樹脂成形(プラスチック成形)の方法や樹脂特性の基礎知識を紹介!
2024.08.06更新
機電系エンジニア必見!!貴重なフリーランス案件はこちら ▶プラスチックは今や人々の暮らしには欠かせない存在ですが、その製造方法についてはご存じない方が多いのではないでしょうか。プラスチックは樹脂を溶かして成形する方法が一般的ですが、樹脂成形のやり方は数多く、樹脂の材質や用途、形状によって最適なものは変わってきます。そこで今回は、主な樹脂成形方法の特徴を紹介します。
樹脂成形の基本
まずは前提として、樹脂成形の基本的な知識について解説します。樹脂成形は、溶かした樹脂を金型などに流し込み、決まった形にして冷却して製品を作る方法です。樹脂は粉末やペレット状のものを使い、機械は樹脂を溶かして金型に流し込む射出装置と、金型を開閉し、押し出す型締装置を使います。
一見簡単に思えますが、樹脂が金型全体に行き渡らず形状が崩れたり、金型を取り外す際に干渉して壊れたりと、さまざまな問題が発生するため、金型や成形条件を細かく設計していく必要があります。樹脂成形の方法は数多くあるため、作りたい製品の形状や材質に合わせて最適な方法を選択しましょう。
樹脂特性の違い
樹脂にはさまざまな種類がありますが、熱による変化の違いにより「熱可塑性樹脂」「熱硬化性樹脂」の2種類に分類できます。どちらの樹脂かで樹脂成形方法は大きく変わるので、樹脂選定の参考にしてください。
熱可塑性樹脂
熱可塑性樹脂とは、熱を与えた時に柔らかくなり、冷やすと固くなる樹脂のことです。融解温度が比較的低いので、加工も容易であり、大量生産に向いています。熱を与えれば何度でも変形するので、リサイクルが可能という利点もあります。一方、融解温度が低いため耐熱性が低く、機械的強度も低いので、耐熱性や強度を求める場合は熱硬化性樹脂を使うのが一般的です。
ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、アクリルなど、一般的によく見る材料はほとんどが熱可塑性樹脂です。加工性がいいため、熱可塑性樹脂の成形方法には、溶かした材料を金型に流し込み、冷却するシンプルな方法が用いられます。
熱硬化性樹脂
熱硬化性樹脂は、熱を与えると固くなる樹脂のことです。熱を与えると分子同士が架橋構造を生み出すため、耐熱性や強度が強く、長期間使いたい樹脂製品に使われます。一度固くなった後は再度柔らかくなることはないため、リサイクルはできません。また、硬い反面衝撃に弱いという側面も持っているので、運用の際は注意が必要です。
熱硬化性樹脂の素材には、ポリエステル、フェノール樹脂、エポキシ樹脂などがあります。成形方法は熱可塑性樹脂と大きくは変わりませんが、硬化プロセスは複雑なので、安定した製品を生み出すための工夫が凝らされる場合が多いです。
主な樹脂成形方法
樹脂成形方法は数多くありますが、ここでは代表的な9種類の成形方法についてお伝えします。まず、各成形方法の概要をまとめた表をご覧ください。それぞれ得意な分野と成形できる樹脂の種類が異なるので、用途に合った成形方法を見つけましょう。
成形方法 | 適用樹脂・特徴 |
---|---|
射出成形 | 熱可塑性・熱硬化性樹脂 最も代表的な成形方法で、大量生産に最適 |
ブロー成形 | 熱可塑性樹脂 ボトル形状の成形に最適 |
真空成形 | 熱可塑性樹脂 薄膜製品の少量多品種生産に最適 |
押出成形 | 熱可塑性樹脂 フィルムやチューブなどの量産に最適 |
カレンダ成形 | 熱可塑性樹脂 シート状樹脂の大量生産に最適 |
圧縮成形 | 熱硬化性樹脂 少量生産する肉厚の製品に最適 |
トランスファー成形 | 熱硬化性樹脂 精密な寸法精度が求められる製品に最適 |
積層成形 | 熱硬化性樹脂 高強度のプラスチック生産が可能 |
それでは、各成形方法の原理や特徴をより詳しく解説します。
射出成形
射出成形は、樹脂加工の中でも最も一般的な成形方法です。金型に樹脂を充填し、加熱して形を作る方法で、一度金型を作れば非常に高速に同じ形状の製品を作れます。1回の成形を数秒で行えるうえ、同時に複数の製品を作ることも可能なので、量産性の高さは他の成形方法の追随を許しません。また、サイズや形状の自由度も高く、ガスを入れることで中空構造も作れます。
ただ、射出成形に必要な金型は制作期間が非常に長く、コストも高いため、少量生産には向いていません。金型で成形する以上、金型を取り外せるような形状に限定されるのも短所です。
ブロー成形
ブロー成形は、加熱して柔らかくした熱可塑性樹脂を金型に入れ、樹脂内部に空気を入れて膨張させ、金型に押し付けて製品を作る成形方法です。非常にシンプルな成形方法で、工程が少なく準備が簡単なこと、金型は外面だけで済むため金型コストを下げられることから、安価に製品を製造できます。ただ、空気で膨らませるため内部の形状や厚みなどを制御するのは難しく、曲げ部分やへこみ部分が肉薄になってしまうため、精度が求められる成形には向いていません。
また、空気を入れるためボトルなど中空構造の部品しか作れず、バリなどの捨て材が発生しやすく歩留まりが悪いといった問題もあります。
真空成形
真空成形は、樹脂シートやフィルムを材料にして樹脂成形を行う、熱可塑性樹脂の成形方法の一つです。真空形成では、加熱して柔らかくした樹脂シートを金型に貼り付け、金型に開けた小さな穴から空気を吸引。樹脂を金型に吸着させることで成形します。
成形時の圧力が低いため金属以外の金型が使えること、また金型が片面で済むことから金型の製作コストが安いのが特徴です。少量多品種生産はもちろん、連続生産も可能なので大量生産にも向いており、さまざまな製品の製造に利用されています。
押出成形
押出成形は、特殊な形状の製品を作る際に使う成形方法です。加熱して柔らかくなった樹脂をそのまま押し出し、ダイと呼ばれる金型に通して成形、その後冷却して切断などの加工を行います。
製造できる形状はかなり制限されますが、フィルムやシート、チューブ、各種線材などの製造であれば連続的に行えるため、大量生産に最適です。形状を変える時も、金型を変えるだけで大幅な設備の変更が必要ないのも利点です。
カレンダー成形
カレンダー成形は、加熱したローラーを使って樹脂を溶かしながら延ばし、フィルム状の製品を成形する方法です。押出成形に似ていますが、金型が不要なこと、ローラーによってより高い寸法精度が得られる利点を持っています。大がかりな設備になるため少量生産には適さず、平らな製品以外は作れませんが、連続生産できるため大量生産に向いています。
圧縮成形
圧縮成形は、最も古い歴史を持ち、昔から熱硬化性樹脂の成形に用いられてきた樹脂成形方法です。加熱した金型に融解した樹脂を入れ、樹脂が金型全体に充填されたら圧力をかけて樹脂を硬化させます。
圧力をかけることで高密度な製品ができるため、特に肉厚の製品の成形に適しています。また、構造が簡単なので金型製作の費用が安く、製造コストを抑えられるのもメリットです。一方で、成形スピードが遅く、大きなバリが生じるなど、成形には時間がかかることから大量生産には向いていません。また、圧力をかけるため複雑な形状の成形も難しいです。
トランスファー成形
トランスファー成形は、圧縮成形を改良し、量産性を高めた成形方法です。圧縮成形の金型に樹脂を融解させる構造を追加し、あらかじめ密封された金型に樹脂を加圧しながら注入して硬化させます。金型構造が複雑になるためコストは上がりますが、工程が短縮されて量産性は大きく改善するため、インサート部品や小型電子部品など、精度の求められる製品に使われています。
積層成形
積層成形は、熱硬化性樹脂を染み込ませた紙や布を重ね合わせ、加熱・加圧して1つの製品にする成形方法です。大規模な設備が必要であり、複雑な形状には対応できないなど欠点も多いですが、ガラス繊維などを組み合わせてプラスチックの強度を上げられるため、強化プラスチックなどの製造に使われています。
まとめ
今回は、樹脂成形についての基本的な知識と、代表的な成形方法についてお伝えしました。樹脂成形はさまざまな手法が開発されており、最適な方法を選ぶことで、安価に素早く製品を量産できます。ただし、成形方法が決まっていても、細かい温度設定や金型・製品形状の調整、材料選定などで製造スピードやコスト、歩留まりは大きく変わるので、詳しい知識が必要となることに注意しましょう。
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