イオン注入装置とは?利点・構造・流れ・課題点などを網羅的に解説!
2025年10月12日更新
この記事の運営元:株式会社アイズ
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この記事を書いた人
「FREE AID」編集部:長谷川
大手メーカー「コマツ」、「オムロン」などで7年間、アナログ回路エンジニアとして設計・評価業務に従事。
ECU、PLCなどのエレキ開発経験を多数持つほか、機械商社での就労経験も有する。
株式会社アイズ運営の機電系フリーランスエンジニア求人情報「FREEAID」専属ライターとして、
機電分野の知識と実務経験を活かし、専門性の高い記事執筆を行っている。
イオン注入装置とは?
イオン注入装置とは、イオン化した物質を試料に注入し、試料の性質を変化させる装置のことです。主に半導体業界で、半導体ウェーハに不純物ドーピングを行うために用いられています。

イオン注入は、イオン化された原子や分子に数十keVから数MeVオーダーの加速電圧を印加し、エネルギーを与えて基材に衝突させる手法が用いられており、加速電圧が大きくなるほどイオンが注入される深さが深くなります。
イオン注入装置が優れている点とは?

試料に不純物をドーピングする方法として熱拡散法なども知られていますが、他の方法に比べてイオン注入方法が特に優れている点を解説します。
イオンの注入量と注入深さが調整できる
1つ目に挙げられるのが、不純物イオンの注入量や注入深さを自由に調整できる点です。従来使用されていた熱拡散方式では、高温の不純物ガスをウェハー表面に流し、拡散や熱処理によって不純物をドーピングするため、大量のウェハーに対して同時に不純物をドーピングできる利点がある反面、イオンの注入量や注入深さをコントロールすることはできません。一方でイオン注入であれば、イオン電流や加速電圧を調整することで、イオンの注入量や注入深さを自由に変えられるため、従来よりも高精度な半導体基板の製造に役立つのです。
イオンの注入純度が高い
イオン注入装置では、目的とする不純物イオンを従来よりも高純度に注入できるのも強みです。というのも従来の熱拡散方式では、不純物イオンを注入する原理上、不純物ガスや高温炉内に存在する余計なイオンまでドーピングされてしまう可能性がありました。
これに対しイオン注入装置には余計なイオンを取り除く質量分析部が組み込まれているため、目的とする不純物イオンだけを高純度に注入できます。不純物イオンをドーピングする前のシリコンウェハー純度が99.999999999%程度(通称イレブンナイン)であることを考えれば、余計なイオンが半導体性能に大きな影響を与えることが予想できるでしょう。
直進性を利用して位置制御がしやすい
イオン注入装置では、不純物イオンを注入する位置を制御しやすいのも利点です。従来の熱拡散方式では、試料全面に亘って不純物イオンがドーピングされてしまうため、ウェハーの特定箇所だけ性質を変化させるのは困難でした。
一方でイオン注入装置による不純物ドーピングでは、直進性のあるビームによって試料に照射するため、狙った部位にのみ不純物を注入でき、複雑で緻密な構造を持つ半導体であっても容易に製造できるようになりました。
イオン注入装置の構造とイオン注入の流れ
続いてイオン注入装置の具体的な構造を、不純物を注入する流れにも触れながら解説します。
イオンを生み出すイオンソース部
不純物イオンを生み出す部分をイオンソース部と呼び、フリーマン型とバーナス型の2種類に大別されます。どちらもフィラメントに電流を流して生まれる熱電子を、ホスフィン(PH3)やジボラン(B2H6)などの原料ガスに衝突させて不純物イオンを生み出しており、イメージとしては白熱電球の発光原理に近いです。
フリーマン型は熱電子をそのまま原料ガスに衝突させるのに対し、バーナス型ではフィラメント近傍に設置された反射板で熱電子を増幅して衝突させるため、フリーマン型よりも強い効果が発揮できます。イオンソース部で生じた不純物イオンは、引出電極から印加される正の電界によって引き出され、続く質量分析部へと送られます。
不要なイオンを除去する質量分析部と分析スリット
イオンソース部で生じるイオンには、目的とする不純物イオンだけでなく、価数の異なるイオンや他の元素なども含まれます。そこで、余計なイオンや元素を除去し、目的とする不純物イオンだけを選択的に次工程へ送るのが質量分析部と分析スリットです。
イオンは何もしなければ空間中を真っ直ぐ進んでいくものの、電界を掛けられると軌道が曲がる性質を持ち、その曲がり度合いはイオンの種類によって異なります。この性質を利用し、不要なイオンを電界によって除去するのが質量分析部であり、イオンの選択精度を高めるために設けられた隙間が、分析スリットと呼ばれる部位です。
イオンを加速する加速部
質量分析部によって不要なイオンを除去したら、加速部で発生させた高周波電力や強磁場によって不純物イオンにエネルギーを与えて加速します。同様の原理はブラウン管テレビや大型ハドロン衝突型加速器(通称LHC)でも使用されており、必要な加速エネルギーによって様々なサイズのものがありますが、イオン注入装置で使用される加速器は中規模の物がほとんどです。
不純物イオンをより深く、あるいはより多くドーピングするほど加速部も大きくなるため、サイズを維持したまま高い注入エネルギーを実現すべく、研究開発が積極的に進められている部位でもあります。
イオンビームを照射する偏向器・Qレンズ・走査器
続いて偏向器と呼ばれる部位でイオンビームを偏向して入射精度を向上させたのち、Qレンズで絞り込み、エネルギー密度を高めた状態で試料に照射します。またレンズで絞り込まれたイオンビーム径はウェハー面積に比べて非常に小さいため、ウェハー全面に照射できるようビームやウェハーを動かす機構が走査器です。
具体的には、ウェハーを固定してイオンビームそのものを2次元的に動かす方式をラスタースキャン方式、イオンビームとウェハーが直行する方向に1次元的に動かす方式をハイブリッドスキャン方式とそれぞれ呼びます。ラスタースキャン方式は構造が簡単な反面、ウェハーサイズが大きくなるとビーム照射の均一性が低下するため、現在ではハイブリッドスキャン方式が主流です。
イオン注入後は結晶構造を回復させる回復熱処理も必要
イオン注入によって巨大なエネルギーを持った不純物イオンが試料に打ち込まれると、衝突の衝撃によって試料の一部が非晶質化(通称アモルファス化)してしまいます。アモルファスとは短い距離間では原子同士が結び付いているものの、長い距離間では原子同士が結び付いておらず、不安定になっている状態のことです。そのためイオン注入を行った後は、シリコンの融点(1400℃)よりも低い500℃から1100℃程度の熱を加えて結晶構造を回復させる必要があり、この工程を回復熱処理またはアニールと呼びます。
イオン注入装置が抱える課題もある

従来の熱拡散法と比べて優れているイオン注入装置ですが、いくつかの課題も抱えています。既に触れたように、イオン注入装置は緻密な制御が求められる複数の部位で構成されるため、装置製造に必要な技術力も高く、製造コストも高価になりがちです。また、イオン注入の過程で必要となるエネルギーも大きく、イオンソース部などの有寿命部品のメンテナンスにも費用が発生するため、装置導入後のランニングコストも高いと言われています。
まとめ
今回は半導体に不純物イオンをドーピングする装置であるイオン注入装置について、従来の方式より優れる点や構造、注入の流れなどを解説しました。最近ではプラズマドーピング法やレーザードーピング法といった最新技術の研究も進んでいるため、気になる方は深堀って調べてみると良いでしょう。
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