに逆向きとなるため、発生する電磁波が打ち消し合う傾向があります。そのため、周囲への放射ノイズを低減しやすいという特徴があります。

通信速度の違い

通信速度は、信号の立ち上がりや立ち下がりの速さ、ノイズ耐性、信号振幅、配線特性など複数の要因によって決まります。シングルエンド方式では、信号電位の絶対値によってHighとLowを判別するため、比較的大きな信号振幅を用いることが多く、またノイズの影響を受けやすいことから、極めて高速な通信には不利になる場合があります。

一方の差動伝送方式では、ノイズ耐性が高いため比較的小さな電圧差でも信号を確実に判別することができ、結果として信号振幅を小さく設計できます。信号振幅が小さいほど充放電に要する時間を短縮しやすくなるため、より高い信号周波数に対応でき、結果的に高速通信を実現しやすくなります。

伝送距離や信号減衰に受ける影響の違い

シングルエンド方式では、信号電位の大小でHighとLowを見分けるため、伝送距離が長くなるほど信号の減衰やノイズの影響を受けやすく、長距離伝送には向いていません。一方で差動伝送方式では、2本の信号線が同じ環境で配線されるため、外来ノイズが両方の信号線にほぼ同じように重畳する傾向があります。

このとき受信側では2本の信号線の差分を取って信号を判別するため、ノイズ成分が打ち消されやすく、結果として長距離伝送でも信号品質を維持しやすくなります。実際、シングルエンド方式であるRS-232C規格では最大15m程度の通信距離とされていますが、差動伝送方式のRS-422やRS-485などの規格であれば最大1.2km程度の長距離通信が可能です。

消費電力の違い

シングルエンド方式では、CMOSドライバなどの電圧駆動方式が多く用いられており、HighとLowをスイッチングする際に電源とグランド間に一時的な電流(貫通電流)が流れます。そのため、スイッチング周波数が高くなるほど消費電力が増加する傾向があります。

一方、差動伝送方式の代表例であるLVDS(Low Voltage Differential Signaling)では、一定の低電流を用いて信号を切り替える方式が採用されており、比較的小さな信号振幅で動作します。このため、高速通信においても消費電力を抑えやすいという利点があります。

接続数の多さによる違い(配線数・回路規模)

これまで説明した違いはいずれも差動伝送方式のメリットに繋がる内容でしたが、接続数が多い場合の配線のシンプルさという点では、シングルエンド方式に利点があります。例えば、入出力が5系統でグランド線を共通化できる回路を想定すると、シングルエンド方式であれば信号線5本とグランド線1本の計6本で構成できます。

一方、差動伝送方式では1つの信号に対して2本の信号線(差動ペア)が必要となるため、同じ5系統の信号では信号線10本とグランド線1本の計11本が必要になります。回路線の数が増えるほど物理的なサイズや配線の複雑さも増すため、通信速度や品質、距離などの要求がそれほど高くない場合には、現在でもシングルエンド方式が採用されることは珍しくありません。

主な通信規格の違い

既に解説したように、シングルエンド方式は比較的低速で短距離の通信に適しているため、古くから多くのデジタル機器で採用されてきました。具体的な規格としては、LVTTLやRS-232Cなどが知られており、LVTTLであればおよそ100MHz以下の通信に使用されることが一般的です。

一方で高速かつ大容量のデータをやり取りできる差動伝送方式は、近年の高速通信インターフェースで広く採用されています。具体的な規格としてはUSBやHDMIなどが有名で、他にもLVDSやPCI Express、HDDやSSDのインターフェース規格として知られるSATAなどがあります。

配線設計の違い

シングルエンド方式は、1本の信号線とグランドを基準として信号を扱うため、配線の自由度が高く、比較的シンプルに設計できるという特徴があります。一方で、グランド電位の変動やノイズの影響を受けやすいため、グランド設計やリターンパスの確保が重要になります。

一方、差動伝送方式では2本の信号線をペアとして扱う必要があり、配線にいくつかの制約があります。例えば、2本の配線長を揃える(等長配線)、配線間隔を一定に保つ、ペアとして近接させて配線するなど、信号のバランスを維持するための設計が求められます。

このように、差動伝送方式は高いノイズ耐性や高速伝送といったメリットがある一方で、配線設計にはより慎重な配慮が必要になる点が特徴です。

まとめ

今回はデジタル信号の伝送方式であるシングルエンド方式と差動伝送方式の違いについて、基本的な内容から網羅的に解説しました。RS-232CやUSB、HDMIなどの規格を聞いたことがある人は多いと思うので、シリアル通信が身の回りに多く使用されていることが分かったのではないでしょうか。それぞれの規格における具体的な仕様などが気になる人は、より詳しく調べてみることをおすすめします。

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